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葛藤再び

 1011年45日目


 ギルド長の紹介や僕らの魔物討伐の噂を聞きつけて入団を希望する者が時の流れと共に現れた。長い目で見れば見込みのある者や、とっくに衰退期に入っている高齢の者もいた。

「あれ、お前ウェンリーか?」

「あら、リーフじゃない。随分立派になったわね。」

三つ編みの髪型をした女性が来てくれた。どうやらリーフと同じ故郷の出身らしい。彼女も弓使いで弓ではなくボウガンを持っている。

「私はリーフのようなアーチャーと違って体力と腕力が弱いです。ですが私達"ヴァルキリー"は足が速く、自身の怪我の回復が出来ます。」

これは嬉しい事だ。リーフ以外に遠距離攻撃が出来る者が来てくれると、僕も団員達に無理をさせない編成が組めるものだ。

「ありがとう。入団を決めるかどうかはもう少し待ってくれ。ご縁があったらよろしく頼むよ。」

僕は彼女にそう伝えると、彼女は笑顔で本部を後にしてくれた。

「私預言ノ事信ジルネ。私ノ力、魔物ニトテモ協力ネ。」

今度は何処かの民族的衣装を纏った入団希望者が来た。

「私"祈祷師"ネ。チカラモ足モ弱イケド、味方ヲ守レルシ怪我モ自分デ治セルネ。」

さっきのヴァルキリーと同じ自回復に長けた職業らしい。でもそれだけでは正直入団は難しいかもしれない。

「私達ノ攻撃ハコノ世ノ物トハ違ウネ。コレハ魔物ノ中ニモイルネ。」

んん?一体どういう事だろうか?

「魔物ノ中ニハ相手ヲ石化サセル厄介ナ奴ガイルネ。ソシタラ命ヲ落トシカネナイネ。」

石化!?この世界で初めて聞く言葉に僕は動揺した。

「スグニ対処スレバ平気ネ。ソシテ私達ハソノ"石化攻撃"ガ出来ルネ。」

これは凄い人材だ。騎士団に加われば手強い魔物に苦戦しなくなるかもしれないが、彼は既に衰退期に入っている。

「ありがとう。ご縁があれば是非採用させてもらいます。」

「分カッタネ。」


 入団希望者の中から誰を採用して誰を退団させるか僕は悩んだ。するとフィリンが僕に話しかけてきた。

「オルボとミリィは時計塔の修繕もするって言ってたよ。ユナの事を心配しての事だろうね。」

「ああ、そうだね。」

「リーフはライを指導してるよ。まるで昔のゴードンとリーフのようだったよ。」

「ああ、そうだね。」

「オルボを退団させるつもりかい?」

「...。」

「やっぱりそうなんだね。」

フィリンには僕の考えが全てお見通しのようだった。流石は元団長だ。

「入団希望者にオルボの代わりが務まるとは思えないよ。」

「それでも魔物を倒せる戦力が加われば問題ないさ。」

「スカイにとって僕らは仲間か?それとも戦力か?足りない分を補えればそれでいいのかい!?」

「仲間だって思っているよ!でも僕はもうあんな思いをしたくは無い。だから団員の事には神経を一番使ってるんだ!だからオルボはこれ以上は危険なんだ!」

ガタンっと大きな音がした。その音はオルボがミリィと共に買い出しをしてきた荷物が手元から落ちた音だった。

「だっ団長。今のは本当かぁ?オラが危険って。」

「...。」

「じょっ冗談に決まってるじゃないか。なあ団長そうだろ?オルボがいなきゃ誰が前線に出るんだい。」

「...。」

「入団者の中にオルボ並の攻撃力を持った人材がいたよ。後はスカイが上手く編成を組むって。」

「オラは、オラは皆のお荷物だったのかぁ?」

「本当にゴメン。僕にはもうこれしか言えないんだ。」

僕は深々とオルボに謝罪した。本部の中が静寂で満たされた。

「でもオラは嬉しかったなぁ。少しの間だったけど騎士団に入れてオラは本当に嬉しかった。」

オルボは少し悲しい表情をしていたが、気丈に振る舞った。

「ちょっと待ちなよ。あんたが抜けるなら、あたいも抜けるよ!」

「いや、ミリィは騎士団に残ってくれよ。オラより皆の役に立てるからよぉ。」

「オルボ...。」

「これからは時計塔の修繕に励むからよぅ。オラに出来る事があったら何でも言ってくれよ。」

「ありがとうオルボ。オルボの分まで戦うよ。だから安心してよ。」

オルボは荷物を纏めて騎士団を退団した。こればかりは何度経験しても慣れる事は出来ない。

入れ違いになるように、リーフとライが戻ってきた。

「やっぱりな。世界を救う為だの綺麗事を言っても、所詮は使えない奴を平気で切り捨てるって事か。」

「ライ!団長は団員の事を考えての苦渋の決断を下したんだ。」

「言葉ではどうとでも言えるさ。」

「そうか、でもこれだけは忘れるな。団長も俺達と同じ心を持った人間だって事をな。」

リーフの言葉が胸に突き刺さる。そうだ、僕は心を持った人間だ。人間なんだ。人間でい続けたい...。


1012年 聖炎騎士団

・騎士 2人 ・戦士 3人 ・魔女1人 ・冒険者 2人 ・アーチャー 1人 ・ヴァルキリー 1人 ・神官 2人 ・僧侶 2人

退団者 ・オルボ

 

 空が薄気味悪く感じた。そういえばバルトウェイが壊滅したあの日の空も、今と同じ黄土色をしていた。元自警団所属の団員以外は初めての預言だった。リーフは水晶石を握りしめ、ライはハープを磨いていた。ミリィはオルボに避難を伝え、僕とフィリンは最後の編成確認を行った。


 {預言の時が来た。}

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