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大いなる災いまであと...。

 1019年270日目 


 フィリンが抜けて1年が経ち、聖炎騎士団ももうすぐ訪れる予言の時に向けての戦力が整いつつあった。リーフを主力の筆頭に剣闘士が2名とヴァルキリー1名。補助は冒険者ライと魔女と魔術師が2名ずつ、そして術者・戦士が2名ずつ。魔術師は魔女と同じくらい補助に長けており、僧侶・神官並の回復力を持っている。しかし足は遅く、体力も低いのが弱点だ。

「団長。今度の予言に出る魔物が、俺の故郷に出るのは本当ですか?」

「この予言書をくれた女神がそう言ったんだ。それに...。」

「それに?」

「今度の魔物は今までに無い位強敵だ。恐らくあのゼオンとドラゴン並、或いはそれ以上かもしれない。」

「そんな強敵に勝てるんですか、俺達?」

「勝つしか無いんだ!でなきゃこの世界は、リーフの故郷は間違いなく壊滅する。」

「...。」

「僕はもうバルトウェイの悲劇を繰り返したくはない。」

「俺も、故郷の人達を師匠のようにしたくないです。」

「リーフの故郷、フォレスの村の人々には万が一の準備を進めている。何があっても村人が皆殺しにされる事は無い。」

「魔物を村から追い出す事は出来ませんか?そうすれば村への被害が抑えられます。」

「そんな余裕は無いだろう。残念だが、戦闘は村で行う。村はまた立て直す事が出来るが、人の命は戻らない。」

「...。」

「勝つぞ。」

「はい。」

僕とリーフは強い覚悟を持って戦う事を決めた。


 夜になり、僕はウォルターの街を1人歩いていた。魔物との戦いにはもう慣れたのに、予言の魔物と戦う事には慣れる事が出来ない。しかも今度の相手はあの女神が警告する位の強敵だ。恐らく倒しても「第2第3の~」といった展開が待っているかもしれない。大災厄までまだ80年も残っている。僕はあと何回、出会いと別れを繰り返せばいいのだろうか?僕は団員達を、幸せにする事が出来るだろうか?

「お~い」

何処かで誰かの声がする。けど誰に向けられた言葉かは分からない。

「お~い」

声が大きくなった。まさかこれは僕に向けられているのか?

「おい!天野秀哉!」

僕は思わず変な声を上げてしまった。そして声の主はあの魔女レダだった。

「全く何度同じ事言わせるのよ!ってこの台詞も2回は言った筈よ。」

「ああごめん。ってちょっとまって!?なんで君が僕の名前を知ってるんだ。」

「何でって。あんたの頭の良さならその答えが分かる筈でしょ?」

「君だったのかい?僕にこの世界での準備をさせてくれたのは。」

「そうよ。ホントはもっと早くに会いたかったけど、あの女神に先越されちゃってさ。」

「レダとレイラはどういう関係なんだ?滅びの予言について何か知っているのか?」

「あたしは何にも知らないよ。それよりあの女神ってレイラっていうんだ。ありがとね秀哉。」

そう言い残すとレダは何事も無かったかのようにその場を去ろうとした。でも僕は逃がさない様に彼女の前に出た。

「待ってくれ!最後に教えてくれ。君が僕をこの世界に呼んだのか?」

「いくらあたしでもそんな事出来やしないよ。それより良い事教えてあげる。」

「良い事って?まさか君の個人情報を教えるとかじゃないだろうね。」

「知りたいの?」

「僕はそういう冗談が嫌いなんだ。」

レダは小悪魔の笑みを浮かべたが、僕は表情変えずに詰め寄った。

「3年後に闇ギルド<深淵>に来て頂戴。そしたら良い事教えてあげるから。」

レダはひらりと僕をかわして去って行こうとした。

「待ってよ。もうすぐ予言の魔物と戦うんだ。教えるなら今教えてよ。」

「教えて欲しかったら、絶対勝ってね。応援してるよ。」

そこにはもうレダの姿は無かった。僕は追跡を諦めて騎士団本部へと戻った。


 ここは街外れの森の中。静寂な森の中に女神レイラがいた。

「遂にあれが動き出しましたか。天野秀哉には何としてでも勝ってもらわなければ。」

「そう思ってるなら、励ましの言葉でも掛けてやれば?」

レイラはレダの言葉に少し驚いた。

「あっあなたは!?」

「初めまして女神様。それともレイラ様の方が良いかしら?」

「あなたがどうして私の名を?」

「秀哉から聞いたのよ。あっでも誤解しないでね。秀哉がうっかり口滑らせただけだから。怒んないであげて。」

「分かりました。あれももう少し勇者としての自覚を持って欲しいものです。」

「秀哉に勇者は無理なんじゃないの?だってあいつは元はただのモヤシガリ勉よ。他にも適任いたんじゃないの?」

「今となっては後の祭りです。私はただ創造神の銘に従うまでです。」

「その創造神ってそんなに偉いの?」

「あなたには分かる筈がありません。」

「分かりたくもないねえ。高い所から世界を見下ろすだけで、何もしない神様の事なんて。」

レダとレイラは強い視線をぶつけ合う。まるで今にも火花が散りそうな位だった。

「まぁあたしは楽しく自由に生きるだけさ。あんたも少しは肩の力抜いてみたら?」

「余計なお世話です。」

そう言い残すと、レダは森を出て行った。森には再び静寂が戻った。

「私には、そんな事をしている暇など無いのです。」

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