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時計塔の番人

 ウォルターの時計塔にある鐘が鳴りだして騎士団は勿論、街の住民達が目を覚ました。オルボの話だと時計塔の鐘が鳴りだしたのは初めてらしい。僕らは住民達に時計塔について聞いた。

「一体何だってんだ!こんな夜中に鐘が鳴るなんて。」

「うるさくて眠れねぇよ!」

「誰か番人に文句言ってこい!」

住民が言うには、時計塔には管理している人がいるらしく。番人は別称の様だ。しかし誰もその番人と話をした事も無く、存在自体も怪しいらしい。

「これも預言の前触れなのかな?」

「だとしたら優しすぎるよ。魔物が出てきていないんだから。」

「本当に番人がいるなら、いずれ鳴り止むかなぁ。」

「もしいないのなら、僕らで止めに行こう。」

「止めといた方が良いよ。あそこはあたい等は勿論、<深淵>の連中だって近寄らないとこだよ。」

「だけどもし魔物がいるのなら、見過ごす訳には行かないよ。」

「本当にお人好しな奴だよ。お前らの団長は。」

「お前の団長でもあるだろ。悪く言うな。」


 僕らは時計塔まで辿り着いた。この街と共に作られた物であるから、少なくとも百年以上は経過している。そして塔からは何やら心霊現象が起きそうな雰囲気を醸し出している。

「やっやっぱり誰も居ねぇんじゃねぇかなぁ。」

「まだ分からないだろ。本当にお前は図体の割に臆病だな。」

「お前も震えているぞ。手でも繋いでやろうか?」

「僕を子供扱いするな!」

「なら震えるな。」

「...。」

すると鐘の音はピタリと止んだ。そして塔から一人の少女が出てきた。

「もう大丈夫。鐘は止まったから。」

それは何とも神秘的な雰囲気を感じる少女だった。青みを帯びた白い衣に、綺麗な黒髪だった。

「君が塔の番人かな。それとも管理人と呼んだ方が良いかな?」

「私はユナ。好きに呼んでくれて構わない。」

「良かったら僕らの所に来ないかい?こんな古い塔にいてあぶないよ。」

「駄目。私はここにいなきゃ駄目だから。」

そう言い残すとユナは塔へと戻ってしまった。

「スカイ、もう戻ろうか。鐘は鳴り止んだんだし、僕らの出番は無いよ。」

「うん。そうだね。」


 時計塔から帰る道中でユナの事をオルボ達に聞いた。

「あんな娘がいたなんて知らなかったなぁ。」

「けど何だか気味悪いよ。まるであの女みたいだよ。」

「そうかな。僕はあのお人好しと同じに思えたよ。」

「ライ、それはどういう事だ!」

「あんたが言っただろ。団長は全く変わって無いってさ。」

「あの娘も団長と同じ不老不死とでも言うのか?」

「そうとしか言えないね。滅びの預言に不老不死、もう何を言われても信じられるよ。」

「なら幽霊も信じるの?」

「それだけは嫌だね!あんたの事は認めてやるよスカイ団長。」

僕らはライが意外と小心者なんだなと笑い、ライが顔を真っ赤ににして否定した。

こうして僕らは改めて水上街ウォルターでの初夜を過ごすのであった。


 翌日、僕は街外れの森へと向かった。妖精テトが言った通り、そこには女神レイラが待っていた。

「遅いぞ異世界人!」

「これでも早く来た方だよ。まだこの街の土地勘が掴めなくて。あと異世界人ってのは止めてよ。僕はスカイ=フィールド、若しくは天野秀哉だよ。」

「私を前にして随分と呑気ですね。天野秀哉。」

「そうだそうだ!レイラ様に失礼だぞシュウ。」

テトが僕の本名を略して起こった。もし他の団員に聞かれたら面倒な事になりそうだ。

「呑気って。預言まであと5年しかないから逆に焦ってるよ。」

「私にはそうは見えませんが。」

女神レイラの鋭い眼差しが僕に突き刺さる。彼女はやはりあの事を見抜いているらしい。

「いつまであの重荷を背負っているつもりですか?」

「オルボの事か?確かにあと3年で衰えるけど、2年くらい何とかなるだろ。」

「あれよりも優れた人材は探せばいます。バルトウェイの事を忘れたとは言わせませんよ。」

僕は言葉に詰まった。確かにもう二度とバルトウェイとゴードンの悲劇を繰り返したくない。

「分かったよ。だけど僕のやり方でオルボを脱退させる。それで文句無いだろ。」

「お前、レイラ様に敬語を使え!」

「敬語ってのは相手を敬う時に使う言語だから敬語なんだ。僕はあんたを敬わない。だから敬語を使わない。以上!」

僕は捨て台詞を残して騎士団本部へと戻った。いくら女神でも、あれに敬語なんて使うものか。

「本当にあんなので良いのですかレイラ様?今からでも他の奴を探した方が良いのではないでしょうか?」

「ありがとうテト。でも彼は私の言葉からは逃れられません。絶対に。」


 僕は本部に戻る間にどうやってオルボに伝えようかと考えた。するとオルボが木材を担いで僕に声かけた。

「お~い団長ぉ~。」

「オルボ、どうしたのその木材?」

「へへっ、ミリィが騎士団本部を修繕するのに必要だってよぉ。そんでオラに必要なモンを買ってこいってさ。」

「そうなんだ。オルボって大工になりたかったりする?」

「うんや。別にそんな事は考えてねぇよ。副団長が戦う以外の特技を持ってた方が良いって言ってたからよぉ。」

「そうなんだ。」

オルボの将来を考えると騎士団にいて命の危険に晒されるより、大工として人々の役に立った方が安全かもしれない。

「そんでよぉ団長。ギルド長がギルドの連中を騎士団に紹介するのを手伝ってくれるってんだ。これでオラ達に入団者が来てくれ易くなるかもな。」

偶然かオルボのお蔭か、入団者が来てくれるのは嬉しい事だ。後でギルド長にお礼を言いに行かなくては。そしてオルボにあの事をキチンと伝えなくては...。

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