表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
121/175

"死神"との面会

"死神"が捕らえられている牢屋は地下にあった。牢屋といえば不気味な雰囲気が漂っているものだが、奴が入れられている牢屋は一際違って思えた。囚人が外の人と面会する場合、扉にある小さな戸から相手の目だけが見えるようになっている。しかし今回はそれすら無い扉越しという条件で、"死神"との面会が許されたのである。

俺は息を整えて、常に冷静な態度で目的の情報を聞き出そうとした。ところが"死神"に対しての第一声は、ジャーナリストのライトに取られてしまった。

「初めまして。僕..."死神"と呼ばれている貴方にお会い出来て、大変光栄です!」

「何こんな時に告白してんだよ!」

ライトの軽率な行動に、テトがツッコミを入れた。すると扉から気味の悪い薄ら笑いが聴こえて来た。

「おいおい、今日は俺に漫才でも聞かせてくれるのか?」

"死神"の声は低く太かった。声だけで奴が俺より遥かに年上...約30代後半から40代と検討がついた。俺はテトにライトを下げさせ、会話に入った。

「"死神"のジード、俺は聖炎騎士団団長のスカイ=ウルメイア=フィールドだ。」

「あぁ...良く知ってるぜ。俺の次に血を好む男だろ?テメェの(ツラ)を拝めないのが残念だが、まだ子供(ガキ)だな?」

「子供である事は否定しない。俺はまだ未成年だからな。だがお前の次に血を好むという事は否定する!俺は死神でも吸血鬼でもないからな。」

「へっ、良く言うぜ。毎日魔物の血をその身にたっぷりと浴びてる癖によぉ。」

「与太話はここまでだ。」

俺はこれ以上奴のペースに乗せられないように、本題へと入った。

「黒死病の事は知ってるよな?」

「あぁ...今話題の流行病だろ?あれには俺もムカついているぜ。」

「お前の薬草の知識は、王都の医師でさえ知らない事が多いらしいな。黒死病の特効薬を作り出す事は出来無いか?必要な物は俺が揃えさせてやる。」

「薬草といっても...俺の専門は"毒薬"だ。人を治す薬は作れねぇよ。」

奴の言葉で微かな望みが消えてしまった。そして奴は失意の俺に更なる言葉を畳みかけて来た。

「さっき俺が黒死病にムカついているっつったけどよぉ。何でだか分かるか?」

「さぁな?」

「あれのせいで人間共が次々に死んでいきやがる。お陰で俺が殺す人間が少なくなってやがるんだからな。」

「殺人は自己満足の為にしていると?」

「その通りさ!俺の唯一の楽しみはそれしか()ぇからな!」

ジードの言葉に俺が抑え続けていた怒りが爆発し、奴のいる牢屋の扉を思いっきり叩いた。

「ふざけるな!!快楽を得る為に殺人を犯すなんて...それでもお前は人間か!?お前に流れる血の色は何色だ!!」

「何寝ぼけた事言ってやがる?俺は"死神"だぜ?命ある者の命を奪って何が悪い!」

「なら話を変えよう。お前...家族はいるか?」

「はぁ?いきなりなんだ?まさか情に訴えようってんじゃねぇだろうな?」

「別に...ただお前にも、愛する者や愛される者がいたのなら、こんなに歪む事は無かっただろうなと思っただけさ。」

「テメェ...俺を哀れむんじゃねぇ!所詮人間なんてモンは一人なんだよ。それはテメェが一番分かってんじゃねぇのか?不老不死のスカイさんよぉ?」

ジードの言葉に俺は反論出来無かった。無限の生を持つ俺には、常に孤独が付き纏っていた。

「もうテメェと話す事は()ぇ。さっさと失せな。」

「ちょ、ちょっと待って!?なら最後に聞かせてくれ!」

ジードが話を終えようとすると、ライトは慌てて俺の前に出て質問した。

「君はどうして親衛隊に捕まったんだい?今まで君は凡ゆる追手を撒いて来たじゃないか?とてもじゃないけど...王都の親衛隊が君を捕まえられるとは思えない。」

ライトの言う事に俺は同感だ。親衛隊の戦力は王都を防衛するのがやっとである。そして奴がその気であれば、親衛隊を皆殺しにすれば捕まる事は無かった筈だ。するといきなり、牢屋の扉を内側から蹴った音が響いた。

「うるせぇ!!テメェなんかに話す気は()ぇ!!」

「ひいっ!す、すみません!!」

「今度来やがったら...その時は殺すぞ?」

「そ、それでも構わないさ!僕は絶対...君の真実を明らかにしてみせる!」

ジードの恐喝にも屈しないライトの度胸に感服した事で、俺達は"死神"との面会を終えた。


騎士団本部に戻る前に、俺の足は王都の墓地へと向かっていた。例の"黒い魔女"が墓を荒らしているのなら、ここも奴の標的になりかねないからだ。すると墓地には思いがけない先客がいた。大きな帽子に黒い服を着た女性...レダであった。

「あら秀哉?久しぶりね。」

「レダ!?」

「ごめん、今ちょっと急いでいるんだ。また今度ね。」

いつもなら俺をからかう彼女が今回は違った。俺はレダの腕を掴み、逃がさないように引き止めた。

「待ってくれよ!今回はいつもと違うじゃないか?」

「あら嬉しい。そこまで私の事を思ってくれてたの?」

「あぁ...。」

「そう...。でもそんな怖い顔で言われると嬉しくないなぁ。」

「レダ、どこへ行く?」

「知りたい?」

「...」

俺はレダから手を離した。するとレダは身なりを整えて真顔で俺の顔を見た。

「なら、あんたの答えを聞かせてもらおうかな?まさか忘れた訳じゃないでしょ?」

「それは...」

「あらら、黙っちゃった。あたしの懐に飛び込む時は、身も心も預ける覚悟がなきゃダメだよ。それじゃあね!」

するとレダは颯爽と姿を眩ましてしまった。一人取り残された俺はレダが犯人ではないかと思ったが、レダが墓荒らしをする動機が全く見当付かなかった。

「レダ...お前は本当に、俺と同じ不老不死なだけなのか...それとも...」

墓地を後にして本部に戻るまで何度も考えたが、所詮ただの仮説で終わってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ