聖炎騎士団 対 <黒の災い>
【ゲルダ 呪術師 レベル 09】
・体力430 ・攻撃力15 ・初回防御力10 ・素早さ16.0
特徴•••2・3・4巡目に攻撃力強化(×1.5)をする。
ゲルダは攻撃力強化を持っていた。つまり5巡目には攻撃力が50を超え、補助無しで耐えられる団員は俺しかいない。精霊はベルフェザードとの戦いまで温存したいが...今いる団員の中から、最適の編成を組んだ。
「前例は俺とジード、祈祷師。中列はマナ、アーチャー・魔女・魔術師。マナは祈祷師、魔女はジード、魔術師は俺を補助してくれ!」
「うん!」
「...。」
俺の指示にジードの声だけが無かった。そして気のせいか、ジードの顔が何かに恐怖しているように見えた。
「ジード...死にたく無いなら他の奴に変えるぞ?」
「誰が死にたく無ぇなんつったかよ!ぶっ殺すぞ!!」
俺に暴言を吐いたジードは、指示通りの編成に着いてくれた。
そして今、聖炎騎士団と<黒の災い>...ゲルダとの戦いが始まった。
先手はジードが取り、ゲルダがバリアーを張ったが、魔女の補助により剣闘士以上のダメージを与えた。次にゲルダが大鎌の様な杖を振り、青い炎が地を這って向かって来た。その矛先は祈祷師に向けられ、マナの補助により無傷で済んだ。続いてアーチャーと俺が攻撃したが、不調の魔術師の補助では大ダメージを与えられなかった。最後に祈祷師が石化攻撃をして1巡目が終わった。
俺は隊列を変えず、アーチャーと魔術師に指示を出した。そして2人は詠唱し、精霊エアリーを召喚した。石化したゲルダに大ダメージを与え、前列3人に急所必中の付与を与えてエアリーは消えた。
2巡目に入り、石化したゲルダにジード・アーチャー・俺の順で攻撃し、祈祷師の攻撃で石化が解けた。そしてゲルダは攻撃力強化を行うと、2巡目の戦闘は終わった。この時点で奴の体力は半分となり、このまま押し倒せば4巡目で倒す事は確実だった。
そして迎えた4巡目...ゲルダは最後の攻撃力強化を行うが、その前にジードの攻撃が奴にトドメを刺した。魔物と化したゲルダは断末魔を上げる事無く消滅していき、2人目の<破滅の死者>を倒した。
戦いが終わっても、信徒達は止まらなかった。俺達は可能な限りの信徒達を救い出した。彼らにとってそれが救いでなくとも、俺達は救った。
信徒達の事は団員達に任せ、俺はレダと話をした。
「ありがとう秀哉、助けられちゃったね。」
「レダ...ごめんな。」
「?」
「ゲルダの事さ...。同じ修行をした者同士、全く仲が悪かったって訳じゃ無いんだろう?」
「...まぁね。...でも仕方ないよ。時間が経ったんだ。昔と同じには行かないさ。哀しいけど、何もかも少し変わったんだよ。けど...今もゲルダはあたしの鏡。あたしがゲルダだったかもしれない。...そのことは忘れずに生きたいよ。」
一体2人の間にはどれくらいの時間が流れたのだろうか...。あのゲルダは錬金術を使って延命していたくらいだから、百や二百では済まない程の時が流れただろう...。すると俺達のもとにレイラが現れた。
「あなた...<大魔女>だったのですね。」
「そうだよ。驚いた?」
「レイラ...<大魔女>って?」
「魔女の特別階級よ。言葉に出来ない程の苦しい試練を耐えた人間だけが、精霊の血を飲む権利を得て大魔法と永遠の命、そして美を手に入れる。大昔、そんな制度が存在したの。」
「そう言えば昔...ミリィがそんな事言ってたっけな。まさかそれがレダだったとはな。」
「なぁに。<大魔女>なんて大した職じゃないさ。なってみれば分かる。分かるんだよ。ゲルダ...。」
「レダ...。」
大魔女になろうとしたゲルダの事を思い、レダの表情が曇った。そしてそんなレダの見て、レイラの表情も曇ってしまった。
団員達から信徒全員の確保したという報告を受け、俺も彼らの今後をどうするか考えた。するとレダが俺に声をかけた。
「それじゃあ、あたしはそろそろ行くとするか!」
「これからレダはどうするんだ?」
「まだ決めてない。あたしの事より、信徒達の事を心配しな。<黒の災い>が消えて、信徒達が拠り所を失っている。彼等を生かすも殺すも、これからの世の中次第さ!」
「あぁ。これからが大変だ。ありがとう、レダ。」
「それはこっちの台詞よ。これで貸し借りチャラにしてあげる!じゃあね!」
「レダ!!」
「?」
「...。」
「...。」
俺がレダと別れた後、ジードは俺達から離れた場所で一人立ち竦んでいた。そんなジードの元にマナが寄り添い、彼の本心を聞いた。
「...。」
「どうしたの?ジード?」
「俺とあのババアの違いは何だ?俺だって、所詮一人だって思ってきた。何も怖くねぇってな...人も殺した。俺が魔物にならなかった理由は何だ?それとも、俺だってこの先、いつか魔物になるのか?あのババアみたいに...」
"死神"と言われた男が初めて恐怖した。殺人を楽しみに生きて来た男と、世界を滅ぼそうとした女...規模は違えど、両者共に多くの命を奪って来た事に変わりはなかった。だがそれでも、マナはジードの手を握り否定した。
「ならないよ!ジード、あなたは魔物になんかならない。私が保証する。あなたは...誰かを助けられる人なんだ。大丈夫。安心して...。」
マナの言葉に、ジードの恐怖が和らいだ。それに気づいたマナは笑顔でジードに言った。
「これからも一緒に頑張ろうね。」
「...へっ。ざまあねぇな。」
こうして俺達聖炎騎士団と"死神"...そして<大魔女>による、<黒の災い>との戦いが幕を閉じた。
予言書の内容が変わった事を確認したが、それでもまだ災厄は続いている。最後の一文を変えるまで、気を抜く事は出来なかった。
{1099年 世界が死ぬ}




