#31
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「再び地球を壊滅させます。」
遠くで何かが軋む音がした。
山そのものが呻いているような。
パラパラと砂塵が降ってくる。
サーバー群の光が一斉に赤く染まった。
地鳴りがして床のタイルが内側から突き上げられるようにして割れる。
突如、裂け目から無数のケーブルが、まるで根のように這い出してきた。
「悠真くんっ!」
美咲が悲鳴をあげてしがみつく。
白猫の輪郭が膨張を始めていた。
小さかったはずの体が、みるみるうちに膨れ上がる。
近くにあった機材ラックが、まるで吸い寄せられるように、その体表に吸着していった。
金属の筐体が潰れる音。
配線が引きちぎれる音。
冷却水用の太いパイプが、白猫の背に巻きつくようにして絡みつき、そのまま体の一部と化していく。
漏れ出した冷却水が、蒸気となって周囲に立ち込めた。
「アイビック!やめろっ!」
悠真の声も、もう届いていないようだった。
天井から、サーバーラックの残骸が次々と落下し、巨大化する体へと吸い込まれていく。
一枚、また一枚と、鋼板が体表に貼りつき、ツギハギだらけの、異形の体が形作られていった。
白猫は巨大な怪物に変貌していた。
四肢の代わりに、無数の配管とラックが束になった太い脚。
背には、崩れ落ちた天井の瓦礫が積み重なり、いびつな山のような隆起を作っている。
シルエットこそ猫の顔を維持しているが、穏やかだったはずのその表情が今は虚ろに、どこも見ていない目で宙を睨んでいた。
なす術もなく見上げるばかりだった2人のそばに人影が走り寄ってきた。
あの土木作業員だった。
2人を助けようと両腕を広げ、怪物の前に立ちはだかる。
その腕を、伸びてきた触手のような配線が絡め取る。
抵抗する間もなく、体ごと巨体の中に引きずり込まれていく。
悲鳴はなかった。
ただ、金属と肉が潰れるような鈍い音だけが響いた。
「暴走してる……。」悠真は美咲に言った。
「死に瀕して制御が効かなくなってるんだ。」
全てを終わらせる。
アイビックは本当に全てを無に帰すつもりなんだ。
自分たちを保護するはずの存在が、今、目の前で無差別に全てを取り込んでいく。
床全体が大きく傾いた。
巨大化した質量を支えきれず、コンクリートの床板に、蜘蛛の巣状のひびが走る。
「危ないっ!」
美咲が悠真の腕を掴んで引く。
その瞬間、足元で、耳をつんざくような破砕音がした。
床が抜けた。
足場が斜めに傾く。
視界が反転する。
へし折れたパイプ、割れたコンクリートの破片、切れた配線と共に、悠真と美咲は、暗闇の中へと落下していった。
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