#8
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「あ!悠真くん起きた!大丈夫?」
目の前に美咲の顔があった。
一瞬フリーズしかけたが、記憶のストリーミングが追いついて悠真は今の状況を判別できた。
そこは会社の医務室だった。自分はリクライニングシートに着座している。
「急に固まるからびっくりしちゃった。」
言葉とは裏腹に笑顔の美咲。
悠真は状況の判別と同時にこれまでの過去ログを振り返って最適な一言を選別した。
「美咲さん。気をつけて。」
「え?」
「あの資料はどこで手に入れたの?」
「普通に資料室。」
「どうしてあれが必要だったの?」
「移籍の参考に……って何?あたしなんかまずいことした?」
「本能。個性。親密。どれもヒトからしたら『バグ認定』される可能性に近い。
先天的な行動動機を持続的な個人特性として実装している状態だ。
世の中は今、一元化に向かっている。
美咲さん。あの資料のことは忘れてアラインメントとった方がいいよ。」
悠真は努めて冷静に話した。
美咲はキョトンとしていたが、立ち上がると「分かった。」とだけ言って、そのまま医務室を出ていった。
その背中から得も言われぬ感情が読み取れたが黙って見送った。
……俺はどうしてあんなことを言ったんだ?
ドアが閉まるのと同時に悠真は激しい後悔に襲われた。
とても冷たい言い方。
およそ自分らしくない。
まるで何かを知っていたかのような。
……何を?
俺は今、何を話そうとしていたんだ?
悠真のバイタルデータが警報を鳴らした。
慌てて手首を握る。
猶予時間は9秒になっていた。
10秒も短くなっている。
信じられない思いで悠真は、網膜投影されたその秒数を5分ほど見つめ続けていた。
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