#22
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部屋に入ると冷気はより一層濃くなったが、悠真は呆気にとられるばかりであった。
見慣れた1DK。
入ってすぐキッチンやトイレなどの水回り。
その奥にリビング。
ベッド。テレビ。デスク。クローゼット。
が配置されているはずだが、ここから見る限りそのような家具類は一切置かれていなかった。
その代わり、本来なら窓があるはずの部屋の一番奥に、見慣れない本棚が据え付けてあった。
窓を塞ぐようにして据え付けられた本棚。
そこに溢れ出しそうなほどのファイルが詰め込まれていたのだ。
「これって……?」
美咲が先に部屋に上がり、一冊手に取るとハッと息を呑んだ。
「やっぱり。」
「え?な、なんなの?」
悠真も靴を脱いで後に続く。
「見てこれ。」
手渡されたファイルをパラパラとめくる。
それは美咲が持ち出した日本製電の社史だった。
「同じもの?」悠真は眉をしかめる。
「いえ。似てるけど違うわ。」
表紙を指し示す。
「politician……ポリティシャン、政治家?」
「ここに写ってるのもさっきの写真と同じ場所や同じ人たちだけど……経歴が違う。あたし政治家になってる。」
25歳の時に無所属から立候補してダントツの得票数で当選。
以後、破竹の勢いでのしあがり、なんと45歳の若さで内閣総理大臣になっている!
ファイルの通し番号は『#22』となっていた。
「何これ……。てゆーか何冊あるんだ……。」
「この部屋のファイルは全部あたしが政治家として生きている世界を保存しているみたい……。」
手当たり次第、棚から引っ張り出しては乱暴にめくる美咲。軽くパニックを起こしているように見える。
「み、美咲さん落ち着いて!」
床がファイルで埋もれている。それでも美咲は構わず棚のファイルを放り出す。
「美咲さんてば!」
「見て!」急に手を止めて美咲は悠真の肩を掴んだ。
空になった棚の向こうに扉があった。
玄関ドアだった。
ドアのカメラが悠真を認証する。
「お帰りなさい悠真さん。」
そう言うとドアは本棚ごと自動でスライドして開いた。
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