手がかり
1087年120日目
マイロ王子の訃報は王都の住民だけでなく、近隣の村にまで悲しみを広げた。そしてこの報せが人から人へと伝わり続けると、大陸中に広まるのも時間の問題であった。王様は未だ立ち直れず、ソムリアと共に教会で精霊に祈りを捧げ続けていた。大臣等が王に代わって何とか治めているものの、いつまでもこのままで良い筈が無い。
そして親衛隊長ウィリアムの処分は、王都からの永久追放となった。俺としては終身刑か無期懲役にして欲しかったが、もう二度と奴の顔を見なくて済んだ事で納得した。
最後に脱走した"死神"ジードだ。今の親衛隊に奴を再び捕らえる事は不可能であり、王都の守りを固める事で精一杯だった。
人気の無い通りを一人で歩いていると、レイラが俺の前に現れた。
「身体の具合はどうですか、スカイ?」
「正直言って良くないな。この前の戦いの疲労がまだ抜けないし、団員は中々集まらないし、おまけに眠りが浅いんだ...。」
「随分疲れているのですね。それでも、団員達の前では毅然としているのですね。団員達を不安にさせない為に...。」
「そうだな。俺、何でこんな事言ってんだろ?やっぱ疲れているのかな?」
「時には気を緩める事も大切ですよ。ここには私とあなたしかいないから、安心して下さい。」
「ありがとう。何でかな?あんたの前だと、つい弱音を吐いちゃうな。」
「人間は弱い生き物です。一人で生きられないから、誰かと繋がらなくてはならないのです。あなたも決して一人ではないという事を忘れないで下さい。」
「そうだな。ところでレイラ、次の予言は確かアトレアだったよな?」
「えぇ。1092年に湾岸都市アトレアに災厄が訪れます。今度の災厄は破滅の予言に関わっています。頼みましたよ。スカイ。」
「あぁ。何か元気出たわ。俺、入団希望者が来てないか確かめてみる。」
俺は気持ちを切り替えて、再び前へと進み始めた。大災厄までの12年間を、何としてでも乗り越える為に...。
1088年35日目
騎士団の戦力強化は少しずつだが進歩していった。そして4年間しか戦えないが、ニンジャを加える事が出来た。現在の騎士団は俺の他は...騎士・アーチャー・僧侶・神官・魔術師・ニンジャ・魔女・サムライ1名ずつ。術者・冒険者2名ずつとなった。
この日もとある村に現れた魔物を倒す事が出来、村人達も一安心...というところだが、約3分の1くらいの村人達は表情が暗いままだった。
「どうしたんだ?魔物は倒したし、これでこの村は無事だろう?」
「いくら魔物を倒したって...俺達は長くは生きられないんだ。それならいっそ...魔物に殺された方が楽になれたのに...」
「...アバトの行人による教えか?」
「違う。"黒の破滅者"さ!」
村人の言葉に、俺はゼオン達と同じ<破滅の死者>を連想した。
「おい!"黒の破滅者"って何だ!?そいつは<破滅の死者>なのか!?」
「し、知らないよ!けどそいつが自分でそう言ったんだ。黒ずくめの格好で奴は笑いながら墓を掘り返していた。不気味な笑い声だったが、あれは女の声だった。あぁ...思い出しただけでもゾッとする!あいつは最早人間じゃない、悪魔そのものさ!」
頭を抱えてパニックを起こした村人を、俺は何とか落ち着かせた。せっかく掴んだ手がかりを、何としてでも手に入れたかったからだ。
「落ち着け!あんたはそいつの顔を見たのか?」
「いや...見てないけど、側にいた奴なら分かる。確かあいつは、王都の親衛隊長だった。」
「ウィリアムだと!?それで、奴等はその後どこへ向かったんだ?」
「か、勘弁してくれよ!俺は見ているだけで精一杯だったんだ!俺はもう、何も知らないんだ!!」
村人は俺の手を振り払い、村の方へと逃げてしまった。
「ま、待ってくれよ!」
「抑えなさい、スカイ!」
取り乱す俺の前に、レイラが現れた。彼女の真剣な瞳を見て、俺は冷静さを取り戻した。
「あの人は恐怖を味わいこそすれ、何もしていないのですよ。」
「あ、あぁ。そうだな。ごめん...つい取り乱しちゃって...」
俺はさっきの村人に深く謝罪して、この村を出発しようとした。すると村人が何かを思い出し、俺に話しかけてきた。
「スカイ団長。奴等がどこへ行ったかは知らないが、あの女の事ならもう一つある。奴は背を向けて逃げ出す俺にこう言ったんだ。"世界がどうなろうと、あたしだけは生き残ってやる!"って...笑ってたんだ!身の毛もよだつ不気味な声で!」
「...ありがとう。もういい、もういいから。」
俺は震えが止まらない村人を落ち着かせ、再び歩き出した。そして俺は以前レダと話した事を思い出した。
『「じゃあお前は、世界がどうなっても良いって言うのかよ!?」
「構わないよ!但し、あたしは死なない。愛する男と2人で生き残ってみせる。」』
俺は"黒い魔女"の正体がレダとは思いたくなかった。自由に生きる彼女が、世界を混乱させる動機が全く思い付かなかったからだ。だがもし...万が一俺がレダと戦う時が来た時、俺はこの手でレダを斬る事が出来るだろうか?
未だ謎が多い"黒い魔女"の事を考えながら、俺は団員達と共に次の目的地へと向かった。




