世界に真実を伝える者
1085年35日目
次の災厄まで残り2年となり、団員の中からも衰退期に入った者が出てしまった。残り2年で団員を強化するのは難しいが、この際即戦力になってくれれば衰退期に入っている者でも良いくらいだった。現時点で衰退期に入っていない団員を挙げると...騎士・神官・僧侶・サムライそして、冒険者と術者2名ずつだった。攻撃力が高いが体力が低いサムライと術者。何でも出来るが秀でた能力が無い冒険者。列回復が出来るが支援しか出来ない僧侶と補助しか出来ない神官。責めて支援と補助を両立出来る魔女か魔術師が欲しかった。
すると騎士団本部にテトが慌ててやって来た。
「おいスカイ、大変だ!」
「どうした!?魔物か?」
「違う。あいつが..."死神"が捕まったそうだ。」
テトの報せに俺は驚いた。あの大量殺人を犯した極悪人...通称"死神"のジードが捕まるとは信じられなかったからだ。
「捕まっているのなら、奴と話をする事が出来るな...」
「お前、何考えているんだ?」
「奴は毒薬を用いて大量殺人を犯している。薬も使い方によっては毒ともなるし、それは薬草も同じだろ?」
「まさか、あいつから黒死病の治療法を聞き出すのか?」
「レイラも見つけられていないんだ。こうなったら、死神の知恵を借りてでも、何とかしなきゃいけないだろ?」
「そりゃそうだけど...」
「俺が頭を下げる事で大陸中の感染者を治す方法が得られると思えば、こんなに安い事は無いだろ?」
「お前一人で済めば良いけどさ。」
俺とテトは"死神"が捕まっている牢屋へ向かった。すると一人の青年が俺に話しかけて来た。
「あの!あなたは聖炎騎士団団長の...スカイさんですよね?」
「えっ?まぁ、そうだけど...。」
「もしかして、これから"死神"が捕まっている牢屋へ向かおうとしてませんか?」
「そのつもりだけど...君は?」
「あぁすみません!僕はライト。世界に真実を伝える者さ!」
黄緑色の髪にカーキ色のコート、茶色のハンチング帽を被った青年だった。歳はおそらく俺と同じくらいの筈だ。世界に真実を伝えるなんて...まるでジャーナリストのようだと思った。
「それでライト、俺に何の用だい?」
「実は僕、今話題の"死神"について調べているんです。大量殺人を犯して来た男が牢屋にいるなんて...直接話を聞く事が出来るチャンスじゃないですか!?」
「そ、そうだな。」
彼の熱意に驚いたものの、"死神"を恐れずに調べようとするとは中々度胸のある奴だった。
「けど...話を聞こうにも、親衛隊が門前払いするんですよ。」
「それで俺と一緒なら"死神"と話が出来ると?」
「そうなんです。どうかお願いします!"世界に真実を伝える"...これが僕の信念なんです。」
魔物や疫病で生きる事に諦めている人々が多いというのに、彼の瞳にはまだ輝きが残っていた。
「おいスカイ!何油売ってんだ!?」
テトが俺に声をかけると、ライトはテトを見て驚いた。
「うわっ!?何だこれ?もしかして妖精!?」
「な、何だよお前?僕が見えるのか?」
「勿論さ。ハッキリ見えるぜ、チビスケ!」
「誰がチビスケだ!」
テトがライトと喧嘩しそうになる前に、俺は2人の間に入って話を止めた。
「とにかく。早く牢屋へ向かおう。それとライト...お前も付いて来い。」
「えっ?良いのかい!?」
「お前のその熱意じゃ..."死神"に話を聞く為に、同じ牢屋に入りそうで心配だからな。」
「なるほど...それもアリですかね?」
「「良い訳無いだろ!!」」
俺とテトが再び嵌り、俺達はライトを連れて牢屋へと向かった。
王都の留置所へ着いた俺達は必要な手続きを済ませていた。一般人のライトは騎士団の協力者という事にして同行が許可された。すると俺達の所に親衛隊長のウィリアムが現れた。
「これはこれは、スカイ団長ではないか?」
ウィリアムは"死神"を捕まえた事で有頂天になっていた。その証拠に彼の目は俺を見下していた。
「君達が魔物討伐に精を出している一方で、私は"死神"を捕まえてやったぞ!」
「それは凄いな。おめでとうウィリアム。」
「下手な世辞は止せ。心の底では私の功績を羨ましいと思っているのだろ?」
「俺はそんな事思っちゃいないさ。それより、ライトの同行を許可してくれてありがとう。」
「本来なら部外者の立ち入りを禁じいるのだが...特別に!この私が許可してやったのだ、有り難く思えよ。」
「あぁ...」
「では私は失礼する。牢屋の中にいるとはいえ気をつけろよ。相手はあの"死神"だからな...はっはっは!」
ウィリアムは高笑いをしながら去って行った。彼の態度には腹がたつが、"死神"を捕まえてくれたから、文句は言えなかった。
「大丈夫ですか、スカイさん?」
「別に気にしちゃいないさ。それより、お前こそ気をつけろよ。」
俺達は意を決して、"死神"のいる牢屋へと向かった。
今回から新登場の青年ライト。彼が今後主人公にどの様な影響を与えるのか、どうぞお楽しみにして下さい。
そして出来れば評価もして頂ければ幸いです。




