王様との謁見、再び
大災厄まであと20年、主人公の戦いもあと少しという所まで来ました。
1078年60日目
サムライのツルギが退団し、聖騎士のリリスも限界が来たという事で退団した。術者のピックはまだ5年間戦えるが、一刻も早い戦力強化に悩まされていた。
すると騎士団本部にレイラがやって来た。普段は街外れの森にいる筈の彼女が来る事はこれが初めてであった。
「随分と静かになりましたね。」
「あぁ。でももう慣れたよ。それより今日はどうしたんだ?予言の事なら態々来てくれなくても良かったのに...。」
「えぇ、実は...。」
レイラが話し始める前に、テトが俺達の前に現れた。
「レイラ様!やはり王都でも猛威をふるっているそうです。」
「やはりそうですか...。」
「?何の話だ?」
「<黒死病>というのを聞いた事がありませんか?昔からある病らしいのですが、ここ数年で急激に流行り出したのです。」
「それってもしかして、リーフがかかった病気の事か!?」
<黒死病>...高熱から始まり、次第に身体中に黒い斑点が浮き出て言葉を話せなくなり、最後は死に至らしめる病だ。今まで予言の魔物にばかり気をとられていたが、ここに来て謎の流行り病が俺の前に立ち塞がった。
「レイラ、この病も破滅の予言と関係あるのか?」
「まだ分かりません。ですが、人間達が疲弊している気がするのです。」
「最後の予言まで、あと20年だっていうのに...。」
今までの経験からすれば、俺にとって20年は大した時間ではなかった筈なのに、今はとても長い期間に思えた。山積みの課題に頭を抱えると、レイラは俺の手に触れた。
「スカイ。あなたまで失望してはいけないわ。希望は失わず、私達のやれる事をやって行きましょう!」
「そうだぞスカイ!先ずは王様の所に行ったらどうだ。災厄の報告がまだだったろ?」
「ありがとうレイラ、テト。それじゃあ行って来るよ。」
俺は2人からの励ましを受け、両手で顔を叩いて気持ちを引き締めた。
謁見室に入ると、王様が玉座に座っていた。先代の王と違って中々の美男に思えた。
「儂が王都リゼルを統べる王、キーリアス13世である。お主達の活躍は亡き父上から伺っておるぞ。」
「聖炎騎士団団長、スカイ=ウルメイア=フィールドです。先代の王様の葬儀に出席出来ず、申し訳ございません。」
「何を言う。この王都を...いや、世界を救うべく戦う者達を責める事はせぬ。此度の災厄を払った褒美を与えよう。」
「いえ、褒美は要りません。」
「遠慮はいらんぞ。」
「本当に要りません!」
王様はまるで試しているかのような顔を俺に向けていた。すると謁見室に装備が良い騎士が入って来た。
「失礼します。王都親衛隊隊長ウィリアム、ただ今帰還致しました!」
「おぉ、ウィリアムか。聞いてくれ、やはりスカイ団長は褒美を要らぬそうだ。」
「はい。先代の王様の言う通りでございます。」
王様は俺が先代の言っていた通りの人物であることをに、とても興奮していた。そしてウィリアムが加わった事で王様は姿勢を整えて話し始めた。
「スカイ団長。お主らが魔物討伐に明け暮れる中、謎の疫病が遂に王都にまで流行り始めてしまった。そして魔物だけでなく、近頃は野盗が貪るようになってしまったのだ。」
疫病の次は野盗か...と心の中でボヤいたが、予期せぬ事態ではなかった。過去に誘惑者という魔物が人間達を操って村を荒らしていた事を思い出した。そして魔物に乗じて野盗が貪るとは、やはり人間達が疲弊していっている証拠なのだと思った。
「儂の頼みはお主達聖炎騎士団なのだ。どうか王都を...この世界を救っておくれ。」
するとウィリアムが俺の前に出て、王様に進言した。
「お言葉ですが王様!我々親衛隊も野盗の取り締まりや王都の防衛に、全力を尽くしております。」
「おぉそうだったな。スカイ団長、これからも頼んだぞ。」
「えぇっと...親衛隊と共に、最善を尽くします。」
親衛隊ではなく騎士団に期待を寄せる王様に少し困惑した。すると謁見室に一人の子供が王様の側に近づいた。服装から王様の子供、王子である事が分かった。
「お父様。僕お外に出たいよ!お城の中はもう飽きた。」
「マイロよ、それは出来ないんだ。外は危険が一杯だから...それよりほら、お前もスカイ団長にご挨拶しなさい!」
マイロ王子の目が俺と合った時、王子は少しお辞儀をしてその場を去った。
「これマイロ!ちゃんと挨拶せぬか!」
「良いですよ王様。まだ人見知りなんですね。」
「すまんな。この次はちゃんとするよう躾けておく。では儂は失礼する。」
謁見室を後にし、俺とウィリアムは暫く城内を歩いた。彼はルートスと違って気軽に話しかけて来なかったが、親衛隊として王様の期待に応えようと努力していた。しかしその努力は中々あの王様には伝わらないようだった。城に出るまでの間特に会話は無く、俺はすぐに本部に戻ろうとした。
「ではスカイ団長、お気をつけて。」
「じゃあな、ウィリアム。」
城の扉が閉まるほんの僅かな隙間から、ウィリアムの強い視線を感じた。あの眼が何を言っていたのかは、この時の俺には知る余地もなかった。




