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3年前の約束

 1021年70日目


 魔将ベルフェザードの事は忽ちウォルターに広まってしまった。騎士団の中にもゼオンやギルを恐れて退団届を提出した者も少なからずいた。けれども、俺達の活躍を聞きつけて遠くから入団希望をする者もいた。

「ここは聖炎騎士団の本部で間違いないか?」

来訪者は日本刀に似た剣を腰に差した若者だった。髪型はちょん髷では無かったが、頭の後ろにまとめて結っていた。

「拙者はここより西にある要塞都市グラディウスより参った。」

彼が言うグラディウスは、当に要塞と呼ぶに相応しい鉄壁の城壁を持った街らしい。今まで如何なる魔物の襲撃を受けても、主要区画だけは一度も魔物に踏み込まれた事が無いという。

「それはどうも。それであなたのご職業は?」

「拙者は"サムライ"と呼ばれております。鍛え上げたこの太刀筋と稲妻の如し俊足、そして味方の支援に特化した技を持ち合わせております。」

僕は彼の成績を評価した。すると体力は低いが、確かに攻撃力・素早さ・支援力がトップクラスだ。これは術者と同じ位編成に気を付けなきゃいけない...。

「分かりました。採用は前向きに考えさせてもらいます。」

「感謝致す。」

サムライは深々と頭を下げて本部を後にした。

次にやって来たのは、ツバの大きい帽子に杖を持った背の低い男性だった。俺は直感で彼が魔法使いだと思った。

「ここが噂の騎士団本部かい?僕は"魔術師"だよ。仲間の補助が得意で、回復も出来るんだ。だけど足の速さと腕っぷしの強さは苦手なんだ...。」

彼の能力を見ると、魔女と同じくらい味方のサポートに長けている。そして僧侶と同じ他回復の能力がある。体力と攻撃力、素早さは圧倒的に低いが、編成次第で何とかなりそうだ。年齢はあと3年で衰退期に入ってしまうので、入団させるか微妙な所であった。

「ありがとうございます。採用が決まったら、ご連絡致します。」

「ありがとう。じゃあね。」

魔術師は笑顔で騎士団本部を後にした。


 ウォルターの街も慣れてしまえば美しい街だと思えるようになった。とは言えやはり夜道を歩くには警戒しなければならない。

「何やってんだスカイ、出かけるなら僕に一言言ってくれよ。」

「あぁごめん、今後の団員達の事を考えてた。」

「そうか。お前の見立てじゃ今年中に何人いなくなるんだ。」

「1人か2人は確実に衰退期に入るからなぁ。入団したての団員はまだまだ戦力にするには危ない。」

「そうだな。リーフが抜けた後も俺達が魔物と戦えているのは、お前が必死に考えている戦術のお蔭でもあるんだからなぁ。」

僕らが今後の事について話し合っていると、ウォルターの住民が話しかけてきた。

「おお、あんたら聖炎騎士団だろ?今度はいつ魔物が来るんだ?」

「なんだよあんた?もしかして俺達と一緒に戦ってくれるのか?」

「冗談じゃない!俺らに何が出来るってんだ?魔物退治はあんたらに任せるよ。」

そう言い残すと住民は夜の街へと歩いて行った。

「これだよ。この街の連中は当てにならない。ギルドも手一杯だしなぁ。」

「...。ライ、まだ手の空いている所が1つあるよな。」

「おいおい。まさか...。冗談だろ!?」

僕はライを置いて”あの場所”へと走った。そしてライも僕の後を追いかけて走った。


 闇ギルド<深淵>、そこはウォルターの地下にあった。ギルド内は時計塔と同じ位の古さを持っていた。

「お前、正気かよ!?」

「実はここには来る予定があったんだよ。レダが3年後に来てみろって。」

「お前!あの女とそんな約束してたのか!?」

「誰があの女よ!それに私は、3年後に来て頂戴って言ったのよ。」

レダがギルドの奥からやって来た。

「レダ!やっぱりここにいたのか?」

「しーっ。ここで名前を口にするなんて自殺行為よ。」

レダは人差し指を口に当てて忠告した。

「なんだなんだ。噂の騎士団様が、<深淵>になんの御用で?」

闇ギルドの男がレダが出てきた奥から現れた。

「ねぇ秀哉?良い事教える代わりに1つ頼まれてくれない?」

「一体何を?」

レダの頼み事について聞くと、代わりに闇ギルドの男が答えた。

「なぁに。いつもあんたらがやっている事さ。実は厄介な場所に魔物が出ちまってなぁ。そいつを退治してくんねぇかな?」

「魔物退治...。そんなに厄介なのか?」

「本当は内にも適任がいるんだが、そいつは今ギルドにいねぇんだ。報酬はちゃんと出すぜ。」

「頑張ってね、秀哉。」

レダは僕にウインクした。彼女は間違いなく魔女だ。人の心を惑わす大魔女だ。

「いいのかよ。闇ギルドの依頼なんて受けて。」

「でも、魔物は放って置けないだろ?」

「まぁな。それより...。」

「?」

「シュウヤってなんだ?お前の名前はスカイだろ?」

「そっそれは...。とっとにかく、早く団員達を集めて行くぞ。」


 <深淵>が教えた場所は街外れの地下水路だった。魔物がいるという事もあり、不気味さが増したように感じられた。

「すまないなぁ。初陣がこんな事になって...。」

「何を仰る。拙者の力が必要とあらば、場所など選ばぬぞ。」

この戦いには入団採用したサムライのハガイを加えた。僕はライと魔女、アーチャー、騎士、術者を1人ずつ連れて来た。

「皆!闇ギルドの依頼だろうとも、俺達のやる事は変わらない。行くぞ!」

これが僕の、いや、俺の新たな初陣になった。

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