目覚め
------眩しい。
薄く目を開くと、陽に照らされた葉が優しく揺れていた。
------寝てしまったのね。何か、夢を見ていた気がする。
むくり、と体を起こす。暖かくなり始めた気候に、頬を撫でていく風が心地よい。
「お目覚めですか、お嬢様」
声のする方を見遣ると、黒服の少年が礼儀正しく控えていた。
「ええ。おはよう、ルシェ」
「おはようございます」
にこっ、と人懐こい笑みを浮かべる。歳は十五前後…私よりも5つほど上だろうか。貧民街出身の孤児のため、詳細は分からない。
「そろそろ新しい教師が到着されるため、お迎えに参りました」
「…そう」
立ち上がり、ぽんぽんとスカートについた汚れを払い、邸に向かう。
「はい。ゼレンディア家侯爵令嬢に何かあっては事ですから。…少し失礼します」
声をかけられた後、伸ばした髪をすくわれる。どうやら何かが絡まっていたらしい。
「気持ちよさそうに寝ていましたね」
どこか嬉しそうな声音で話しつつ、つまんだ何かをハンカチに挟んでしまい、距離を保って着いてくる。
------あのゴミも、コレクション入りかしらね。
よくもまあ飽きないものだ、と無意識に呆れ。
「………ふふ」
次いで、笑みが溢れる。
自分にとっては何千年繰り返した光景でも、彼にとってはまだほんの数年の趣味なのだ。
飽きないのは、彼だけではなかった。
「ずっと見ていたの?」
かわいいものだ。
「はい。微睡み閉じていく、その長い睫毛の一つまで、しっかりと私の脳裏に焼き付けました」
一つ誤れば、私を殺す相手だとしても。




