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森の大火 前編

1085年40日目

"死神"ジードとの面会を終えて数日が過ぎ、俺は次の予言の内容を確認していた。


{1087年 森の大火}


{森の中に小さな悪魔が現れる。}


{森は悪魔に魅せられて真紅の炎を燃やすだろう...}


この予言では森が全焼してしまい、多くの人々の命が失われると書いてある事が分かる。しかし、予言書にある"小さな悪魔"とは何なのか分からなかった。誘惑者の様な魔物の事を指しているのか、魔物とは違う何かを指している事を考えた。そして一つの可能性が思い浮かんだ。

「まさか...。」

この時浮かんだ可能性は、今のこの世界ならば決して有り得ない事であった。


1085年100日目

「では、よろしくお願いします。」

「は、はぁ...分かりました。」

俺は魔物が現れると思われる村へとやって来た。そして今、村長に相談し終えた所であった。

「聖炎騎士団様、この村に魔物が現れるのですか?」

「予言書の内容に当てはまるのはここです。ですが俺の心配は魔物は勿論、もう一つの事です。」

「我々は生まれた頃からこの村にいましたが、森の中では火を使うなと教えられて来ました。村の者がそんな事をするとは思えません。」

「それは俺も同じです。ですが考えられる可能性は全て取り除いておかないと、俺達は苦戦を強いられるかもしれないです。どうかよろしくお願いします。」

俺は村長や村の人々に深々と頭を下げ、協力を求めた。

村を出て魔物討伐の遠征に戻ると、団員達が俺に質問してきた。

「団長、やはり村長の言う通り...村人が森で火事を起こすとは考えられません。」

「俺だって考えたくないさ。けど...考えられる可能性は全て消しておきたいんだ。」

「魔物が森に火を放つのでは?」

「その対策として、村人達に森の警備を依頼した。幸いあの村には高齢も含めてアーチャーとヴァルキリーが8割いた。魔物を倒す事が出来なくても、森に火を付ける事を阻止する事は出来るだろう。」

「でも団長。今度の予言は、大災厄とは関係無いらしいじゃないですか?」

「あぁ、そうらしい。けど回避出来なければ、多くの人々の命が失われる。この世界は最早風前の灯火のようなものだ。人々の命が失われれば、大災厄を回避する力が集まらなくなる。俺達の力は、この世界に生きる人々の命で出来ているんだ。見過ごして良い災厄なんて無いんだ!」

少ししてから、俺が怒りを帯びた声で団員達を説得していた事に気付いた。俺は冷静さを取り戻し、深く頭を下げて団員達に理解を求めた。団員達も今すぐには飲み込めなくても、時間をかけて俺の意を汲んでいる事を了解してくれた。


1085年300回目

討伐を終えて王都に帰還すると、親衛隊の一人が俺に話しかけて来た。

「魔物討伐の遠征からの帰還、ご苦労様です!」

「あぁ、ありがとう。そっちもお手柄だったな。あの"死神"を捕まえるなんてな。」

「えっ?いや、その...」

隊員はジードを逮捕した事に照れているようには見えなかったが、やはり自分達でも信じられないようだった。

「あ、あのっ!次の災厄は、どこで起きるのでしょうか?」

「えっ?何でそんな事聞くんだ?」

「い、いやぁ...ちょっと、気になりまして...」

「エルフの里と呼ばれる村らしい。山に囲まれ、村が森の中にあって、予言書に該当する場所だからな。」

「そうですか。ありがとうございます。」

隊員は一礼すると、城の方へと向かっていった。後になって予言書の事を他の人に話して良かったか不安に思ってしまった。そしてこの不安が、まさか()()()()の原因になるとは思いもよらなかった...。


1087年1日目

予言の年となり、騎士団の戦力も何とか万全な状態となった。俺以外の団員としては...・冒険者・術者・サムライ・アーチャー・戦士1名ずつ、騎士・神官・僧侶が2名ずつとなった。今回は精霊の加護を受けた団員がいないが、魔物とは長期戦を覚悟して臨む事にした。

「団長、親衛隊が王都を発ったと門番から報告がありました。」

「親衛隊が?」

「はい。数名を王都に残したそうです。行き先はエルフの里だと...」

「親衛隊が魔物討伐に協力してくれるんですかね?」

「それならそれは有難いな。村人達を避難誘導してくれれば、俺達も心置き無く戦えるからな。」

俺達も準備を整えて、目的地であるエルフの里へと出発した。

1087年100日目

目的地までもう少しという所までたどり着いた俺達は、少し休憩を取る事にした。この時点で体調を崩している団員がいれば、親衛隊と共に村人達の避難誘導を頼むつもりだった。団員達から離れ、見晴らしの良い場所で村の位置を確認しようとすると、レイラとテトが俺の元に現れた。

「災厄が訪れる場所まで、もう少しですね。」

「あぁ。親衛隊が先に到着しているらしいんだが...」

「あぁ!?大変だ!!」

テトが何かに驚いた声を上げ、俺とレイラは声が聞こえた方向を向いた。

「レイラ様!あそこに火の手が上がってます!」

「そんな馬鹿な!?あの村は火の取り扱いには細心の注意を払っていた筈だぞ!?」

「とにかく急ぎましょう!このままでは取り返しのつかない事になってしまいます。」

俺は団員達に緊急事態を伝え、全速力で村へと向かった。

どうにか村へと到着したが、既に村は全焼寸前であった。村人は逃げる事に精一杯であったが、森にまで火の手が回っており、このままでは森と共に全てが燃えてしまいそうだった。すると俺の視界に親衛隊長のウィリアムがいた。

「ウィリアム!魔物はどこだ?これは魔物の仕業なのか?」

俺の声にウィリアムが振り返ると、彼は不気味な笑みを浮かべていた。

「ふはははは!魔物を倒すのは、この私...親衛隊長のウィリアムであるぞ!貴様等騎士団如きに、手柄を横取りされてたまるか!」

「どうしたウィリアム?しっかりしろ!?」

「ふはははは!燃えろ、燃えてしまえ!この森諸共、全てを焼き尽くせ!!」

俺は確信した。この火事はウィリアムが引き起こしたのだと、そして俺は絶望した。ただでさえ危機に瀕している世界で、己の欲望の為に()()()()を仕出かしたウィリアムに...。

「おいスカイ、しっかりしろ!」

テトの叱咤で俺は正気を取り戻した。

「あいつが手柄を上げる為に火を付けた事よりも、魔物を倒す事が先決だろ!?」

すると予言の魔物が村へと現れた。魔物は森の火を見て、凶暴化し始めた。

「スカイ大変です!魔物が森の火を見て、凶暴化しています。このままでは被害が大きくなってしまいます。」

「分かったレイラ、必ず魔物は倒す。俺達がやらなきゃ...やらなくちゃならないんだ!!」

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