最後の予言 ~<精霊の胎動>~ 後編
<破壊と再生の彼岸>
<精霊の胎動>を進み続ける事数時間...。漸く半分まで到達したが、魔物ばかりでゼオン達の姿が見え無かった。
「ジード!落とし物だよ。」
マナがジードに渡したのは、出発前に老婆から頂いた巾着袋だった。
「はい、おばあさんのお守り!」
「!...俺のじゃねぇよ...。スカイに渡せ。」
「あれ?でも、さっきの戦いで確かにジードが落としたよ?」
「違う!俺のじゃ...」
「素直じゃないなぁ!ねぇ、スカイ...。」
マナが俺に声をかけようとしたが、俺は掌の向けて止めさせた。
「しっ!静かに...声が、聞こえないか...?」
「えっ?...別に...?」
「?俺も何も聞こえないぞ?空耳じゃねぇのか?」
「...そうかな?あれ?もう止んだみたいだ...。」
「...ここは確かに"寒い"わね。心を開き過ぎないようにしないと。」
"寒い"..."心を開き過ぎる"...。マナの言葉は俺にはよく分からなかったが、今俺の目の前に起きている事はハッキリと分かった。
「おっと、また魔物だ。よそ見してっと食われるぞ!」
-10分後-
「何だったんだろう?さっき聞こえた声は...?」
魔物を倒し、さっきの幻聴に疑問を感じながらも、俺は前へ進み続けた。
<幻夢の深淵>
長い一本道の峠を越えた頃、テトがある事に疑問を感じた。
「ゼオンはどうしてレイラ様を拐ったんだろう?」
「そう言えば...あの時奴はレイラだけ攻撃をしなかったな。縄や魔法で拘束すれば良かったのに、何で態々投降させるような真似を...。」
「悪い予感がする!急げ!!」
テトは俺達を引き離すかのように飛んで行き、俺達もテトが魔物に襲われないように追いかけた。
「レイラ様...どうかご無事で...。」
<昏睡宮>
低レベルとは言え、魔物との連戦で団員達に疲弊の色が見え始めて来た。この時点で祈祷師、僧侶、冒険者が不調状態となってしまった。そして俺の身にも再び、幻聴は聞こえ始めて来た。だが今度はジードにも聞こえるそうだ。
「スカイ...今度は俺にも聞こえるぜ。これは...確かに声だ!誰のだ?どこから聞こえる!?」
ジードが剣を抜き、幻聴の出所を探ろうとすると、マナが俺達に注意した。
「それは、まやかしよ!捕われないで!!」
「あぁ、ちくしょう!昔の記憶が蘇りやがる...。くそ!過去なんて...思い出したくもねぇ!!」
「ジード!しっかりして!!」
頭を抱えて苦しむジードをマナが懸命に励ます。一方の俺は身に覚えのない記憶が脳裏に浮かんだ。
真っ黒な魔物に立ち向かう一人の男...そしてレイラに似た女性の首元を...あれは...生き血を啜っているのか!?
男がまるで吸血鬼の様に見えたが、女性は男にこう告げた。
『生きなさい...そして、何百年も戦い続けなさい。』
「スカイ!しっかりして!魔物よ!!」
マナの一喝で俺は正気を取り戻した。ジードも回復して魔物に剣を向けていた。
「あっ、あぁ!!ごめん、マナ...。助かったよ。」
-10分後-
魔物を倒しても、未だに違和感は残っていた。あれは俺の記憶では無かった。ならば一体誰のだろうか?あの黒い魔物はベルフェザードとは違っていた...。あれは何だったのだろうか?
答えが見つからない疑問に悩まされながらも、俺達は前へと進んだ。
<オーラムゲート>
長い道のりも"もう間もなく"と言う頃、俺の違和感は別のものへと変わっていった。
「何だ、この感覚...。心が...掴まれる...。」
『使命の為ならば、魔物だろうが何であろうとも斬り捨てる!』
『止めといた方が良い。今のあたしじゃ足手纏いだ。』
『リリ、大きくなったら団長さんのお嫁さんになるの!』
『私も貴方と同じ不老不死だけど、貴方には仲間がいる。』
『田舎者の上に馬鹿ときたか。』
『オッサンには言われたかねぇよ!』
『ライ、お前は俺の自慢の弟子だ。忘れるな、大事なのは引かぬ心と間合い。死に急ぐなよ。』
『あっ...、あぁ...。ありがとうごさいました!』
『すっすまねぇ。でもオラ...ミリィが心配でぇ、心配でぇ。』
『あんたがそんなんじゃ。あたしゃ死んでも死に切れないよ。』
『スカイ、今日から君が団長になってくれないか?
親友の君だから頼みたいんだ。』
『ほほう弓使いか。ところでお主、弓はどうしたのかの?』
『えっ?ああしまった!』
『大丈夫だよ副団長。オイラだって強くなっているんだし、それに今日はとっておきがあるんだから。』
『さてはあなた、私たちをバカにしに来たのね!』
『おいおいケーラ。こいつが俺たちの仲間になりに来たとしたらどうするんだよ?』
『あ~あ。大事な一張羅に安酒が付いちまったよ。』
俺は涙が止まらなかった。この百年間、俺はこんなにも素晴らしい勇者達と大切な人達に支えられて来た事に...。するとテトの声が耳に入って来た。
「スカイ!しっかりしろ!魔物はまだ襲って来るんだぞ!」
「...あ、ああ...。」
<アルバレスの骸>
魔物を倒した後、またしても身に覚えの無い記憶が浮かんだ。今度は男が立ち向かった魔物の事が見えて来た。
「...あの魔物は...今までのとは違う...。天上界が...あれを産み出した???」
「スカイ!惑わされるな!前を見ろ!」
テトの声で俺は、再び現れた魔物に気付いた。俺は咄嗟に指示を出し、何とか応戦した。
-10分後-
「これで、終わりか...?」
「スカイ、大丈夫?」
「あぁ...何とか...。」
「過去の亡霊も出尽くしたようだな。お次は何だ?」
「あ!あれは...。」
マナが指指した先、道の奥から白い光の波が押し寄せて来た。まるで鉄砲水の勢いであった。光の波は瞬く間に道を覆い尽くし、俺達に襲いかかった。
「<死界の吹雪>だ!」
テトが俺達に叫んだ。しかし俺達は余りの眩しさに、目を開けられなかった。
「光を見るな!目が潰れるぞ!!」
目を開けられなければ前へ進めない。進めなければ、ゼオン達を追いかける事が出来ない。打つ手無しと諦めかけたその時、声が聞こえた。
『秀哉!<竜の涙>を掲げて!!きっと...貴方達を守ってくれる。』
俺はその声に従い、肌身離さず持っていた指輪...<竜の波>を掲げた。




