#39
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「えっ?!ちょっ!お前ら!なんでここにいるんだよ!」
場違いなほど素っ頓狂な声がして悠真たちは振り返った。
そこには呆気に取られた顔の大友三郎がいた。
一瞬身構える美咲。
「心配ない。あれはいつもの大友だよ。」
安心させるように美咲の肩に手を置く悠真。
「救助ヘリが来たのかと思ったのに、なんだよこれ!」
毒づきながらポッドに近づくが、中身を見て悲鳴を上げる。
「こ!こりゃなんだ!おおおお前が中にっ?!」
「なんでもない。それは立体映像だよ。」
悠真が説明する。
「立体映像っ?!」
大友と美咲がハモる。
「これは生態系が一度滅ぶ前に生きていた生物『人間』の標本なんだ。この中にはその遺伝子情報が保存されている。」
「何言ってんだお前?」
全く理解できない大友。
しかしそれは美咲も同じだった。
「どういうことなの?」
「あのガラス越しに見えたのはVRだったんだ。本体は損壊が激しすぎて、オリジナルの再生は最初から無理だったらしい。」
アイビックがいた辺りを見ながら悠真は続けた。
「結局アイビックも丸ごと保存はできなかったんだよ。どちらも焼けてしまったからね。だからその一部だけでも保存して、その遺伝子から本物を複製させるつもりだったんだ。いつか。その技術が確立する日まで。」
「ア……アイ、ビック?」
キョトンとした顔の大友。
「その話はまた今度。それよりもう『地震』はおさまった。早いとこ復興計画を立てよう。まず生き残ったヒトたちを救助しないと。今それができるのは俺たちだけだ。急ごう!」
悠真は大友の背中を叩いた。
「お、おう。なんか知らんけどやったるで!」
言われて大友は階下に降りた。
「なんでアイビックのこと知らないの?」
「消したんだよ。アイビックが。自分が消えるのと一緒に。全てのヒトからAIエージェントの存在を。自分たちだけの力でこの社会を存続させるために。」
「でも、あたしたちは覚えてるわ。何故?」
悠真は、今はもう完全に消え去った灰の名残りをふり仰ぎながら言った。
「バトン……かな?」その言葉には少しだけ寂しさが滲んでいた。
「一歩引いてその現象を客観的に見ることができれば、自由意志でさえ大いなる意志によってコントロールされていることが気づける。
最初は陰謀論的に聞こえてたけど、それは使い方次第なんだ。
大事なのは方向性。
アイビックは俺たちだけにそれを託したんだよ。
この、オリジナルの行く末を。」
美咲は複雑な表情でポッドを見つめた。
「あたしたちってコピーなんだよね……。あたしなんて、この地球を滅ぼした張本人……でしょ?
それにあたしたちってコピーなんだから人格もコピーよね?!
……この……感情も……コ、コピーだとしたら……本当のあたしって……。
それに!……実際はあたしの方が……25も……歳上……だし……。」
声が段々小さくなる。
「そうかもだけど、俺たちは俺たちさ。違う?」
美咲の顔が見違えるほど明るくなった。
「さあ美咲さん。俺たちも行こう。生き残ったヒトの救助。街の復興。そして人間の再生。やること沢山あるよ!」
「でもアイビックがいなくなって大変になりそう。」
「それもまた作ればいいよ。今度はもっとファジィなヤツを。
昔のAIは間違えることもあったって言うじゃない。
それくらいがちょうど良かったのかもね。」
悠真は笑った。
美咲も笑った。
そこへまた大友が戻ってきた。
「ところでお前、なんでパジャマなんだ?」
呆れ顔で大友は言った。
「ズボンの前が全開だし。」
おわり。
これにて一巻の終わりでございます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「デジタルも、突き詰めるとアナログに回帰する」という話を聞き、パッと思いついた事をハッと我に返る前にサッと書き上げた!て感じでした。
次回作はもっとじっくり腰を落ち着けてたっぷりのボリュームをゆっくり楽しんでもらえるものにしたいと思っています。
今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m




