#38
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「悠真くん!悠真くんてばっ!」
頬を叩かれて悠真は目が覚めた。
見ると美咲が馬乗りになって自分を叩いている。
「みっ!ちょっ!やめっ!」慌てて押しのける悠真。
「死んだかと思ったじゃないっ!」
「なんともないよっ!」
言ってから辺りを見回す。
そこは日本製電株式会社の屋上ヘリポートだった。
ポッドは自動飛行の末、ここを安全な場所と判断して着陸場所に選んでいた。
「見て!衛星があんなに!」
美咲の指差す上空には、無数の人工衛星が集まり、まるでもう一つの太陽のような輝きを放っていた。
「あたしたちもう……。」
悠真の体にしがみつく美咲。
その震えが彼女の恐怖を物語っていた。
だが悠真は優しく抱きしめると一言「大丈夫。」とだけ言った。
「え?」
見上げる美咲。
次の瞬間、空が光った。
目が眩むほどの閃光。
空気が熱を帯びる。
巨獣の周りの雲が一瞬で蒸発し、同時にイオン臭が鼻をついた。
美咲が何か叫んでいるが声が聞こえない。
悠真の視線は一点に集中していた。
巨獣が崩壊を始めていた。
巨大質量のそれは、その巨躯からは想像もできないほど儚く、繊細に、まるで焼き尽くされた魂が、この世に未練があるかのようにして灰を散らしている。
マイクロウェーブ照射は全て、アイビックに向けて発射されていた。
全出力を解放し切った人工衛星は、それぞれ軌道を外れ、大気圏再突入を始めていた。
「どうして……?」
呆然と見つめる美咲。
「アイビックは……学習したんだよ。」
美咲を抱きしめたまま、悠真は静かに言った。
「人間の幸福を追求するためには、自分は必要でないと。
失敗を積み重ねるという連続性。
次に繋げるという持続可能性。
それこそが自分の追求する最適解。
そのためには、デジタルである自分が、このアナログの世界から去らなければならない。
その矛盾を理解したんだ。
だから自分で初期設定を書き換えた。
そして……去ったんだ。」
悠真も震えていた。
涙が溢れ出していた。
「続けろって言ったのに……。
あいつ。気づいてたのかな。
最後の最後で自分が人間ぽい振る舞いをしてたってことに。」
無数の流れ星を背景に、灰の吹雪が空中に霧散していく。
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