最後の予言 ~始まり~
ゼオンの不吉な言葉を胸に、聖炎騎士団の面々はそれぞれ準備をしながら"その時"を待っていた。
<闇の雫>と言う名の皆既日食が起きる日が、世界最期の日と言っても過言ではなかった、団員達も最後の決戦に向けて準備をして来た。
マナとジードも、それぞれの目的を達成しても俺と共に戦う事を選んでくれた。こんな俺について来てくれた団員達の為、今まで共に戦って来てくれた仲間達の為、そして...黒死病の猛威にも屈しなかった世界の為にも、絶対に勝たなければならなかった。
テトが騎士団本部に戻って来た。その小さい体には見合わないくらいの量の薬草を持って来てくれた。
「マナ、ムカデ草を摘み終わったぞ。」
「お疲れ様!」
「本当に疲れたぞ!マナって人使いが荒いよな。」
「仕方ないでしょ。ムカデ草は崖の上にしか生えない薬草なんだもの。羽根があるのはレイラかテト。...レイラに頼めば良かった?」
「とんでもない!お前、女神様をなんだと思っているんだ!?」
「ごめんごめん。ほら、ご褒美の山羊の乳!搾りたてよ。」
「僕を餌付けするな!」
一方でレイラが俺の元へと来た。これが彼女から告げられる最後の予言だと察した。
「スカイ...時が満ちたわ。1099年 大地の裂け目に、闇のしずくが落ちる。時を巡った魔将は目覚め、ついに万能の力を手に入れるだろう。
これが予言書に書かれている"闇の雫"の内容よ。」
「いよいよベルフェザードとの、最後の戦いか...。」
「そして予言書はこう続くわ。
1099年 全ての世界。 砂褐色の空。銀色の月。鳴り止まぬ不協和音。その矛に震える大地。災いは巡る先に翼を下ろし、黒の根を張るだろう。滴り落ちた涙。射抜かれる聖女。世界は絶望に塗りつぶされている。
1099年 そして、全ての世界が、死ぬ。」
「まさか、"射抜かれる聖女"って...お前の事じゃないよな?レイラ?」
「...。」
レイラは曇った表情で返答はしてくれなかった。俺はそんな彼女の肩を掴み、真っ直ぐその瞳を見た。
「安心しろ。予言は必ず変えてみせる。誰一人失う事無く、乗り越えるさ!」
「ありがとう、スカイ。」
俺とレイラが予言の話をする一方で、騎士団本部に来客が来た。それは一人の老婆であった。
「あの...すみません。団長様はどちらに?」
「もうすぐ発つ所だが、入団希望か?随分豪傑な婆さんがいたもんだ。」
老婆を対応したのはジードであった。老婆はジードを見て驚くどころか、笑顔で笑った。
「おやおや!あなたが団長様ですか?まぁまぁ、何と凛々しくて怖いお顔です事...」
「婆さん、喧嘩売ってんのか?それに俺は...」
「団長様、これをお持ち下され。」
そう言うと、老婆はジードの手に巾着袋を渡した。大きさが神社の御守り程であった。
「私が皆様の安全を願って、100日の願掛けをした御守りでございます。老いぼれた体故、何のお手伝いも出来ませぬが、何卒ご無事で...。」
「...御守り...」
「どうもありがとう。良かったな、団長。」
「て、テメェ!!」
「はい。では、怖い顔の団長様もご機嫌よう...。」
老婆は深々と一礼して、本部を後にした。
「一言多い婆さんだぜ...。」
「彼女のように、我々に希望を託す者も少なくは無い事を...よく覚えておきましょう。」
「あぁ...そうだな。」
「待てよスカイ。こいつは婆さんがテメェに作ったモンだろうが?」
「いや、それはお前が持ってろよ。別に邪魔にならないだろう?」
「あの婆さんが俺をテメェと勘違いしたせいで、こんな物を受け取る羽目になったじゃねぇか!」
「にしても凄いお婆さんだったなぁ。"死神"を騎士団団長と勘違いするなんてなぁ。」
「殺すぞテメェ!!」
1099年345日目
<闇の雫>が起きるグランブール湖がある湿地帯へと到着した。だが時刻は太陽が昇りきった正午であった。これから起こる<闇の雫>を待って太陽が重く湿っている。その静けさを切り裂くように、ドラゴンの雄叫びが走った。
「キッシャッシャッシャッシャッシャ。やっと来たな、薄汚い人間共よ!」
「薄汚いのはどっちだよ?このトカゲ野郎!」
「うるさい!!...この先は通さぬ。お前等はここで、俺に殺されるのさ。キッシャッシャッシャッシャッシャ!
「ギル!これが最後の忠告だ。魔物と手を組むのは止めろ!」
「あぁん!?」
「世界を滅ぼせば、お前の仲間達は帰って来るのか?少なくとも、ユナはもう帰って来ない!」
「黙れ!貴様がユナの名を口にするな!!お前も所詮薄汚い人間だ。だから平気でユナの名を我が物としているのだろう!?」
「違う!俺はユナから奪った訳じゃない!ユナが俺達人間に、思いを託した事を忘れぬようにする為だ!!」
「自分の都合の良い解釈をするのは、人間の得意技だな。」
俺はギルとの戦いを避ける為、何とか和解する説得を試みたが...ギルの憎悪は弱まらなかった。俺がギルとの戦いを避けたいのは、ベルフェザードとの戦いを控えているからでは無く、ギルの事を思っての事だった。ベルフェザードが世界を滅ぼそうとすれば、きっとギルもただでは済まないと思ったからだ。すると俺とギルの会話に、ジードが割り込んで来た。
「スカイ、こいつはもう引き返す気なんざ更々無ぇよ。下手な時間稼ぎはこっちの首を絞めるモンだぜ。」
「ジード...。」
「おい、トカゲ野郎!テメェが俺達を略奪者呼ばわりすんなら、テメェから奪っても文句は無ぇよな?」
「何だと...。」
「決めたぜ!テメェをブッ殺したら、テメェの名前を俺が貰ってやる。」
「キ、貴ッ様ァァァァーーーー!!!!」
ジードの言葉でギルの怒りが限界を超えた。最早説得の余地は皆無だった。
「ジード、お前!!」
「頭に血が上った馬鹿程単純な奴はいねぇよ。」
「失う物が何も無い奴程、怖ろしい奴もいないけどな!」
【ギル 幻獣族 レベル09】
・体力530 ・攻撃力12(石) ・素早さ26.0 ・回復力18
特徴•••2.3.4巡目に煉獄の炎攻撃。攻撃力10、5×4。
常に石化攻撃にかなりの素早さ、そして4巡目分まで残る煉獄の炎は、ローテーションをする毎に必ず5のダメージを受ける。何回かギルに似た魔物を倒した事があるが、比べ物にならないくらいであった。ゲルダとの戦いで精霊エアリーを使った為、あとはアマノミツルギのみ...。
「前例はジードとサムライ、祈祷師。中列はアーチャー、魔女、マナ。後列は俺だ。魔女はサムライ、マナは祈祷師を補助。サムライは俺を支援してくれ!」
「祈祷師に補助してもらわないの?」
「俺の元々の攻撃力じゃ、ギルの回復力の前では雀の涙程度のダメージしか与えられない。これが最後の予言なんだ...文字通り俺は、この命を燃やす!」
「手下相手に命燃やされちゃあ困るけどなぁ。」
隊列が整い、俺達聖炎騎士団と...神竜ギルとの戦いが始まった。
先手はギルが取り、攻撃はサムライを向けられたが、魔女の補助で無傷で石化しなかった。次にサムライ・ジード・アーチャー・祈祷師に順で攻撃して1巡目が終わった。
俺はこのまま隊列を変えずに2巡目に入ろうとした時...。
「何を手間取っているのだ?ギル!」
俺達の戦闘は、魔騎士ゼオンの介入により強制終了した。




