最後の予言 ~<フィアの塔> 後編〜
【アグロス(不完全体) 魔精族 レベル06】
・体力 290 ・攻撃力 10 素早さ 8.0 ・初回攻撃力 6
特徴・・・2.3巡目に異次元追放(3巡目分まで戦闘から追放)攻撃を仕掛ける。
ここに来て新たな攻撃を仕掛ける敵に出くわすとは...。主力や精霊を呼ぶ為の片方が戦闘から居なくなれば、こちらが苦戦を強いられる。そしてベルフェザードと同じ初回攻撃持ち、回復力が無いのが唯一の救いであった。
「前列は俺とサムライ。中列はマナとジード、ヴァルキリー。後列は術者とアーチャー。マナはサムライを補助。サムライは術者を支援だ。」
「いいの?そんな編成で?」
「あぁ。奴は俺達の誰かを戦闘から追放する攻撃をしてくる。恐らく補助は無効化されるだろう。だからいっその事、防御を無視した攻撃編成を組んだ。」
「前列と中列のみの全力攻撃とはまた違った攻撃編成か。俺達が死なない事を考えているなら、文句は無いぜ。」
そして魔精アグロスとの戦闘が始まった。先手はサムライが取り、運良く急所に当たった。後にヴァルキリーと俺が攻撃し、敵の攻撃はサムライに向けられたが、マナの補助で無傷で済んだ。俺は隊列を変え、そのまま2巡目に入った。
マナ、ジード、ヴァルキリー、アーチャーの順で攻撃し、遂に敵の異次元追放攻撃が来た。するとジードの足元から糸状の物が出現し、次第にジードを覆う繭となった。そして繭はそのまま地面に沈んでいってしまった。初めて見る攻撃に皆動揺を隠せないが、戦闘はまだ続いている事を団員達に伝え仕切り直した。
隊列を入れ替え、サムライの支援を受けた術者、アーチャーが攻撃した後、再びあの攻撃が来た。今度はアーチャーを追放し、3巡目が終わった。
隊列を入れ替えた4順目で、俺達はアグロスを倒す事が出来た。戦闘が終わると、追放された2人は戻って来た。
「ジード!良かった無事で!」
「お、おう...。いきなり目の前が真っ暗になったから、あの世に連れて行かれたかと思ったぜ。」
「あの世に連れ戻されたの間違いなんじゃないのか?」
「へっ。言ってくれるぜ。クソガキ。」
-10分後-
「どうやらもう少しで終点みたいだね。」
マナが息を整えながら俺に言った。だがまだ気は抜けない...この先に待っている敵こそ、破滅の予言の最後の魔物なのだから。
「皆、気を緩めるなよ。」
「大丈夫だよ。なんて言ったって、あたし達聖炎騎士団だもん!」
「そうだったな。よし、行こう!」
終着点に近づく毎に、マナの表情が曇って来た。これもやはり...悪い”気”が周囲に立ち込めているからなのか。
「いやな臭い...それになんだかどんどん空気が薄くなってくるみたい。」
「それが”殺気”ってやつだ。」
「!そうなんだ...。私、こんな大きな殺気を感じるのは初めてよ。」
「なら良かったな。これがマナにとっての、最初で最後になるだろう。俺もゼオンに何度味わされたことか...。」
「スカイ...あなたは、途方も無く長い時間を歩いて来たんだね。いつもしゃんとしているからつい忘れちゃうけど、本当は凄く...。」
「どうしたんだよ?いきなり...。」
マナが急にしんみりとした話をして来た事に、俺は驚いた。よく映画やドラマ等で、終盤になると男女の関係が深まって行くのを見た事があるが、まさか今がその時だとは...。
「ねぇ...もし...。私が不老不死だったら、スカイと一緒に歩けたかな?」
「...マナ?」
「...なぁんてね!冗談、冗談。」
マナは曇った表情を笑顔に変えて前を進んだ。今のはまさか...マナなりの俺への求愛だったのか?俺は2度目の求愛の言葉に少し困惑した。するとレイラがそっと俺の傍に寄って来た。
「...あ、あの、私...。」
「レイラ、あのな...。」
「は、はい!?」
「後ろから魔物が来てる。」
レイラは後ろから来た魔物に驚き、俺は彼女を背中に置いて迎え撃った。今は余計な事を考えずに、戦う事にのみ集中しよう。そして、もう一度...。
-10分後-
「今ので最後か。」
「あぁ、どうやらそうらしい。」
「へっ。いよいよ、あのギルって野郎とご対面って訳だ。」
「ジード、ちょっといいか?」
「?何だ?まさかお前、あいつを説得しようなんざ思ってねぇだろうな?」
「えっ?」
「やっぱりな...。お前の甘さには反吐が出そうだぜ。」
「そんなじゃないさ。...ただ、あいつ等神竜は<忘れられし者>だったんだ。だからその...。」
「ああ?何言ってんだ?」
「...いや、行こう。」
俺はジードに上手く説明出来なかった。どうすればギルと戦わずに済むのか?今更奴が考え直すなんて事は万に一つ...いや、決して有りえない事であった。それでも俺は何とかしたかった。神竜達を忘れてしまった事の償いをしたい訳で無く、あいつ自身の為に...。
塔の最上階に到達したが、ギルとベルフェザードはいなかった。皆周囲に警戒し、いつでも迎え撃てる準備をした。
「さて...あのトカゲ野郎はどこにいる?」
「...気配は近いんだが...。」
すると突然塔の壁が壊され、ギルが現れた。再び戻って来たベルフェザードの意識体は、大分大きくなっていた。
「キッシャッシャッシャッシャッシャ!...勝ち目の無いのに、死にに来たか。
「勝てるかどうかじゃない...俺達は、世界を守る為に勝たなきゃならないんだ!」
「無理だよ!キッシャッシャッシャッシャッシャ。」
するとレイラが俺達と同じ、ギルの前へ出た。
「この世界は私達の世界でもありますが、ギル、あなたの世界でもあるのですよ。」
「何を今更...白々しい!てめぇら精霊が、俺の一族を疎外し闇に葬ったんだろう!!
俺の意志は変わらねぇ!復讐するんだよ!全て壊してやる!!」
ギルの憎悪は計り知れなかった。俺達が力を合わせた聖火とすれば、ギルは負の感情を合わせた業火であった。
「胸が...苦しいよ!あなたの”殺意”が痛い...。ギル...ずっと...寂しかったのね?」
「!黙れ!!」
マナがギルの心を感じ取ると、ギルは翼でマナを吹き飛ばした。
「きゃあ!」
「マナ!平気か?」
「うん...何とか。」
「スカイ。もうやるしかねぇよ。」
ジードの言葉に他の団員達の武器を構えた。だが、俺はそんな皆を止めた。
「待ってくれ皆!...俺の、最後のやり残しをさせてくれ。」
俺は剣を床に置き、丸腰でギルに近づいた。団員達は動揺したが、ジードが抑えてくれた。俺の最後のやり残し...それは、ギルへの最後の説得だ。
「何だてめぇ!殺されてぇのか!!」
「ギル!俺はたかが百年間しか生きていないが、お前の気持ちが少しだけ分かる。世界でたった一人になった時の孤独、憎しみ、怒り...俺だって経験したんだ!」
「スカイ...。」
レイラも俺の説得を心配そうに見守ってくれていた。こんな事でギルが考え直してくれるとは思っていないが、俺は諦めたくなかった。
「ギル!...どんなに辛くても、世界を消しては駄目だ。どんな世界には、”時間”がある!時間さえあれば...いつか...俺達は分かり合える。その為の努力を、俺は惜しみはしない!何百年、何千年、何万年かかろうが、希望さえあればきっと実現出来る。もう一度、世界を信じてくれないか!」
「...うるさい...うるさい!うるさい!馬鹿め!今までの俺とは違うんだ!!」
ギルはベルフェザードの意識体に体を向けて、言葉を捧げた。
「ベルフェザードよ!我の身を汝の身に、汝の心を我が心に!」




