水上街ウォルターへの道のり
バルトウェイを出発してから何日たっただろうか、森の中で魔物を警戒しつつの休息は疲労が溜まるだけで大した回復にはならなかった。道中団員が体調を崩した時は出来る限りの治療をして、何とかウォルターまで辿り着く様に進んだ。
1007年50日目
まだまだ険しい道が続く中、リーフが何かを感じて弓を構えた。
「誰だ!大人しく出てこい。」
「まっ待ってくれぇ。オラ達は悪人じゃねぇ。」
力のある声だった。そしてその声の持ち主は緑のタンクトップに角が付いた兜をかぶった大男だった。
「もっもしかして、おめぇ等山賊か?オラが相手してやるぅ。」
「何言ってんだ。図体だけが取り柄のお前に何が出来るんだ。」
今度は美青年がやって来た。金髪で背中にはハープ、そして首にはオカリナを下げていた。
「何だとぅ。オラが居ねえと何も出来ねぇ癖に、口だけは達者だなぁ。」
「僕をお前と一緒にするな。ミリィが居ないと何も出来ない癖に。」
「そっそうだった。早くミリィを助けねぇと。」
まるで漫才を見ているようだと思ってしまった。
「早くしないとミリィが魔物に食われちまうよぅ。そしたらオラは、オラはぁ。」
「そんな面すんなよ。お前も男だろ。メソメソすんな。」
大男は泣きっ面になり、美青年は彼を叱る。人は見かけに寄らないなぁと思ったが、呑気な事を考えている場合じゃ無かった。
「一体どうしたの?何かあるなら聖炎騎士団が力になるよ。」
初めて人前で騎士団を口にしたが、やはり聖炎という響きが少し恥ずかしかった。
「聖炎騎士団?聞いたことが無いなあ。第一、騎士団って癖に騎士が1人だけかよ。」
美青年はやたらと反発的な返事をしてくるなぁ。すると大男が僕らに懇願した。
「騎士団なら困っている人を放って置けねえ筈だ。お願いだからオラのミリィを助けてくれぇ。」
「わっ分かった。それなら君らも協力して貰えるかな?僕らは長旅で戦えない者もいるんだ。」
「お安い御用だ。オラは剣闘士のオルボ、力なら誰にも負けねぇぞ。」
「僕はライ、冒険者だ。遠距離攻撃以外なら何でも出来るぞ。」
【オルボ 剣闘士 22歳】
・体力 30 ・攻撃力 20 ・素早さ 1.0 ・支援力 10 ・衰退期まであと3年
【ライ 冒険者 15歳】
・体力 15 ・攻撃力 7 ・素早さ 6.5 ・自回復力 6 ・支援力 5 ・援護力 5 衰退期まであと40年
ここに来て新たな職業の2人に出会えて嬉しかった。しかしオルボの衰退期が近い事実を知ってしまった。
「行きましょう団長。早く2人の仲間を助けなきゃ。」
「そうだな。前線は僕とオルボとライ、フィリンがライを援護してリーフが弓で攻撃をする。暫くこのままの戦術で行き、団員が回復したら随時入れ替えよう。」
僕らはオルボとライを加えて仲間の元へと向かった。
道中魔物が出たが大した事は無かった。オルボは鉄槌で攻撃し、手斧で団員達を支援した。
「凄いなぁ。確かにオルボのパワーは僕らの中で一番だな。」
「パワー?良く分かんねぇけど、褒められてるみたいでオラ嬉しいや。」
「それで気弱な所が無ければ文句無しなんだがな。」
「ライ、オメェは一言多いんだよ。」
ライはハープを奏でて魔物に攻撃をし、オカリナで回復と支援・援護をした。あれも魔法の様な物なのだろうか。
「ライ、もう少し間合いに気を付けろ。」
「仕方ないだろ、僕の武器は剣や弓と違って弱いんだ。至近距離から攻撃しなきゃ魔物を倒せないんだ。」
「急いで戦う必要はないんだ。1つ1つ確実に仕留めていくんだ。」
「僕は効率良く仕留めたいんだ。」
リーフはライに忠告するが、本人は耳を傾けようとしなかった。
「...。団長、俺にライを任せてもらえないでしょうか?」
「ああ、分かったよ。」
そして遂に目的地へと辿り着いた。そこには洞穴があり、1人の少女が隠れていた。
「ミリィ!無事だったかぁ。助けを呼んで来たぞぉ。」
オルボは泣きっ面で少女の元へ行くが、少女は彼の頭を叩いた。
「なんて顔してんだい。あたしにゃ煙玉があるから暫くは大丈夫だって何度も言っただろう。」
「すっすまねぇ。でもオラミリィが心配でぇ、心配でぇ。」
「あんたがそんなんじゃ。あたしゃ死んでも死に切れないよ。」
どうやら2人はカップルらしい。ガルドとケーラの事があってから僕も男女の関係に気付く様になったらしい。すると僕らの前に2つの首を持った狼が現れた。
「これはヘルドッグ、厄介な奴だな。」
【ヘルドッグ レベル02】
・体力 100 ・攻撃力 4×2 ・素早さ 8.0 ・回復力 06
「なあに、あたいが加われば何てことないさ。因みにあたしゃ魔女だよ。オルボみたいな力は無いけど、足の速さと味方の補助はピカイチさ。」
【ミリィ 16歳 魔女】
・体力 10 ・攻撃力 3 ・素早さ 12.5 ・支援力 18 ・援護力 16 ・衰退期まであと30年
確かに彼女の言う通りだった。これは騎士団の戦力が大きくなる事間違い無しだ。
「よし、前線は僕とオルボとフィリン。リーフは引き続き後方から攻撃。ミリィはオルボを、ライは僕の補助を頼む。」
作戦を伝えて魔物との戦闘が始まった。ヘルドッグの動きは早く、2つの頭から噛み付き攻撃を繰り出してきた。しかしミリィとライの補助のお蔭で致命傷を負うこと無く、魔物に大きなダメージを与える事が出来た。
魔物との連戦を終えて僕らはオルボ達と残った食料を全て使って祝勝会を開いた。温かい食事が疲れた体に染み渡った。ライがハープを奏でて歌声を聞かせてくれた。平和な草原にライの綺麗な歌声が響き渡った。
「ふうん、人間にも歌える奴がいたんだな。」
僕の耳元で誰かが囁いた。僕は周りを見渡したが、誰もいなかった。
「どこ見てんだ。僕はお前の目の前だぞ。」
すると目の前に小さな妖精がいた。どうやら僕以外は見えていないらしい。
「僕はテト、レイラ様の使いさ。レイラ様はウォルターにある森で待ってるってよ。忘れんなよ。」
そう言い残すと妖精テトはフッと消えてしまった。僕はオルボ達に予言書の事を話した。
「そりゃあ大変だぁ。だったらオラ達も手伝うぜ。一度でも良いから騎士団に入ってみたかったんだぁ。」
「どうも信じられないな。僕は今の所反対だな。」
「あたいもだよ。滅びの予言書なんて<大魔女様>くらい怪しいよ。」
ミリィから初めて聞く言葉を聞いて僕は尋ねた。
「大魔女様ってのはミリィ達の長のような人物なのかい?」
「違うかな。何でも相当過酷な修行を経た魔女しかなれないとか、何百年も生き続けているとか色々あるね。」
「『いたずらっ子は蛙にされるよ。』みたいなものかな。」
「まぁ、そんなとこだね。あたいも詳しくは知らないんだ。」
予言書を読んでも大魔女に関する記述は無かった。一先ず大魔女様の事は頭の片隅に入れておこう。
「とにかく騎士団への入団はちょっと待ってくれ。僕らはウォルターにあるギルド所属なんだ。ギルド長に話を通してからじゃないと。」
「分かった。僕らもウォルターを拠点にするから、いつでも待ってるよ。」




