↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/14

忠実な執事


ルシェリオ=ラジェ。姓は私がつけた。


2歳になってすぐの礼拝日。毎月行われる孤児院への慰問についていく、と、珍しく我儘を言った私に根負けし、両親と共に馬車に乗った。


その夜、孤児院が火事に見舞われるとも知らず。


のちの調査で魔法を使った痕跡が見つかったこと、孤児院への寄附物資が無くなっていたことから、盗み目的の放火であると結論づけられた。


幸いにも死者は出なかったが、何人かの子供が火傷を負い、入院が必要とされた。


その中、パニックを起こし建物の中で迷子になっていた私を助けたのが、いち早く火事に気づいて貧民街から駆けつけたルシェリオだ。


娘が炎の中に取り残されたと半狂乱で叫ぶ両親の前に、号泣する私を抱え、真っ青な顔で現れたらしい。


固辞するルシェリオをよそに、命の恩人に何としても報いたい両親と、彼から離れようとしない幼い私。


金銭を持たせるには幼すぎ、帰る家もない。そうしてルシェリオは、ゼレンディア家の下働きとして迎えられた。


元の素質もあったのだろう。そこからは早かった。


護衛としての訓練を受ける中で目覚ましい成長を見せ、邸にきてからたった8年で私------侯爵令嬢・テネルシア=ゼレンディアの護衛の座を勝ち取ったのだ。


------なんて。全部知っていたけれど。


本来の物語では。


あの日、私とルシェは出会わなかった。

私は孤児院に行かず、火事は起こらず、ただ、パンが一つ消えただけ。


汚らしい、みすぼらしい、年齢よりも相当小さく見える一人の孤児が、孤児院に寄付された物資の中から、その日を生きるための食糧を盗み。


その命を繋いで、私が16になる誕生日に、私を、殺しただけ。


だから私は。


彼と出会うために駄々をこね、

彼を家に招くために孤児院に火をつけ、

逃げようとする彼にしがみついて泣き喚いた。


------やっぱり、極めるなら身体の大きさに依存しない魔術ね。学べば学ぶほど、出来ることが増える。便利だわ。


最初は首を切られた。


次はロープで吊られた。


その次は、……なんだったかしら。


遠い昔の話すぎて思い出せないけれど、何千回繰り返して掴んだ、これが"勝ちパターン"。

今のところ唯一と言っていい、私が彼に殺されないルート。


子供達に多少の犠牲は出たが仕方ない。

誰も死んでいないのだから。

きっと、許してくれるでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。