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黒竜の相棒 ―兄を救うため、僕は戦う!―  作者: 魔天使
【第二章:蒼と黒の狭間で】

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森の青い羽

森を包む木漏れ日の中を、

僕とセシルドは並んで歩いていた。

いつも見慣れているはずの森なのに――今日は、どこか違う。


風の音が重く響いて、鳥の声もしない。まるで、時間そのものが止まってしまったような。


「なんでだろう……いつもと違う」

そう呟いた僕の声は、静まり返った森の奥へ吸い込まれていった。


前を歩くセシルドの背中。首から掛けている長い布がゆらゆらと風に揺れる。

不安になった僕は、その端を掴もうと手を伸ばした。


――ふわっ。


触れたはずの布が、手の中で“羽”に変わった。

青く、透明な光を放つ羽。

「ねぇ……これ、セシルドの?」

「ん? おぉ、珍しい色の羽だな。拾ったのか?」


拾った? 違う。確かに、さっき掴んだのはセシルドの布だったのに。

事情を話すと、彼は少し首を傾げて僕の手を見た。


「つまりそれは……俺の体から出てきたってことになるのか? 本当によく分からねぇ体だな」

そう言って羽を手に取った瞬間、セシルドの表情が一瞬だけ歪んだ。


「っ……!」

「どうしたの、セシルド?」

「な、何でもない……先に進もう」

そう言って歩き出す彼の背中が、いつもより遠くに見えた。


「ん? 何か言ったか、クラウダ?」

突然立ち止まったセシルドが、後ろを振り向く。

「へっ? 何も言ってないよー?」

その直後だった。


――ブラック。貴様を……。


誰かの声が、森の奥じゃなく、僕の頭の中に響いた。

憎しみに染まった声。その名は――セシルドの中に眠る“もうひとつの存在”を呼んでいた。


「ブラックを……呼んでる? まさか、俺の中に……っ!」

セシルドの体が苦しそうに震える。

その表情は、これまで見たことがないほど苦痛に歪んでいた。


「ぐっ……! 俺から離れろ、クラウダ!!」

「う、うん!」

叫ばれるまま、僕は茂みに身を隠す。

けれど――


「ぁぁぁあああっ!!」


セシルドの体が黒く溶け出した。

背中から液体のようなものが流れ出し、それが翼の形に変わっていく。

黒から青へ、剥がれるように変わっていく色。

光の羽がひときわ強く輝いたかと思うと、空から“何か”が降りてきた。

青い髪、青い翼。

セシルドよりも背の高い男が、静かに地面へ降り立った。

「翼が……生えてる……」

その人は、ぼくを見もせずに大きな剣を抜き、セシルドに突きつけた。


「立て、ブラック。あの日の屈辱を、今こそ返してやる」

「くっ……誰だ、お前……」

その言葉に、男の顔が怒りで歪む。


「忘れたか。俺はアレス・クレフォード。お前に取り込まれた男だ!」


剣が閃き、空気が裂けた。

地面ごと切り裂く一撃に、セシルドは咄嗟に跳び退く。

それでも血が舞った。


「セシルドっ!」


思わず叫んだ僕の声に、彼の声が――心の中に直接響いた。

(クラウダ……喋らなくても、こうして話せるみたいだ)

(セシルド!? 大丈夫? すごく痛そうだよ……!)

(心配するな。この体はすぐ修復する。だが……あの男はブラックを恨んでいる。俺をブラックだと思って襲ってきているんだ)


セシルドは傷を再生させながらも、何度も斬られていた。

剣がぶつかるたびに、僕の胸も痛んだ。

このままじゃ、きっと――。


(セシルドがブラックじゃないって、伝えれば……!)


気づけば、体が勝手に動いていた。

セシルドの「待て」という声が届く前に、僕は茂みを飛び出していた。


「やめてください!!!」


声は震えていたけど、全力で叫んだ。

空気がびりっと震える。剣を構えていた男が、ピタリと動きを止める。


「……何だ、貴様は?」

鋭い視線に足がすくみそうになった。

でも、それでも。僕は目を逸らさなかった。


「僕は……クラウダ。

目の前にいるのはブラックじゃない、セシルドです!」


男の眉が動く。

けれど、その目にはまだ憎しみの色が消えていなかった。

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