閑話 一時の安らぎ
1024年105日目
聖炎騎士団は日々、ウォルター周辺の村に現れた魔物討伐に神経を注いだ。予言の時までに色々な事が起きた。それは命懸けで戦う俺達にとって微笑ましい出来事だった。
「団長。実は俺達...。結婚しようと考えてます。」
「あたい達本気なんだ!頼むよ団長。」
結婚を考えていたのは、アーチャーと魔女だった。この2人は共に魔物と戦うにつれて仲が良くなったらしい。
「俺が心配しているのは将来の事だ。個人的には祝福してやりたいけど、子供が生まれたらどうする?」
「団長が駄目なら、子供は諦めるよ。あたいは彼と一緒になりたいんだ。」
「団長!」
「...。認められないな。」
「そんな!」
「...。」
「俺は団員達の幸せを大切にしたい...。だから、結婚も子供も認める!後の事は心配すんな!」
「団長!」
魔女とアーチャーは大変喜んでくれた。俺は団員だけでなく、この世界に生きる全ての人々の笑顔を守りたい。
俺は魔物だけでなく有力な情報が無いか、酒場へと訪れた。以前<深淵>の依頼をこなしたしたせいか、酒場の客もちょっかいを掛けなくなった。
「良い噂?」
「そう、何か無いかな?いつもマスターが入団希望者を勧めてくれているのは感謝してるよ。けどその他にも何か無いかな?」
「何かってぇ?」
「例えば、どこかにお宝が隠されているとか?」
「そんな上手い話ある訳無いだろ?」
「そうだよなぁ...。マスター、ミルクお代わり。」
「またかい?うちは酒場であって、牧場じゃないよ。」
「ゴメンよ。俺はまだ未成年なんだ。かと言って水じゃ儲けにならないだろ?」
「全く、うちの事を思っているなら、団員達と飲みに来てくれよ。」
マスターは小さく微笑みながら、グラスにミルクを注いでくれた。
「まぁあんたはこの街で最も頼りにされている人間だ。出来るだけ噂を集めといてやるよ。」
「ありがとう。」
酒場から出た俺は時計塔へと向かった。目的は勿論、彼女だった。
「スカイ、来てくれたの。」
「やぁユナ。元気そうだね。」
ユナはやはりあの時から全く変わっていなかった。
「今日はどうしたの?」
「実は...。ユナに話しておきたい事があるんだ。」
俺がユナに話したのは、前にライにも話した俺が異世界から来た事だ。いつかこの街を離れてしまう時が来る事を考えて、心残りが無いようにする為だ。
ユナは俺の話を静かに聞いてくれた。特に驚いた様子は無かった。
「ユナは疑わないのか?こんな非現実的な話を。」
「スカイにとっての”現実的”って何?」
「それは...。ちゃんとした裏付けがあって、誰もが認める証拠のある...。」
「言い伝えは?」
「非現実的だけど、長く語り継がれているのなら、事実だったんじゃないかな。」
「そう...。」
「そういえば言い伝えで思い出したよ。実は以前...。」
俺はリーフの故郷からウォルターへ戻る際に出会った老人の話をユナにした。すると今度はとても悲しい表情になった。
「どっどうしたんだ!?この話に出てくる種族達に共感したのか?」
「えぇ...。」
「一体5番目の種族はどうなったんだろな?」
「...。」
「...。そっそれじゃあ俺は本部に戻るな。何かあったらいつでも来てくれよ!」
俺はこれ以上ユナの表情が悲しくなる前に本部へ戻ろうとした。
「スッスカイ!」
「?」
「あっ...。」
「なんだいユナ?」
「...。何でも無い。また来てね。」
「ああ。また来るよ。」
俺はユナが何を言おうとしたのか気にはなったが、彼女が話してくれる時を待つ事にした。
「...。」
1024年300日目
魔物討伐を進めていく日々の中にも一時の安らぎはある。その安らぎの中で、女神レイラが現れた。
「体調の方は如何でしょうか?」
「あぁ、問題無いけど...。」
「そうですか...。」
「あのさぁ、この前は悪かった。ちょっと言い過ぎたよ。テトはどうしたんだ?あいつにも謝りたいんだ。」
「テトはいません。あの子は私の従者ではないので。」
「そうだったんだ。」
「...。近頃テトは街へ行くようになったそうです。人間に見られてはならないといつも言っていたのですが...。」
「強く束縛される程、そこから抜け出したいと思うものだ。それは人間も妖精も同じだな。」
「私は束縛など...。」
「それなら一度、街を散歩するかい?俺と一緒なら安全だぞ。」
「あなたと一緒なんて!それじゃあまるで...。」
「まるで?」
「...。とにかく!これからも頼みますよ。」
レイラが初めて人間の女性らしく思えた瞬間だった。
1026年 聖炎騎士団
・スカイ 17歳(∞)・ライ 34歳(21)




