新たな出発
僕らは耳を疑った。自警団の主力の1人であるガルドが僕らと共に行けないという言葉を。どういう事だろうか?まだガルドは衰退期に入っていない筈。ガルドはその理由を僕らに明かした。
「フランを...育ててやろうと思うんだ。」
フランはまだ7歳で、生き残った住民もフランを養子に出来る余裕は無いらしい。
「あいつは一度に親と故郷を失ったんだ。だから俺とケーラが親代わりになろうと決めたんだ。」
僕は驚いた。ガルドだけでなくケーラまで残るなんて。
「スカイ、百年先の未来の為に戦おうとするあなたは素晴らしいと思う。でも私たちは今を守りたいの。」
「何の相談も無しに決めちまってすまない。けどよ、こいつの中にも新しい命が宿ってるんだぜ。」
追い打ちをかける事実を明かされた。僕が異世界から来たのと同じくらい団員達は驚いた。あの時僕に相談した子供とは、ケーラの子供だったのか。
「分かった。ならバルトウェイの事は2人に任せよう。ガルドとケーラの子供ならきっと逞しい子になるはずさ。いいだろうスカイ。」
「うん。僕も反対しないよ。今まで本当にありがとう。」
この日を僕は決して忘れない。戦い方を教えてくれた戦士と優しく支えてくれた神官、そして自警団の柱だった偉大なる僧侶の事を。
翌日は快晴だった。昨日の悪夢が嘘のように雲1つ無かった。僕らはゴードンを埋葬した。墓石代わりに彼が使っていた杖を用いた。
「晴れて良かったです。師匠は...太陽が好きだったから。」
リーフは水晶石を握りしめて気持ちを新たにした。
「スカイ、今日から君が団長になってくれないか。僕が団員達を支えようと思う。」
「いいのかい。僕なんかで。」
「親友の君だから頼みたいんだ。」
フィリンはゴードンの代わりに団員達の教育をすると決めた。そしてリーフも僕に提案してきた。
「なら自警団じゃなく、騎士団にしませんか?俺達もうバルトウェイには戻らないんでしょう。」
「騎士団か。なら名前はそうだなあ。聖炎騎士団というのはどうかな?」
「聖炎?これはどういう意味だい。」
「僕らはこれからも出会いと別れを繰り返す。誰かが誰かに思いという名の炎を託し、やがては大きな炎へと大きくさせるという願いを込めたんだ。」
「なら俺もいつか誰かに師匠から受け継いだ炎を託す時が来るんですね。」
「そういう事だな。」
僕らはこの日を以て、自警団から聖炎騎士団へと改名した。
「皆気を付けてな。バルトウェイをいつかどんな魔物が来ても崩れない頑丈な街にしてやるぜ。」
「皆の無事を祈っているわ。子供が生まれたら、皆の事を自慢するね。」
僕らはガルドとケーラに別れを告げて次の目的地へと進んだ。ケーラは僕らの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
{こうして異世界から来た青年は女神から預言書を託され、いずれ来る災厄から世界を守る旅へと出かけました。屈強な戦士と優しき神官、そして偉大なる僧侶に別れを告げて騎士団は進み始めたのでした。}
1007年16日 聖炎騎士団
・スカイ 17歳 ・フィリン 26歳 ・リーフ 21歳 他団員11名
退団者 ・ゴードン(戦死)・ガルド ・ケーラ
これでバルトウェイ編は終わりになります。次からは水上街ウォルター編が始まります。




