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無法者の町

 夜になる頃に聖炎騎士団は遂に水上街ウォルターへと辿り着いた。大きな川の上に街が作られたようだった。街の規模はバルトウェイよりも大きかった。首都と言っても良い位だが、ここから北上すると王都リゼルがあるらしい。街の雰囲気は御世辞にも治安が良いとは言えなかった。

「この街で無事に過ごしたいのなら、夜道に気を付ける事だね。」

「どういう意味だい?」

「言葉通りさ。僕らがいるギルドの他に闇ギルド<深淵>がこの街にあるのさ。」

どうやらトンデモない街へ来てしまったらしい。しかし預言はこの街を中心に起きると書いてある。すると1人の男性がオルボにぶつかってきた。

「おっとすまねえな。」

男性は軽く謝ってそのまま何処かへ行ってしまった。

「オルボ、大丈夫かい。」

「平気だミリィ、あんなのどうって事ねぇや。」

「違うよ。貴重品の事だよ。」

「えっ?あっあれ?ねぇ、オラの財布がねぇ!」

やはり掏られてしまったらしい。他の団員達も貴重品を掏られない様に気を付けた。

「あいつだ。さっきの奴が盗んだんだ。絶対取り返してやる!」

「諦めろ。掏られたお前が悪い。それがこの街の暗黙のルールだろ。」

「いいや絶対取り返してやる!絶対に絶対に絶対に!」

オルボは一心不乱にあの男の後を追いかけた。僕とフィリン、ミリィもオルボの後を追った。

「お前は行かないのか?」

「元々仕方なく一緒にいただけさ。いい加減あの2人には参ってたんだ。」

「ならどうしてミリィを助けようとしたんだ。」

「それは...。」

「一緒にいると疲れたり、面倒な事に巻き込まれたりもする。それでも気になってしまうって事は。」

「何なんだよ。」

「お前らは”仲間”だって事さ。」

「なっ何だよ!そんな恥ずかしい事言うなよ。」

リーフとライもオルボ達の方へと走りだした。


 僕らは酒場に着いた。バルトウェイと違ってここには殺気だった客達がいた。充満した煙草と酒の臭いでクラクラしそうだった。そしてオルボが例の男に問い詰めていた。

「てめぇ、オラの財布を返せ!」

「ああん?知らねえなぁ。」

「惚けんじゃねぇ。さもねぇとブッ飛ばすぞ!」

「おうよ。やれるもんならやってみろ。こいつが見えてねぇならなぁ。」

男は剣を取り出した。すると酒場は野次馬の声が響き渡った。

「いいぞいいぞ、やれやれ。」

「俺はオルボに1万ゴート。」

「俺はダストに3万ゴートだ。」

忽ち賭けが始まってしまった。オルボはダストを一突きすると呆気なく吹き飛ばされた。するとダストは2人の加勢を率いてきた。

「どうするスカイ、僕も盾で加勢しようか?」

「けど万が一ここにいる客全員を敵に回したら、僕らはこの街にいられなくなる。」

「ほっときゃ良いんだよ。こんなの日常茶飯事だ。」

「そうなのか?」

3人の男達がオルボに体当たりすると、オルボは吹き飛ばされてしまった。そして1人の客にぶつかってしまった。

「オルボ!」

「なんだぁ、やっぱり唯の木偶の坊だったか。」

ミリィがオルボの元へ行くが、気を失っていた。そしてオルボがぶつかった客が口を開いた。

「あ~あ。大事な一張羅に安酒が付いちまったよ。」

相手は女性だった。しかも僕の知る絵本に登場してきそうな魔女の恰好をしていた。

「あんたらだね。この木偶をあたしにぶつけたのは?」

「なんだぁ、その綺麗な顔に傷付けられたくなきゃ引っ込んでな。」

「ふうん。そんな刃こぼれした剣であたしをやろうってかい」

ダストは赤面した。

「うっうるせえ!女は引っ込んでな。」

「あったま来た。あんたら全員命を落としても知らないよ。」

女性がコートから1本の杖を取り出した。すると男たちは突然天井まで浮き上がり、大きな音を立てて落下した。僕は間違いなく彼女が魔女であると確信した。喧嘩が終わると客達は騒ぐのを止めた。

「さぁてと、こいつらが起きる前に有り金頂いておこうかな。」

女性が3人の財布を盗むと、ミリィが女性に指摘した。

「ちょっとあんた!その財布はオルボの物だ。返しとくれ。」

「生憎それは出来ないね。そいつもこいつらと同罪だからね。」

「あたいらは被害者さ。弁償はいいけど、それにはそいつの大事な物が入っているんだ。」

「それってもしかしてこれかい?」

女性は胸元からペンダントを取り出した。

「”愛しのオルボへ、永遠の愛を込めて。ミリィ。”随分可愛らしいじゃないか。」

「かっ返しとくれ!」

ミリィは赤面して訴える。すると女性は笑いながら財布とペンダントをオルボに向けて投げた。

「久々に大笑いしたよ。それはその木偶に返してやるよ。」

そう言い残すと女性は酒場を後にした。

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