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時代の犠牲者

「君どうしたの?具合悪いのかい?」

「ううん。お父さんとお母さん...死んじゃったの。"伝染病"で...。」

蹲っていた子供は女の子だった。幼いながらも伝染病という言葉を知っていたのは凄いと言ってやりたいが、今の世の中を考えれば嫌でも知らされる言葉であろう。

「それで...君には頼れる大人はいないのかい?」

「うん。病気持ちの子はいらないって...。」

「何だって!?そんな筈あるか!俺と一緒に探そう。えっと...君の名前は?」

「マナ...マナだよ。」

薄紫色の髪に小麦色の肌を持った子...マナと一緒にアトレア中を駆け巡った。


「すまないが...幾ら聖炎騎士団の団長の頼みでも、マナを引き取る余裕はうちに無いよ。それに...マナが病気持ちだったら、巻き添えになっちまうよ。」

子持ちの主人は申し訳なさそうにマナの引き取りを断った。すると一人の女性が声を掛けてくれた。

「私と一緒にアバトに帰依するなら、引き取りましょう。私...望みを来世に託す事に決めましたの。」

「結構だ!あんたなんかに、マナを預けてたまるか!」

アバトに帰依する事はつまり、生きる希望を捨てる事と同意義だった。まだ幼いマナに、そんな事は絶対させたくなかった。すると街の子供がマナを指差して言った。

「団長さん。そいつの両親...墓を掘り返されたんだよ。ありゃ魔物の仕業かな?だったらマナの父ちゃん母ちゃんはきっと魔物だったんだよ。じゃあ、マナも魔物なんだ。わぁ!」

悪戯では済まないくらいの暴言をマナに言った子供は一目散に逃げていった。街中を歩き周ったが、誰もマナを引き取ってくれる大人はいなかった。街の人々から断られる毎に心が痛むが、幼いマナはもっと辛い筈だ。

「スカイ...この街じゃこの子は幸せにはなれない。」

テトが俺の前に現ると、マナが嬉しそうにはしゃいだ。

「わぁ!虫さんだ!」

「お前...僕が見えるのか?」

「うん!キラキラした羽だね!」

テトを"虫さん"と呼ぶマナを見て、あの子の面影が見えた。そして俺は一つの決心をした。

「テト...マナは俺が育てようと思う。」

「スカイ、気持ちは分かるが...魔物と戦うお前にこの子は危険だ。」

「だけど...」

「リリの事を思い出したのか?」

「あぁ。俺はもう...あんな思いはしたくない。リリもマナも...やりたい事が沢山あるのに、まだ数年しか生きていないのに死んでしまうなんて理不尽だろ!?」

テトに訴えていると、マナが何かを思い出したかのように話し掛けた。

「水上街...水上街に行きたい!」

「水上街...ウォルターに心当たりがあるのか?」

「う、うん!あそこなら生きていけそう。」

「どうするんだスカイ?」

「この子が言うんだ。少なくとも、この街よりはマシだろ。」


俺は団長命令で王都リゼルから水上街ウォルターへ進路変更した。黒死病の猛威のせいか、不穏な雰囲気が漂うウォルターが静かになっていた。

「ありがとうスカイ団長。虫さんも元気でね!」

俺達に笑顔で手を振り、街の中へ消えてしまいそうになった時、俺はマナを呼び止めた。

「マナ!!」

「?」

「俺の名前は天野秀哉。異世界から来たんだ。ただそのことだけ言いたかったんだ...。元気でな。」

「うん!じゃあね、シュウヤさん。」

マナが街の中へ消えてしまった時、テトが俺に話しかけて来た。

「お前...何であんな事言ったんだ?」

「何でだろな...マナに特別な思い出を作ってやりたかったからかな?」

「お前って...」

「あぁ...」

「「偶にアホだよな。」」

俺とテトの言葉が見事に嵌り、俺は王都へと帰還した。

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