聖炎騎士団、ダンジョンに挑む 後編
次の災厄に現れるベルフェザードと破滅の死者との戦いに向けて、祈祷師と同じ石化攻撃を可能に出来るアイテム"石蛇の晶石"を求めてダンジョンという名の洞窟へと入った。
3体の魔物が潜んでおり、通常の倍疲弊する洞窟での戦闘は過酷であった。現在万全に戦える団員は、俺とツルギ、リリスの他は魔術師・サムライ・魔女・魔騎士・神官2名であった。アーチャーと僧侶による精霊の力はもう使えない。俺達はこのメンバーで強敵モルガロスとの戦いに臨まなければならない。
「モルガロスは高い攻撃力と、それによる列攻撃、そして石化攻撃をも持つ難敵...。スカイ殿、どうなされる?」
「あれの攻撃を補助無しで耐えられるのは、俺とツルギ、リリス、魔騎士しかいない。サムライや魔女等の体力が低い者には補助が必須だ。そして自回復が出来ない者を回復させる為に、他回復が出来る者を加えないとだし...。」
俺は暫く周りの声が聞こえないくらい独り言を言いながら考えた。その様子を見ていた団員達は若干引いていた。
「よし!前列はツルギ、サムライ、神官。中列は魔女、神官。後列はリリス、魔騎士で行く。」
「スカイ殿がいないが?」
「俺は味方の補助や回復が出来ないし、攻撃力はサムライの方が高い。中列の2人は補助があれば戦死する事は無い。そしてリリスと魔騎士は石化攻撃を受けても、戦死する恐れは無い。」
「初めてじゃないのか?スカイが戦闘に出ないなんて...。」
「そうでもないさ。今回のように、皆のお荷物になりそうな時は戦闘に出ていない。いくら体力があったって、俺は戦士だからな...。」
「スカイ殿、時には己を労る事も必要でござるぞ。」
「ありがとうツルギ。」
モルガロスとの戦闘は既に経験済みであり、ツルギがダメージを受け続けたが神官の回復で問題は無かった。不安だった点はリリスと魔騎士の回復であった。魔騎士は聖騎士に比べて回復力が少し弱い為、リリスのダメージを完全に回復する事が出来なかった。戦闘は1時間程かかり、殆どの団員が不調目前になるくらいの疲労を負った。
「ツルギ、リリス、大丈夫...な訳無いよな?」
「すまぬスカイ殿...拙者らはこれ以上は戦えぬ...。」
「私達は入り口に戻る...あとは晶石を探すだけだな...。」
「あぁ。あとは俺と動ける団員達で十分だ。」
洞窟の奥へ到達すると色とりどりの晶石が目に入った。目的の晶石は中に蛇が入っているように見える赤い物だと言う。すると団員の一人がそれを見つけた声を上げた。
「団長!見つけました!」
「おお!これが...これか?」
大きさは手乗りサイズで他にそれらしき物は見当たらなかった。あれだけの戦いを経てこれっぽっちかと少し残念だった。
「こんな大きさじゃあ、せいぜい十回の戦闘しか使えないなぁ。」
「それでも無いよりマシですよ!」
「そうだな...目的の晶石も手に入ったし、早く王都に戻るか。」
洞窟から出ると不調になっていた団員は回復していた。あんな洞窟の中で激しく戦いをすれば、体調を崩してもおかしくなかったからだ。
「スカイ、今回はいつも以上に疲労を負う洞窟での戦いだったが...場所によっては奥へ進む毎に歳をとる空間になっているものもある。その時は編成に十分気をつけろよ。」
「ありがとうリリス。皆のおかげで目的物も手に入ったし、王都へ戻るぞ。」
1073年180日目
王都から戻った俺は、早速手に入れた晶石を誰に持たせるかを考えていた。アイテムには当然それに適した職業の者しか使えない。例えばアーチャーに"白銀の矢"を持たせれば、間接攻撃力が上昇する。だが戦士に回復力が上がる"女神の聖杯"を持たせても、猫に小判だ。そして今回手に入れた"石蛇の晶石"は、魔女・魔術師・術者しか使えないアイテムだった。
魔女か術者に持たせれば、魔物より早く先手を取って石化出来る上に魔物の行動を封じる事が出来る。魔女は予言の年まで戦えるが、余裕があるピックに持たせるのも悪くない。
今回は体力が取り柄の俺でも流石に疲れが出るくらいの遠征だった。俺は明日やるべき事を簡単にメモして眠りに就いた。そして完全に寝る前にふとこんな事を考えてしまった。もし俺が倒れたら、誰が騎士団の指揮を執るのだろうかと...。




