二度目の雪山越え 前編
1099年15日目
<レヴァレス山脈 アグナ山頂付近>
俺達はあの時と同じ雪山超えを目指していた。先頭を歩くユミを俺が守り、騎士団全員でライトやレイラ、エレナとカムロンを護衛していた。あの時と違って急ぐ事は無かったものの、もたもたしてると吹雪に体力を奪われてしまう為、ゆっくりと進む事は出来なかった。俺は幼いユミは勿論、一般人のライトの事が心配だった。案の定彼は最後尾を歩き、俺達に追いつくのがやっとだった。
「さ、寒い...」
「お前、引き返すなら今だぞ?例え雪山を超えたって、"死神"に会えるとは限らないんだぞ?」
テトがライトに説得するが、彼は首を横に振った、
「例えジードに会えなくても...皆頑張っているじゃないか!?僕だって何か手伝いを...うわっ!?」
ライトが深い雪の中に埋もれてしまった。まだこの辺りは大丈夫だが、先へ進むと崖などがあり、落ちたら一巻の終わりだった。
「チ、チビスケ!助けてくれ!足がはまって動けないよ!」
「ったく。手伝うどころか。足引っ張ってるじゃないか。」
テトが呆れながら、ライトを救出した。彼の真実を明らかにするという探究心は認めるが、正直俺は諦めかけていた。
「ライトには悪いけど、ここにジードはいないかもな。どうせ潜伏するなら、森の中や廃墟といった場所にいるんじゃないかな?」
「...でも...潜伏以外に目的があるとしたら?...彼はきっと来ている筈。何日だって粘っている筈よ。」
俺の予測に対し、マナが意見を述べた。彼女がここまで言うのは、"気"を読む事が出来るからであろうか...。
「随分詳しいな?ジードのフルネームなんて、俺も聞いた事無かったのに...」
「...彼は有名人だからね。」
すると俺達の前に魔物が現れた。だが最後の予言に向けて戦力を整えた俺達の敵ではなかった。
戦闘は10分程度で済み、魔物からのダメージは受ける事無く済んだ。
「皆無事か?いきなり魔物と出くわすなんて、あの頃と同じじゃないか。」
俺はもしかしたら<破滅の死者>のゼオン達が待ち構えいるのではないかと不安に思った。だが俺は心に誓ったのだ。もう二度あの悲劇をくり返すまいと...
<レイス山入口>
雪山超えもあと少しで半分というくらいにまで進む事が出来た。俺の記憶が正しければ、もうすぐ砦が見えてもいいくらいだ。俺はエレナにカムロンとの話を尋ねた。
「エレナ、修道院で話してた"王都の薬"って?」
「えぇ。カムロンが言うには、黒死病の特効薬が発明されたと...」
「そんな話...酒場や他の村や街じゃ聞いた事無いぞ?」
するとカムロンが俺達の会話に割り込んだ。
「...貴重な情報は、限られた人間にしか伝わらないものですよ。」
確かに彼の言う通りだった。黒死病の特効薬があると知れば...人々は死に物狂いで奪い合いをするかもしれない。しかし一体誰が特効薬を発明出来たのだろうか...
俺が色々考え込んでいると、ユミが笑顔で側に寄った。
「団長さん!さっきはありがとう。魔物に食べられちゃうかと思った。やっぱり"うでがたつ"ね!修道院の人達だけで来てたら大変だったよ。ねぇ?エレナもそう思うでしょ?」
「え、えぇ...まぁ...」
エレナははっきりしない応え方をして、俺達から離れて行った。
「...変なの。なんで"ありがとう"って言わないのかな?」
「大人は色々事情があるのさ。」
「ふぅん。...大人って面倒臭いんだね。あたしは大人になんかなりたくないなぁ。」
「まぁそう言うなよ。成長するのは、悪い事ばかりじゃないぞ?」
「そうかなぁ?」
「...大きくなれば分かるさ。だからユミ、生きろよ?最後まで生き抜くんだ。俺が守ってみせる。」
「うん!わかった。やくそく!」
すると再び俺達の前に魔物が現れた。先頭を歩いていたエレナの腕を、レイラが掴み引っ張った。
「ここにいては危険です!さぁ、こちらへ!」
「あ、ありがとう...」
戦闘が終わると、目の前に砦が見えて来た。
「良かった。まだ残ってたんだ...皆!あそこで休憩しよう。」
俺は全員が着いて来ているかを確認してから、砦に入る事にした。それにしても...砦と良い周りの岩の形と良い、まるであの時から時間が止まったように思えた。最後に砦の中に入ると、中も全く変わってなかった。団員達がそれぞれに休んだ跡、レミリアがヤエを治療した跡、そして...俺がエイドに殴り飛ばされた跡も残っており、微かに血痕が見えた。俺も疲れた身体を休めようと腰を下ろすと、エレナが俺に話しかけて来た。
「スカイ...大丈夫ですか?」
「あ、あぁ...ちょっと、昔の事を思い出してな...」
「私は...亡くなったレミリア院長から、あなたの事を聞きました。院長はあなたを恨んでませんでしたが、幼子の命を落としたあなたを...私は許せませんでした。何故辛い過去がある修道院へ来たのですか?」
「確かに俺にとってあそこは、踏み入れてはならない聖域だった。けど...俺には役目がある。」
「役目?」
「この世界を守り、守り抜いた世界で生きる事だ。それが俺と共に戦い、命を落とした者達への償いになると信じている。」
するとカムロンが慌ててやって来た。
「大変です!ユミが...」
「どうした!?」
「用を足す為に裏へ回ったのですが...私が少し目を離した瞬間に、吹雪にさらわれてしまいました!」
「おぉ!何て事...」
カムロンの言葉にエレナは卒倒してしまいそうだった。
「とにかく、すぐに探しに行くぞ!まだ遠くは行ってない筈だ。」
「足を滑らしていなければ良いのですが...」
「あまり悪い方へ考えないでくれ。皆、行くぞ!」
俺は団員達に号令を出し、エレナと共にユミを探しに出た。




