最後の予言 ~<精霊の胎動>~ 前編
俺達は光の道を進んだ。ただひたすら真っ直ぐ進み、ゼオン達に追いつく為に進んだ。テトが言うには、俺達が進んでいる道は<精霊の胎動>と呼ばれており、<出生の門>をくぐったと教えてもらった。確かに<精霊の門>は、<天上界>で浄化された魂が地上へ帰る為の物だ。つまり俺達はこれから、魂が地上へ帰るまでの道を逆走する事になる。
<受肉の丘>
「この道...俺達が住む世界のものじゃねぇな。」
「あぁ...正に生と死の境界線だな。」
「ここは別名<ヨーンの道>だ。天上界に繋がっている。本来なら精霊の門は一方通行なのに...。ベルフェザードが人間界からの通行も可能にしてしまったからな...。頼む!もっと急いでくれ!レイラ様が...。」
するとテトの背後に魔物の姿が見えた。
「テト!危ない!!」
俺は咄嗟にテトを抱え、魔物の攻撃からテトを守った。
「後ろに気をつけろ!レイラを助ける前に俺達が殺られちゃ意味がねぇ。」
「テト!大丈夫か?」
「あ、あぁ...」
「どうやら楽な道のりではないようだな...。皆、気を引き締めるぞ!」
-10分後-
魔物は大した強さで無かった為、編成さえ間違えなければ体力を消耗する事は無かった。だがこれから先の事を考えると、魔物との連戦は避けられない。
<邂逅の谷>
ヨーンの道を進んで行くと、マナが何かに気がついたようだった。
「ねぇジード...感じない?ヨーンの道が、私達を拒んでいる。この場所にとって、私達は異物なのかな?」
「"異物"?んなもん存在しねぇよ。そんなのは群れたがる連中の言い訳だ。」
「...ジードらしい考え方だね。」
「何だ?納得してねぇな?なら言い方を変えてやる。全ての生き物は、あまねく"異物"だよ!
人間だろうが魔物だろうが精霊だろうが...所詮根っこは一人。己のみ。違うか?」
ジードの考えは極論かもしれないが、俺は心の中で同意した。俺がいた世界も"異物"だらけだった。同じ人間でも髪や目、肌の色が違い、言葉も違っていた。全ての生命は海という根っこから生まれたのに、どうしてこんなに自分と違うものが溢れているのだろうか...。
ジードの言葉を聞いたマナは、少し考えた後に口を開いた。
「"その通り!"...って言うには、私はまだまだ修行が足りないかな?
独りぼっちは嫌だって思っちゃう。誰かと理解し合える日を夢見てしまう。根っこの部分で、やっぱり誰かを求めちゃうんだよ。」
「...その誰かがテメェを見ていなくてもか?」
「...。うん。...それでも...好きよ。私、負け戦って嫌いじゃないんだ。」
「...そうか。」
すると俺達の目の前に、再び魔物が立ち塞がっていた。
「!でも、こっちの戦に勝てよ。敵のお出ましだぜ!」
「!了解!!」
マナとジードは、気持ちを切り替えて魔物に立ち向かった。
-10分後-
「へっ。ザコが道塞いでんじゃねぇよ!」
「よしっ、先を急ごう!」
<ニアパレスの回廊>
この道を進み出してからどれくらいの時が流れただろうか...。まだまだ終わりが見えず、ひょっとすればまだ半分にも達していないのかもしれない。
道が平らでは無いせいか、随分走りにくかった。後ろの方で団員が転ぶ声が聞こえた。
「いつもだったら、もっと道が広いんだ。いつもだったら、魔物なんていないんだ。この状況は異常だよ...。一体どうなっちゃうんだ?」
テトの不安が俺にも伝わって来た。365年に一度開く<精霊の門>...。<天上界>で浄化された魂が地上に帰るこの道で何かが起きれば、魂は地上に帰る事が出来なくなってしまう。そうなれば地上は...俺達の世界は...。
「レイラ様がこのまま戻って来なかったら僕は...僕は...。」
「テト、落ち着け!俺達は負けない!だから、レイラは必ず戻って来る!!」
「スカイ...。」
「...必ず、助けるから!」
俺はテトの目を見て言った。俺の目を見たテトは、泣き出しそうな顔を徐々に戻した。
「なぁ、スカイ...。人間って、悪くないのかもな。」
「気付くのが遅すぎるんだよ。」
俺はテトの言葉に笑った。そして再び前を向いて走り出した。
「(待ってろよ...レイラ!)」




