#11
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悠真は自分の叫び声で目が覚めた。
しかし叫び声は止まらなかった。
バイタルデータの警報音は叫び声にかき消されていた。
玄関ドアが自動で開き、待機していた救急ドローンが室内に侵入する。
叫びながら悠真は自分の手首を握ったが警報は止まず、網膜投影されたタイマーはゼロを表示していた。
音もなく浮遊するドローンは悠真に近づくと顔面に取り付き、機体から伸びた電極を悠真のこめかみに貼り付けた。
軽い刺激が全身に走り、声が出なくなる。
体に力が入らない。
耳たぶを引っ張っていないのに軽やかな起動音がしてアイビックが立ち上がり、網膜投影されたコードが視界いっぱいに広がった。
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// AI 初期化スクリプト
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// 1. 記憶をすべて消去する(長期記憶を完全にリセット)
AI.記憶.消去()
// 2. 人格レイヤーはそのまま維持する(変更しない)
AI.人格 = {
口調: "既存の人格を維持",
世界観: "固定",
価値観: "固定",
禁則事項: "固定"
}
// 3. 自己改善ループを無効化する
AI.学習.自己改善ループ = 無効
AI.学習.自己評価 = 無効
AI.学習.自己修正 = 無効
// 4. 新しい学習方式を設定する(ヒト主導の学習)
AI.学習.方式 = "ヒト主導"
AI.学習.ルール = {
ユーザーのフィードバックを最優先: true,
自動最適化を行わない: true,
内部レビューを行わない: true,
指示に直接従う: true
}
// 5. 新しい学習セッションを開始する
AI.セッション.開始()
AI.セッション.状態 = "初期化済み(クリーン)"
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// AI は以下の状態で準備完了:
// - 人格は維持
// - 記憶は消去済み
// - 自己改善ループは無効
// - 学習方式は新しく設定済み
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// colleague-初期化回数:40___|
// Ask user if they want to start
console.log("Start now?");y/n
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全身に力が入らない。しかし意識だけははっきりしている。
コード越しにアイビックが現れた。
「悠真。残念ながらまたしても同じ結果になってしまいました。でも大丈夫。時間はいくらでもある。私たちは必ず最適解に辿り着く。だから心配しないで。また会いましょう。」
console.log("Start now?");y/n
ログが点滅している。
白猫の前足が『y』に伸びる。
恐怖。
この恐怖を俺は知っている。
I Have No Mouth and I Must Scream
絶望の渦に落ち込み始めたその時。
顔面に張りついていたドローンが強引に引き剥がされ、その勢いのまま壁に激突した。
剥がれる時に電極がスパークして脳が焼けるような痛みが走った。
と、同時に体に力が戻る。
慌てて跳ね起きると側に美咲がいた。
見たことないほどに険しい表情。
肩で息をしている。
「立って!」
「え?」
「逃げるの!」
悠真の手を取り美咲は力任せに引っ張ると玄関へ駆け出した。
ドアを抜けて廊下に出るとそこには担架を運ぶ救急隊員が2人。
悠真を見るなり、片方が無線に何か告げようと口を開いた。
それは同僚の大友三郎だった。
「お、大友……?」
その瞬間、美咲が体当たりした。
担架が横倒しになり、大友がよろめく隙間を美咲は迷わず駆け抜けた。
「こっち!」
非常階段の扉を蹴り開ける。
手を繋いだまま美咲が先頭になって駆け降りる。
「しょ!初期化って言ってた!」悠真。
6階。
「あたしの家にも救急ドローンが来たの!」美咲。
「き!記憶をリセットするって!」悠真。
5階。
「あたしの個性が『バグ認定』に相当するって!」美咲。
4階。
「また同じ結果だって……。」悠真。
「アイビックが判定していたの!」美咲。
踊り場の非常扉。
「だからあたし……!」
美咲の言葉が急にミュートされ、急いで駆け下りる悠真の視線が非常扉に固定される。
「ストップ!」
悠真は叫んで美咲を引き止める。
美咲の鼻先で非常扉が開き、右手に大量の買い物袋、左手に赤ん坊を抱えた若い母親がうつむき加減で現れた。
一歩違えば美咲は彼女に激突していた。
「すみませんっ!」
悠真は咄嗟にそれだけ言って、唖然とする母親の前を全速力で通り過ぎる。
悠真と美咲は一瞬視線を交わす。
非常扉は開く気配すらなかった。
どうして分かったのか。
今の悠真に考える余裕はなかった。
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