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黒竜の相棒 ―兄を救うため、僕は戦う!―  作者: 魔天使
【序章:滅びの黒竜と未来への約束】

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3/12

闇の森にて

「噂では森の方から向かって来てるんだったな」


黒竜が迫っていると聞き、

街の住民は次々とその場を離れていたが。その人の波を掻き分けるようにセシルドは走り続けた。


いつしか街からは離れ、魔物が徘徊する森へと更に走り続ける。

奥へ進むにつれて空は黒雲に隠れ、闇の世界へと変わっていた。


「もうすぐ傍まで来てる証拠だな…」

不安が無いと言えば嘘になるが、守る者のあるセシルドに迷いは無かった。


長年の自分の感覚に頼り、森の奥深くへと向かった。

胸がざわつく、今まで多くの魔物と戦って来たが、これほどのプレッシャーを放つのは、

黒竜以外に考えられない。


森を抜けると辺りは夜の帳が落ち、

すっかり闇色へと染まっていた。

「はぁはぁ…ここで待っていればきっと…」


「なかなか感が鋭いみたいだなぁ、なぁ人間?」


「くっ…!?」

気配が無かった。それどころか姿もまだ見えない。

「どこだ!!!!!出て来い!!俺が相手だ!!!」


そう叫ぶとちょうど目線の先にある大木の上、闇の中に三つの赤が灯るのを見つけた。


「まぁ…そう焦るな、ゆっくり料理してやるからよ」

一瞬細まった赤い光が揺らめくと大木は音を立てて崩れ去り、

顕になったその姿は月に照らされ浮かび上がった。


「俺様は黒竜ブラック・クルス――今ここへ向かっている、あの“黒竜の王アザン"と同じ"クルス"の血を継ぐ黒竜さ」

「アザンの兄弟だ…と…!?」


想像もしていなかった。まさかアザン以外にも生き残っている黒竜がおり、今目の前に存在してるなど。

「そうさ、俺様達は兄弟…だが俺様はあいつを認めない」

「どういう事だ」


「クク…俺様は特殊でな?人間を喰らわないと生きていけないんだ。それをアイツは自分の感情に流され滅ぼそうだなんて、どうかしてる」


ブラックは大きく羽ばたくと、ゆっくりと地面へと足を着けた。


「だから俺様はアイツを殺す」


「自分の兄弟を殺すだと!?」

「何を驚く事がある?現にお前は俺様の兄を殺しに来たんじゃないのか?ククク」


楽しそうに笑みを浮かべるブラックは、兄弟を殺すことに何のためらいも疑問も無いように見えた。


「何故俺の前に現れた…」

疑問だった自分と同じくアザンを待ち伏せしているのであれば、わざわざ自ら名乗る必要も無い。


「もちろん、貴様に用があったのさ…」

「俺に…用?」

「ハッキリ言うぜ?お前程度の力じゃ、アザンに勝てねぇ」


「くっ…」

そんな事は重々承知していた。

ただ指を咥えて逃げている事なんてできなかった。


「こっからが本題だ」

「何だ…?」


「俺様にその身を捧げろ…セシルド」


「!?」


何を言うかと思えばあまりにも突拍子も無い。

そんな事受け入れるはずも無いと、セシルドは武器を両手に構えた。


「まぁ…もちろんタダとは言わねぇ、俺様は優しいからなククク…」


不適な笑みを浮かべながらブラックはゆっくりとセシルドへと近づいた。


「来るな!!!!!」


研ぎ澄まされた針の先が確実にブラックの体を捉えていた。

しかし本来ならその皮膚を突き破り出るはずの先端はまるで無い。

それどころか刺さる手応えも、血すら出ていない。


「ククク…そんな物で俺達黒竜を倒そうだなんて…甘いんじゃねぇのか?」


危険を感じ突き刺した針を残しセシルドが身を引くと

ブラックは胸の針を取り出すどころか体へと押し込み、取り込んでしまった。


「取り込んだ…だと!?」

「悪いな、俺様は黒竜の中でも特別でね…無駄だとは思うが俺様とやり合ってみるか?」


「俺をなめるな…!!!!」

「言っても分からねぇ馬鹿には、身を持って知ってもらわなきゃなぁ…」


言い終るかどうかの間に、二人はお互いの刃を交わせていた。


しかし斬撃も打撃も効かないブラックに成す術も無く攻撃を受けセシルドは地へ着いた。


「筋はいいなぁ、俺様が目を付けただけはある」

「ぐはっ、ごほっ…」

「このまま止めを刺しても良いが…先程の話の続きだ、乗るかどうかは貴様に選ばせてやる」


「………。」

「貴様の体を捧げれば…俺様がアイツを倒してやる、街には一切手を出さないぜ?目的はそこだけだからなぁ」


「そんな話…信じられる…か」

瀕死になりながらもそう呟いたセシルドに容赦無くブラックは蹴りを入れた。


そのまま数メートル先まで吹っ飛ばされ地面へと打ち付けられる。


「がっ…!!!」

「言っておくがな…貴様のような死にぞこない一瞬で葬り去る事なんて、容易いんだぜ?」


赤い瞳は普通の人間なら一瞬で気を失うような鋭さと迫力でセシルドを捉える。


「それなのに俺様はチャンスをやろうと言っているんだ、いいか次はねぇぞ?」


意識も曖昧としていた。相手はあまりにも実力が違っていた。

どこまでも桁違いで勝てる要素なんて微塵も無かった。

自分の愚かさに悔しくてどうしようも無くなる。


「最期の二択だ…慎重に選ぶんだなククク…まず一択

 俺様は人を取り込む事でアイツと渡り合える力を手に入れることができる。それで目に付いたのが貴様だ

 つまりテメェ自身を捧げて貴様の大切な街を守るか…それとも」


そこまで言うとセシルドを指差し冷たく微笑む。

「ここで貴様の無力さを思い知りながら…俺様の手によって消し炭になるか、さぁ選べ!」


考えるまでも無く選択は一つしか無かった。

約束を守るかなんてどこにも保障は無かったが、それでもただ何もしないまま消えるよりは、

ほんの一握りでも可能性がある方が救われる。


(すまない…リィア…)

「どうした?声が出ないのか?」

(俺は俺の選択をする…)


辛うじて動く足で立ち上がり弱々しくブラックへと近づく。

「へぇ…」

目の前に立つだけで倒れそうな気迫、これが黒竜と呼ばれるモノの姿なのか。


そんな事を頭の隅でぼんやりと考えつつ、一歩ずつ前へと進んだ。


「自分から来るとは…可愛いところもあるじゃねぇか」

「この身をお前に捧げる…だからアザンを…」

そこまで言ってセシルドは気を失い、ブラックに寄り掛るように倒れこんだ。

 

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