ウルの塔、真の名は...
時計塔の中には蛍の様な光玉が漂っていた。そしてその玉は床の一か所から噴水のように吹き出ていた。この光玉は一体何なのか?この塔は本当にただの時計塔なのか?色々な事を考えていると、ユナが俺の元へと現れた。
「ユナ!?何で来たんだ!まだ安全とは限らないぞ!」
「ありがとうスカイ。...。でも、ここはあたしの場所だから。」
「そうか、暫く本部にいても良いんだぞ。魔物との戦闘で少し塔の壁が崩れてしまって...。」
「大丈夫、これくらいなら自分で直せるから。」
その言葉を聞いて少しホッとした。塔の修理を誰に頼もうか悩んでいたからだ。するとユナは何かに気が付いた様に驚いた顔をした。
「!!大変スカイ!たくさん血が出てるよ。」
「えっ?あぁ気が付かなかった。俺、体力だけは魔物にも負けないからな。」
するとユナは持っていたハンカチで、俺の腕に巻き始めた。
「...。ありがとう。」
「ねぇスカイ...。旅は楽しい?」
「えっ?まぁ、楽しいのかな?魔物を倒し続けるだけの忙しない旅だけど。」
「でも、いつも皆と一緒で楽しそう。私も貴方と同じ不老不死だけど、貴方には仲間がいる。」
「...。良かったらユナも入団しないか?戦わなくても入団希望者は大歓迎だ。もし文句を言う奴がいたら、俺はユナと一緒に退団するよ。」
「え...。」
ユナは突然の勧誘に驚いて、俺の顔をじっと見た。するとユナは表情を曇らせてしまった。
「ありがとう。でも駄目。私はここにいなくちゃ...。」
「どうして何だい?塔の管理なら街の人達に頼めば良い。俺が何とかしてやるよ。」
「普通の人には、絶対務まらないわ。」
「”普通の”って...。」
「ねえ秀哉、この時計塔の別名を知っている?」
ユナが俺の本名を呼んだ事に少し驚いたが、俺は落ち着いてユナの問いに答えた。
「ウルの塔...。だよな?」
「それは後に名づけられた物。最初は<精霊の河>って呼ばれてたの。今はもう誰も知らないわ。」
「河?それって前に話した昔話と関係があるのか!?」
「ここは<聖なるもの>が流れる場所なの。そして、あたしはその番人。」
街の人達が彼女を番人呼ばわりしたのは、あながち間違いでは無かったようだ。
「ここを守るために...私はずっと生きてきた。だから離れられない。」
「この街の人々が君を蔑んでもかい?」
「うん...それに。」
ユナがハンカチを巻き終えると、塔の周りを見回り始めた。
「明らかに、ここはおかしくなってきてる。夜中に鐘が鳴ったり、魔物が出たり...。」
それは俺も同意だ。現に俺がバルトウェイに来た時、最後に魔物が現れたのは10年以上前だったからだ。
「<天上界>に異変が起きているとしか考えられない。」
「!?何処にあるんだ?実在するのか?」
「うん...。聖なるものの流れ着く先の世界。このまま放っておけない...。<闇の雫>だって控えているし...。」
「その言葉、以前レダから聞いた事がある。ユナ、君は一体何者なんだ?君の知っている事を全部俺に教えてくれ!」
すると突然、塔が大きく揺れだした。
「なんだ!?」
「あっ!」
それは一瞬の出来事だった。散らばっていた魔物の肉片が、ビデオを巻き戻すかの如く、元通りになっていった。肉片は忽ちベルフェザードの体を再生し、ユナをその手の中に捕まえていた。
「油断しおったな、小僧!」
初めてベルフェザードが俺に喋りかけた。いや、この声は...。そうだ!俺が初めて魔物を倒した後に聞いた声だ!
「我は生き返る。何度も何度でもな!」
「ユナを返せ!」
俺は直ぐにユナを取り返そうとするが、ベルフェザードは鋭い爪を服に引っかけ、彼女もろとも塔の上へと飛び上がった。修理したとは言え、老朽化した塔の屋根をぶち抜いて、そのまま去って行った。
「ユナぁぁぁーーーーー!!」
俺の叫びが塔に響き、静かに消えて行った。
俺達はベルフェザードの目撃情報を集めた。しかし収穫はほぼゼロだった。
「へぇ~、あれ魔物だったんだ。空飛ぶ魔物もいるんだな。」
「何呑気な事言ってんだ!時計塔のユナが攫われたんだぞ!」
「へぇ~、やっぱあいつ魔物と何か関係があったんだな。このままあいつがいなきゃ、この街は安全かもな。」
そう言い残すと住民は背を向けて街の中へと消えて行った。
「ちくしょう!」
俺は苛立つ気持ちを、道端の小石にぶつけた。
「スカイ!この街の連中の言う事に、いちいち苛立つな!」
「そうだよ。今は情報集めだろ。」
「分かってる。俺はギルドへ行ってくる。ライとエイドは酒場を当たってくれ。」
「分かった!」
ライとエイドが姿を消した後、テトが俺の前に現れた。
「おい、おいってば!」
「テト、今はお前に構っている暇は無いんだ!」
「馬鹿かお前!レイラ様がお呼びだから、街外れの森へ来い!」
「そうか...。それよりお前、例の予言の魔物を探しているんだ。見なかったか?」
「俺は知らないけど、レイラ様なら知ってんじゃねぇか?ついて来い!」
テトの案内で俺は街外れの森へ来た。そこにはレイラが待っていた。
「レイラ!ユナが攫われたんだ!魔物の行方を知らないか?」
俺は息を切らしながらレイラに問い詰めた。しかしレイラは表情1つ変えていない。
「なあ、教えてくれよ!女神なら何か知ってんだろ!」
「落ち着きなさい天野秀哉。私が言いたい事は1つだけ...。」
俺は呼吸を整えて女神の言葉を聞いた。しかし、それは俺の期待を裏切る言葉だった。
「すぐに王都へ向かいなさい。次の災厄が始まってしまいます。」
突きつけられた女神の進言。ユナはどうなってしまうのか?スカイはユナを救えるのか?そして王都で起こる更なる災厄とは?
大災厄まで残り約60年




