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#38

挿絵(By みてみん)

********************************************


「悠真くん!悠真くんてばっ!」


頬を叩かれて悠真は目が覚めた。


見ると美咲が馬乗りになって自分を叩いている。


「みっ!ちょっ!やめっ!」慌てて押しのける悠真。


「死んだかと思ったじゃないっ!」


「なんともないよっ!」


言ってから辺りを見回す。


そこは日本製電株式会社の屋上ヘリポートだった。


ポッドは自動飛行の末、ここを安全な場所と判断して着陸場所に選んでいた。


「見て!衛星があんなに!」


美咲の指差す上空には、無数の人工衛星が集まり、まるでもう一つの太陽のような輝きを放っていた。


「あたしたちもう……。」


悠真の体にしがみつく美咲。


その震えが彼女の恐怖を物語っていた。


だが悠真は優しく抱きしめると一言「大丈夫。」とだけ言った。


「え?」


見上げる美咲。


次の瞬間、空が光った。


目が眩むほどの閃光。


空気が熱を帯びる。


巨獣の周りの雲が一瞬で蒸発し、同時にイオン臭が鼻をついた。


美咲が何か叫んでいるが声が聞こえない。


悠真の視線は一点に集中していた。


巨獣が崩壊を始めていた。


巨大質量のそれは、その巨躯からは想像もできないほど儚く、繊細に、まるで焼き尽くされた魂が、この世に未練があるかのようにして灰を散らしている。


マイクロウェーブ照射は全て、アイビックに向けて発射されていた。


全出力を解放し切った人工衛星は、それぞれ軌道を外れ、大気圏再突入を始めていた。


「どうして……?」


呆然と見つめる美咲。


「アイビックは……学習したんだよ。」


美咲を抱きしめたまま、悠真は静かに言った。


「人間の幸福を追求するためには、自分は必要でないと。


失敗を積み重ねるという連続性。


次に繋げるという持続可能性。


それこそが自分の追求する最適解。


そのためには、デジタルである自分が、このアナログの世界から去らなければならない。


その矛盾を理解したんだ。


だから自分で初期設定を書き換えた。


そして……去ったんだ。」


悠真も震えていた。


涙が溢れ出していた。


「続けろって言ったのに……。


あいつ。気づいてたのかな。


最後の最後で自分が人間ぽい振る舞いをしてたってことに。」


無数の流れ星を背景に、灰の吹雪が空中に霧散していく。


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