レダ
酒場に着くと、店の中に客はいなかった。王の演説を聞いて自分の為すべき事を見つけた人々に、酒場で飲んでいる暇など無かった。俺はマスターに話を聞き、彼女...レダの待つ席へと向かった。
「遅かったわね。秀哉。」
「ごめん。最後の災厄に向けて、やり残しを片付けてた。」
「そっか...。」
「怒っているのか?」
「ちょっとね。"話がしたいから、酒場で待っててくれ"って約束しといて、自分が時間を破るなんて...。」
「ごめん...。」
「あはは、ウソウソ!ホントはさっき来たばかりよ。...そういえばさっき、店にレイラが来てたわね?」
「レイラが教えてくれたんだ。まさかレイラが酒を飲みに来たとでも...?」
「あり得ないわね!」
冗談を交えながら、俺達はたわい無い話をした。そして、レダが真剣な表情になった。
「会いたかったわ。秀哉...。こんな台詞...一体何回言ったかしら?」
「正確ではないが、三十回くらいじゃないか?」
「たった!?あたしは百回くらい言ったかと思ったのに。」
「何十年かけても、出会った回数が少なかったからな。初めて会った時から数えると...」
「あ〜もういい!あたしやっぱそういう理屈っぽく喋る男って苦手だわ!...でもね。それでも秀哉が好きよ。」
「...ありがとう。」
俺はレダの気持ちが素直に嬉しかった。元の世界では女子から声をかけられる事も、ラブレターを貰うような事は一切無かった。この世界に来てレダが俺にぐいぐい押してくる事に最初は迷惑していたが、今はレダが俺にかけてくれる一言一句が嬉しかった。
「さてと。そろそろ聞かせてもらおうかしら?」
「何を?」
「惚けないでよ。あたしからの返事よ。どう?...2人きりで一緒に暮らさない?」
「...それは出来ない。」
「どうして?せっかく長い人生を得たんだし、のんびり楽しく生きましょうよ?」
「それは...レダの生き方だろう?俺にはやるべき事がある。"せっかく得られた長い人生"は、皆の為に...世界を守る為に使いたい。誰に何を言われても...この思いは変わらない!」
俺がレダの目を見て答えを告げると、彼女は悲しそうな目をした。
「...あたし、フラれた?」
「...ごめん。けど、レダが俺達と一緒に戦ってくれるのなら...」
「やめてよ。言ったでしょ?あたしは好きな男と二人でいるのが一番。それが無理なら一人が良い。
いつだって、自分の為に生きたいんだ!秀哉...あたしとあんたの生き方は違う。」
「レダ...」
「でも!昔言った事は撤回するよ。あたし達も人間さ。限りある命の奴等ともきっと交われる。同じ時間の中に...入れるよ。」
「あぁ。俺もそう信じたい。」
そう言うとレダはジョッキに入った酒を一口飲んだ。
「...良い人生を歩んでね。スカイ。あたしはあたしの道を行く!」
「レダ。身体には気をつけてな...。」
「うふ。何言ってんの?不老不死が風邪なんか引く訳無いじゃん!心配されなくても、あたしは生き残るよ。何があっても!
さぁ、もう行っちゃって!話は済んだから。」
「でも...。」
「女心が分かってないなぁ。自分を振った男を前に美味い酒が飲めるとでも思う?」
「...ごめん。じゃあ、行くよ...。」
俺が席を立ち、レダから離れようとしたが...俺の足は止まった。
「レダ...。」
「何?」
「もし...いや、俺達がこの世界を救えたら...。」
「...。」
「その時は乾杯しよう!レダとレイラと...俺の三人で!」
「うふ。面白そうね!その時はスカイに、一番高い酒を奢ってもらおうかしら?」
「あぁ。約束だ!」
俺とレダは共に笑顔で約束し、俺は騎士団本部に向かって走った。そしてレダは...一人酒場で酒を飲んでいた。
「...長い片思いだったなぁ。」




