"死神"と"黒い魔女"
1080年15日目
とうとう大災厄の年まで20年を切った。魔物討伐に東奔西走するが、その度に黒死病に怯える人々や、来世に望みを託す人々を目にする。そしてこの日、ウォルターで情報収集をしていると、気になる話を耳にする事が出来た。
「"死神"?」
「そう!"死神"のジード。あいつはとんでもない極悪人だよ!」
「死神なんて二つ名が付くくらいだから、やはり相当危険な奴なんだな...。」
「あんた知ってるかい?東にある村で行われた集会で、村人達が突然死した事件を!」
「あぁ。けどあれは死因は心臓に持病持った人の発作だと聞いたが...。」
「事件が起きてから数日後に、集会所に毒薬が入った袋が見つかったんだって!時間が経った事で発見しても命に別状は無かったけど...許せないよ。"死神"め!」
黒死病とアバトの行人に続いて、今度は"死神"ジードの出現。俺はもうどうすれば良いのか分からなくなって来たが、今の俺に出来る事は災厄の年までに騎士団を強化する事と、魔物に苦しむ人々を救うだけだった。
1080年200日目
魔物が現れた村に到着し、俺達は苦戦を強いられながらも倒す事が出来た。しかし村には人の気配が感じられなかった。俺は他の団員達に村から離れるよう指示を出し、一人で村の中へと向かった。
村に入るとそこには...地獄があった。村人達は生き絶え、足の踏み場も無いくらいになっていた。俺は思わず嘔吐してしまいそうになったが、グッと堪えて村の中を散策した。すると俺の視界に、ふらふらと歩く村人の姿を発見した。だがその村人は身体中に黒い斑点を持ち、今にも死んでしまいそうだった。
「あっ、あぁ...。」
「おい!しっかりしろ!死ぬな!!」
俺は必死に呼びかけると、村人は朦朧とする意識の中で、俺に話しかけてきた。
「ま...魔女が、魔女が村の墓を...。」
「魔女だって!?そいつの特徴を教えてくれ!」
「く...黒い服と、帽子を被り...」
「黒い服と帽子だって!?他には?他には無いのか!?」
「...。」
沈黙する村人を何度も揺らすが、もう言葉を発せなくなっていた。するとレイラとテトが俺の元にやって来た。
「スカイ駄目だ。こいつはもう死んでいる。そしてこの街も...。」
「レイラ、テト..."黒い魔女"は、黒い服と帽子を被っていたそうだ。もしかしたら、"黒い魔女"は...!」
「落ち着きなさいスカイ。憶測で判断してはなりません。」
「あぁ、ごめん。」
俺は亡くなった村人達をちゃんと埋葬してあげた。"黒い魔女"によって掘り返された墓も、綺麗に整えてあげた。騎士団全員で黙祷を捧げると、団員達は泣きながら俺に訴えた。
「団長...俺達は、何の為に戦っているんですか!?」
「世界を守る為だ。それが俺達の使命だ。」
「幾ら魔物から人々を救っても...黒死病に命を奪われたら、俺達のやってる事は無意味じゃないですか!?」
「無意味なんかじゃない!」
俺の怒りがこもった一声に、団員達は驚いた。
「確かに疫病で命を落とす人々は救えないが、魔物に命を奪われる人々は救う事が出来る。俺達聖炎騎士団は、数え切れない程の命の上に成り立っているんだ!俺達のやってる事が無意味だなんて...そんな事、二度と言うな!!」
普段怒りを晒す事が無い俺は、涙目になって団員達に怒鳴った。そして俺は涙を拭い、団員達に指示を出した。そう俺達...いや俺は、数多くの仲間達のお陰でここにいる。ゴードン・ニック・ガルド・ケーラ・フィリン・リーフ・オルボ・ミリィ・ライ・エイド・ヤエ・ツルギ...他にも名前を上げればきりが無いくらいである程の団員達のお陰でここまで来れたんだ。決して無意味なんかじゃない...無意味だなんて言わせてたまるか!
1081年300日目
予言の年が間近に迫って来たので、俺は魔物が現れる湾岸都市アトレアへの遠征準備を進めた。現在の団員は俺とピックの他、冒険者・僧侶・神官・剣闘士・サムライ・騎士・魔術師・祈祷師、そしてヴァルキリーと戦士が2名ずつであった。戦士は俺以外騎士団に加えるつもりは無かったが、衰退期を迎えた団員を手元に置くよりはマシだった。だが戦士の一人が魔術師と強い絆を持った事で、精霊インフェルノの力を借りる事が出来ていた。
【インフェルノ•••大ダメージを与え、相手を一度だけ行動不能にする。】
これから先は強敵とも言える魔物との戦いが避けられない為、団員が衰退期に入っても精霊の力は必要であった。
{1082年 呪われる湾岸都市}




