予期せぬ来客と、予期した天敵
街外れの森から本部へと戻った俺の目の前に、思いがけない来客が待っていた。
「こんにちは。今日はあなた方に命を助けて頂いた子を連れて参りました。リリ?リリ!ご挨拶なさい。」
レミリアに呼ばれて走り出してきたのは、目がクリクリとよく動く幼子だった。
「こんにちは。ねえねえ、このお家には、虫さんがいないね!」
「え?虫?」
「申し訳ございません。この子は空想癖が強くて、時々何を言っているのやら...。」
「すっかり元気になったんですね。良かった良かった。」
「あの時、薬草を頂いたお蔭です。」
「やくそう?...。あーー!おんじん!」
「えっ?」
「おんじん!おんじん!」
「あぁ...。命の”恩人”って言いたいのね。」
リリは小さな体を弾ませて、俺の膝に乗っかって来た。
「そのせつは、ありがとうございます!」
「あっあぁ。随分難しい言葉を知っているんだな...。」
「団長さんは、”ふろうふし”でしょ?」
「!?リリ、そんな言葉まで知っているのか?」
「うん!分かるよ!ずっと歳を取らないんでしょ!だから、待っててくれるよね!」
「え?俺が何を待つんだ?」
するとリリは満面の笑みで答えてくれた。
「リリ、大きくなったら団長さんのお嫁さんになるの!待っててね!」
俺は思わず咽てしまった。無邪気な発言だから仕方が無いが、純粋とは時に恐ろしいものだなと思ってしまった。
「あっ...。ありがとう。リリが覚えていたらな。」
「へへっ!やくそく!」
俺はリリと指切りをした。そしてリリの様な子供達の未来を守ってみせると心に誓った。
「やれやれ。最近のガキはませてるな。」
「いや、彼女は正しい!!愛があれば歳の差なんて...。あぁ...。麗しのレダさん!」
「勝手に言ってろ。」
エイドのレダへの愛に、ライは呆れ果てていた。
俺は酒場とギルド、<深淵>にも足を運び、王都へ行く方法を検討していた。以前ライが言っていた通り、山越えの道のりは時期を間違えれば極寒の旅となってしまう。
「あんたはもうすぐこの街を離れちまうのか?」
「あぁ、今度は王都を拠点に魔物を討伐するつもりだ。」
「そうか...。まあ気を付けて行く事だな。くれぐれも山を登る時期を間違えるなよ。」
「いつぐらいがいいかな?」
「早くても170日目からの方が良いな。300日目から山は白く染まるからなぁ。」
俺の世界で言えば5.6月から登った方が良いという事か。
「この街から王都への馬車って無いかな?」
「今は王都どころか、ここから西にある要塞都市グラディウスに行く奴もいないからな。馬車も魔物が怖くて走れないね。」
予想はしていたが、それでもがっかりしてしまった。やはり王都へは遠回りになるが、北西にある湿地帯を通るルートを採用しよう。
「ありがとう。またこの街に来た時は、団員達と飲みに来るよ。」
「おう、待ってるぜ団長さん。そん時にゃあ是非酒を飲んでくれよ。」
「生憎俺は下戸なんでね。」
俺はマスターと笑いながら酒場を後にした。
聖炎騎士団の戦力は女神のお墨付きである。ライも随分歳を取ったが、まだまだ現役でもある。エイドも十分逞しくなった。今の騎士団は、戦士3名、アーチャー・サムライ・魔女2名ずつ、冒険者・ヴァルキリー・剣闘士・魔術師・1名ずつである。
ベルフェザードの戦闘パターンが以前と同じなら、また生命力吸収に対する策を講じなければならない。今度の出現場所はこの街の時計塔、別名<ウルの塔>である。
次回、魔将ベルフェザードとの戦いが始まります。今回の話で時計塔の別名を載せましたが、もっと早く載せれば良かったと思いました。




