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異世界でチート能力を得られたけれど日常生活に支障を出るので返却したいのですけれども?  作者: 竜宮


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第5話 もしかして魔族の人?

 興奮する男性は教会らしき場所で怒声を響かせている。

 僕と神様の近くには修道着を着た女性と神父らしき男性が困惑していた。僕は状況が全く理解出来ずに立ち尽くす。これが夢じゃないのは本能で理解出来た。

 先ほどまでの海沿いの交差点は姿を消している。もちろん海の香りも無くなっている。


「何だお前は!? どこから現れた!?」


 僕に向かって片手銃を持った男性は叫ぶ。こっちの台詞だ。

 僕としてはそっちが何処から現れたのか聞きたいが今はそんな事を言っている場合ではない。男性の腕に拘束されている女性は涙を浮かべて脅えている。

 すぐに助けてあげないと。


「あの! 少し落ち着いて下さい! 冷静になりませんか?」


 僕は両手を前に出す。しかし興奮している男性は聞く耳を持たない。


「黙れ! 近づくと撃つぞ!」


 銃口を女性の頭に向けられる。僕は隣で腕を組む神様に視線で助けを求める。

 神様は細い腕を組みながら険しい表情で一点を見つめていた。


「異世界転異か。人間だけならまだしも神であるこの俺も転移させるとは……やるな」


「感心している場合じゃないですよッ! まずこの状況をどうにかして下さいよッ!」


「無茶を言うな。どうにかしろと言われても俺が人間や物に触れられないのは知っているだろう。声も聞こえないのなら交渉も出来ないではないか」


「たしかにそうですけれども」


 すると僕の背後にいた修道女が「神様どうかお助け下さい」と祈りを捧げる。反応した神様が「だから俺では難しいっての」と端的に答える。切羽詰まった状況なのに何だかシュールなやりとりだった。

 相変わらず緊張感のない神様に呆れていると現実世界で有り得ない事が起こった。


「君。この小さな女の子を早く避難させるんだ」


 神父が僕の前に壁になるように立つ。僕は驚いて「見えるのですか!?」と聞いてしまった。神様は普通の人間には見えないはずだ。神様も瞳を見開かせて驚いている。


「何を馬鹿な事を言っている。君もまだ子供だ。裏に出口があるから早くここから離れなさい」


 勇敢な大人だと素直に思った。しかし困っている女性を残して自分だけ逃げる訳にはいかない。僕は男性の背後を眺める。男性の背後には教会の入り口があった。

 僕は早口で勇敢な神父さんに囁く。


「僕が逃げた振りをして背後から男を取り押さえます」


「危ないから止めなさい」


「でも女性を放っておけません」


 すると神様が男性の前に無防備に歩き出すと脅えた女性の目の前で仁王立ちした。


「お前さ。この神聖な場所で何をしているのか分かっているのか? 怨恨じみた行動は外でやれ。どうせその女に振られたとかだろう? 情けない奴だな全く」


「うるさい!? 俺はこの女を愛していたんだ! なのに他の男と婚約するなんてあり得ないだろうがッ!?」


 言葉が通じた神様は驚きの表情を見せると僕の方へ笑顔で振り返る。

 すると男性が神様に向けて銃口を向けた。


「ガキに俺の気持ちが分かってたまるかよッ!」


「神様ッ!」


 火薬の音と共に銃口からと銃弾が飛び出す。銃弾は神様の頭の側面に命中する。

 被弾した神様の小さな身体は人形のように地面に倒れた。

 瞳と口を開けたまま僕は固まる。驚きで息が出来なかった。

 身体の体温が凍り付いていく。目の前の出来事を脳が拒否していた。

 倒れた神様の姿が目の奥に焼き付く。凍えた身体から熱が蘇ってくる。

 悲しみ、怒りの感情が火山のように噴き出すと僕の中の糸がぷつんと切れた。

 奥歯を噛みしめた僕は態勢を低くして走り出す。なぜ飛び出したのか自分でも分からない。ただ、神様を助けに行くのではないと分かった。

 走り出した僕に驚いた男性はこちらに発砲する。一発の銃弾は僕の肩をかすめた。銃の腕が未熟なので避ける必要はなかった。

 二発目を構える男性の腕を左手で掴むと握力で手首を折った。そして右手で男性の首を掴むとそのまま地面に叩きつける。僕は自分の感情を全く制御出来ないでいた。

 命を大事にするのは当然だ。犯罪者であっても何か事情があるかも知れない。償いの機会を与えて更生させるべきだと僕は純粋に思っていた。

 しかし今は違う。無価値な人間は生きている価値が無いと判断していた。いや、目の前の男性を人間扱いしていなかった。


「助けてくれッ! 俺が間違っていたッ! 殺さないでくれぇッ!」


 首を掴まれている男性が命乞いしてくる。耳障りな声は僕の感情には割り込めなかった。

 遠慮なく手首に力を入れる。細い木を折るように簡単に殺せるだろうと分かってしまった。

 躊躇などはない。僕の大事なモノを奪ったのなら死んで当然だと思った。

 殺そうと腕に力を入れた瞬間に隣で気配を感じた。身体を止めた僕は視線を下げると剣先が僕の首の皮に触れて止まっていた。


「君何者なのかなぁ? もしかして魔族の人?」


 笑っている少女の瞳は動けば殺すと脅しているようだった。

 すると身体の力が急に抜けた。立っていられなくなった僕は膝から崩れるように地面に倒れてしまった。

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