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閑話 フェルメアの2人

1078年100日目

俺はアバトの行人の影響がどこまで広がっているかを確かめるべく、フェルメアへと向かった。すると正門前に立札が立ち、"アバトの行人による活動を固く禁ずる"と書いてあった。

「すみません。あの立札は何でしょうか?」

俺は門番に立札の事を聞いた。

「あれはここ最近、アバトの行人が市民を勧誘しようとしているのです。勿論市長は市民の人々に、彼等の言葉に耳を傾けてはいけないと言っているのですが...。」

「人の口に戸は閉められないと。」

「そうなんです。アリアさんも心労が絶えなくて。」

「アリアは市長じゃないのか?」

「アリアさんは任期を終えました。今は市長を支える事もしております。」


街に入るとあちこちにアバトの行人による言葉に惑わされてはならない事を訴える張り紙が貼られていた。けど市民は黒死病の脅威に怯え、明日は我が身ではないかと心配していた。

アリアが住む家に訪問すると、ツルギが迎えてくれた。騎士団を引退したせいか、随分と老けて見えた。

「これはスカイ殿、今日はどのようなご用件で?」

「アリアはいるかな?ちょっと聞きたい事があって...」

「アバトの行人の事でござるか?」

「あぁ。マズイかな?」

「心配いりませんよ。スカイ団長。」

ツルギの後ろから、車椅子に座った女性が現れた。彼女があのアリアとは思えないくらい歳をとっていた。

「やあアリア。身体の具合はどうだ?」

「見ての通りよ。貴方は何も変わってないわね。」

家の中に入り、俺は王都で起きた事を2人に話した。するとアリアは深いため息をついて、話し始めた。

「フェルメアでも、アバトの行人達が市民に悪影響を及ぼしているのは間違いないわ。昔あなたが言っていた病気が、まさかこんな事を引き起こす程になるなんて...。」

「気にするなよ。あの頃は俺も魔物討伐に追われて、気にも留めなかったくらいだからさ。」

「スカイ殿、黒死病の猛威もやはり...破滅の予言と関係あるのでござろうか?」

「そこまではまだレイラにも分からない。けど調べておくと言ってくれたよ。俺達には予言の魔物を倒す事に専念するようにってさ。」

「レイラ...あの女神ならば、この病を治す術を見つけられるでござろうか?」

「どうだろう?とにかく、今後アバトの行人達の影響がもっと拡大するかもしれない。その事を市長に進言しておいてくれないかアリア。」

「えぇ。市長を引退しても、私は最期までこの街を守るわ!」


アリアとの対談を終えると、ツルギは俺達と正門まで付き合ってくれた。アリアも大分高齢になったが、それはツルギも同じであった。

「ツルギは...アリアと結婚しないのか?」

「...。」

「俺がいた世界じゃ、高齢の男女が結婚する事は珍しくないぞ。」

「...。」

「ツルギだって気づいているんだろ?アリアがお前の事を...。」

俺が台詞を言い切る前に、ツルギが俺に掌を向けた。

「分かっておるでござる。しかし、拙者は生涯かけてアリア殿をお守りすると誓った。この誓いだけは、決して譲れないのでござる。」

「市長を終えたアリアに、護衛なんて要るのか?」

「アバトの行人に影響された市民により、アリア殿は何度か命の危機に晒された。故にこの命尽きるその時まで、拙者はアリア殿をお守りするでござるよ。」

「そうか...ならもう俺は何も言わないよ。元気でな、ツルギ。」

「スカイ殿達も、どうか御武運を!」

これがアリアとツルギとの、最後の別れになるだろうと俺は確信した。そして俺達は再び進み出す。黒死病とアバトの行人達が世界を覆うこの世界を守る為に...。

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