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師匠と弟子、親友と同期

 1018年30日目


 ウォルターから少し離れた草原でリーフとライが稽古をしている。この2人の関係ももう10年以上になる。

「よし今日はここまでにしよう。」

「はぁはぁ、なあまだ僕の間合いは隙だらけか?」

「初めて出会った時に比べれば随分良くなったな。武器の手入れも欠かさず行っているしな。」

「あれだけ口うるさく教えられれば、嫌でも覚えるさ。」

「...。ライ、背伸びたな。」

「筋肉だって付いたさ。」

「これは俺の師匠の受けよりなんだがな。」

「なんだ?また恥ずかしい台詞でも言うつもりか!?」

「勇敢と無謀は決して同じでは無い。大切なのは引かぬ心、そして間合い。我を失った時が最期だ。」

「...。」

「俺はこの言葉を大事にして、今日まで騎士団に努めてきた。お前にもいつかこの言葉が分かる時が来る事を信じてるよ。」

「...。時間は掛かるだろうがさっきの言葉は覚えといてやるよ。」

「そうか、ならこれだけは言わせてくれ。」

「...。」

「その言葉の悪さを直せ!」

「無理。」


 騎士団本部で僕は予言書を読んでいた。僕らが負けていたらあの魔物のせいでこの街は壊滅され、その影響で南部にある村が滅びる恐れがあったらしい。しかし今読んでいる部分には、聖炎騎士団により魔物の脅威からこの街が救われたと変わっている。しかしそれでも最後の1文は変わっていなかった。

{1099年 世界が死ぬ}

やはりこの1文を変えるには、これからも予言の年に現れる魔物を倒していかなくてはならない。すると本部にフィリンが同年代の騎士3人を連れて来た。

「スカイ、ちょっと良いかな?」

「ああ構わないけど、そちらはもしかして入団希望者かな?」

「いや違うんだ。彼らは僕と同じ時期に騎士団に入団した友人さ。」

フィリンの話によると、彼は元王都の騎士団所属の見習いだったらしい。ある日バルトウェイ付近の村で演習を行った際に魔物が現れた。しかし当時の騎士団長は魔物討伐をする事は予定に無いという理由で、見て見ぬ振りをしようとしたらしい。フィリンは騎士団長に訴えたが、自警団が村に来てくれたお蔭で村は壊滅を免れた。そしてフィリンは騎士団長の怒りを買って退団させられ、当時の自警団団長にスカウトされたそうだ。

「ちょうど騎士団がウォルター付近の村まで来てたんだ。そこで聖炎騎士団の噂を聞いてやってきたんだ。」

「でも驚いたぜ。あのフィリンがバルトウェイの自警団団長を務めたなんて。」

「でも今は聖炎騎士団の副団長なんだろ。なんで団長じゃないんだ?」

「色々あってね。それより今のリゼル騎士団はどうなんだい?もうあの頃の団長は引退しているだろ。」

「今の団長は昔の団長と変わらないさ。騎士こそが誇り高き職業なんだってのが口癖さ。」

どの世界でも差別というものは存在するんだなと思いながら、僕はため息をついた。

「それで今日はフィリンと団長に頼みがあって来たんだ。実はうちの団員達が怪我をしてて回復薬が足りないんだ。聖炎騎士団の中に回復をしてくれる団員がいたら来て欲しいんだ。」

今僕らの騎士団には神官と僧侶が1人ずついたから問題無いが、王都の騎士団も興味がある。

「分かった。その頼みは聞き入れるよ。その代わり、僕とフィリンも同行しても良いかな?」

「止めといた方が良いよ。僕はまだマシだけど、戦士の君が来たら何を言われるか分からないよ。」

「構わないさ。戦士が非凡でないのは僕が一番分かっているから。」

こうして僕はフィリンと彼の同期3人と共に王都騎士団が滞在している村へと向かった。騎士団の事はリーフとライに任せた。


 村へは馬車で向かった為、半日も掛からなかった。そして王都騎士団は半数が戦闘不能状態であった。僕は回復薬を分け与え、神官と僧侶に回復を指示した。すると1人だけ装備が違う立派な髭を生やした騎士が僕らの元へと来た。

「なんだお前たちは、吾輩は貴様らを呼んだ覚えは無いぞ。」

「団長、彼らは我々が呼んだのであります。」

「貴様ら!吾輩が命令してもいないのに勝手な事をしよって。」

「失礼ながら、彼らは騎士団の事を思って行動したのですよ。これは咎められる事態では無いと思います。」

「なんだ貴様は!貴様も王都の騎士ならば、それ相応の威厳を持つべきだ。騎士が易々と人に頭を下げるなど。」

「僕は王都の騎士ではありません。そして救いを求めるのに威厳も何もいらない筈です。」

「貴様は?そうか、貴様が前任の団長が言っていた愚か者か。王都から追い出された愚か者が吾輩に口出しするな。」

これは相当厄介な相手だなと僕は頭を抱えた。さて一体どうやってこの頭でっかちを説得すれば良いのだろうか?

「スカイ、彼らの回復が済んだら早々にウォルターへ戻ろう。ここにいても僕らに出来る事は無いよ。」

「ゴーン団長大変です。村に魔物が攻めて来ました。」

「何!?戦える者は何人いるんだ?」

「団長を含めて14人中7人です。その内3人はまだ全快ではありません。」

「という事はたった4人か。これでは戦えん。すぐに荷物をまとめてこの村から撤退だ。」

「待って下さい。この村を見捨てるのですか?」

「我々は既にこの村からの救援依頼を達成している。これ以上この村に関わる義理は無い。」

ゴーンの台詞に流石の僕も頭に来た。

「それが誇り高き騎士の言う台詞か!ならあんたはここで大人しくしてろ。その代わり戦える騎士達は僕が連れて行く。」

「何だと?吾輩の部下を殺すつもりか?」

「あなたよりまともな指揮官の下についた方が彼らの為とも言えますがね。」

僕は神官と僧侶を残し、代わりに騎士3人を連れて魔物討伐へと向かった。

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