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9話 盗賊団壊滅作戦

「帰還してすぐ大金を用意できるなんてシド様はすごいですね」

「あたしが何かしたわけじゃないのよ。でも本当に運が良かったわ」

 

 無事に借入金の返済が完了した。

 

 シドと話をしているのは行商人のエルナさんという綺麗な女性だ。今のライフシード領に来てくれる唯一の商人である。

 

 女性で行商人というのは相当珍しいらしい。

 でもだからこそ分かることもあるということでむしろ女性であることを武器にして商いをしているとのこと。

 ライフシード領にも頻繁に訪れていたらしく、シドとは長い付き合いがあるらしい。

 

 だからだろうか。

 返済能力の怪しいリナ様にお金を貸してくれていたのはエルナさんだった。

 しかも治安の悪化で危険だったにも関わらずもライフシード領に塩などの生活必需品を届けてくれた。

 

 義理人情に熱いっていうのはいい商人の資質だと俺を育ててくれた元商人の仲間たちが言ってた。


 エルナさんはいい商人なんだな。


「エルナにも心配かけたわね。あたし不在の間もここに足を運んでくれていたこと感謝しているわ」

 

「シド様、ご帰還を心より嬉しく思います。本当に心配しましたよ」

 

「ありがとう。この半年間あまりいい取引をさせてあげられなくて悪かったわね。でもこれからまたライフシード領を盛り上げていくから期待して待っていなさい」

「ありがとうございます」

 

 シドは今後もエルナさんとは取引を続けたいと思っているようだ。

 まぁ当然だな。支えてくれた恩にはきちんと報いた方がいいに決まってるよ。

 

 これからライフシード領が好景気になることがあれば真っ先にエルナさんにいい話を持っていこう。

 

「シド様、今はとにかく治安の回復を急いだほうがいい思います。各地でライフシード領の悪い噂が広まっていますから」


 治安か。人攫いが起こるほど物騒な状態じゃそれもそうだよね。

 

 シドとの話を終えたエルナさんは宿に戻っていった。

 と言っても宿は運営していないので宿だった場所で護衛を見張りに立てながら宿泊するらしいけど。



 ◇

 

 無事に返済を終え、今は昼食をとりながら今後の方針を決めるべく話し合いをすることになっている。

 

 借金問題が一旦片付いたし、自然と治安問題に焦点が定まっていく。

 

「賊共ぶっ潰す!」

「魔物ぬっ殺す!」

「殺意がすごい……」

 

 シドもリナ様もめっちゃ怖いんですけど?


 まぁ……人が拐われる事件が発生するほど治安が悪化してたらダメだよね。

 

「賊共を今すぐぶっ潰してやりたいけど実際問題として戦力が足りないのよね。まだ20人以上賊がいるらしいし……。せっかくアジトの場所はわかってるのに」


 捕らえた賊からアジトは聞き出してあるけど多分警戒されてる。

 シドが帰還してすぐに賊を数人捕縛したんだから当然そうなるだろう。

 モタモタしてると移動してしまうかもしれない。

 

「魔物の間引きもダメ。ただでさえ魔物が増えて危険なのに賊までいるんじゃ危険すぎるよ……」


 ライフシード領で戦える人はシド、俺……以上!何それ少なすぎぃ!それもう自衛なんて全く出来ないじゃん!

 

 一応リナ様が自分も戦えると主張していたけどシドが却下した。足を引っ張るだけという判断らしい。


 うーん。とりあえず俺も意見を出してみようかな。

 

「傭兵を雇うとかどうですか?」

「お金が……」


 まぁそうだよね。それじゃその手は使えないな。


「今は非常時なんだし、領民を強制的に徴兵するのはどうですか?」

「ダメよ!犠牲者が出ちゃうじゃない!それに若い私でも足手纏いだって言うなら非戦闘員を徴兵したって結局足手纏いでしょ」

 

 ご年配の方を徴兵しても人質に取られるのが関の山かなぁ。


「現状あるもので何とかするしかないわね。それならやっぱりあれしかないわ」

 

「お父さんのアイデア……何だか脳筋の予感がする」


「失礼ねリナちゃん、私の画期的なアイデアを聞いてから言ってくれるかしら」

 

「おお、シドがなんか自信ありげだ」

 

「肉体美がどうとか言わないわよねパパ?」

 

「………………」

 

「え?図星なの?」


 それをノープランというんだよなぁ。シドは何というか力技が大好きだね。


「……でもパパを責められない。私にもアイデアは無いわけで……。イアックは他に何かアイデアない?」


 まぁ……あるにはある。冒険譚では悪役が割とよく使う酷い方法が。


「人道を外れたやり方でいいならありますけど……」

 

「「構わないわ」」

 

「2人して即答で許可!?」

 

 まだ詳しい話をする前に許可が出ちゃったよ。

 マジでかなり悪質なやり方なんだけど。


「責任は全てあたしが取るから徹底的にやっておしまい。むしろ今後舐めた奴らが出ないようにズタボロにしてやって」

「え?あ、うん。わかったよ」


 シド、めっちゃ怒ってるんだな。笑顔なのに圧を感じるよ……。

 まぁこの判断は領主の立場からすれば当然かもしれないな。

 

 人攫い事件が起きたのに何もしないのであれば「ここの領主って領民拐っても何もして来ないな。じゃあもう1人2人拐っとこ」みたいな考えを持つ奴が現れるかもしれない。

 

「イアック、私に出来ることなら何でも言って。何か必要なものがあれば家のものなんでも使っていいからね」


 ほほう。リナ様は何でもしてくれるし領主館にある物は()()()使()()()()()と。

 

 何でもいい……ね。それはかなり楽になるな。よし、それなら遠慮なくあれを借りよう。


「わかりました。それでは準備を整えます。2人にも手伝ってもらいますね」


 


 ⭐︎盗賊団 トンドロ視点

 

 俺はトンドロ。盗賊団の頭領だ。今俺はライフシード領の森に潜伏し、領地への嫌がらせをする仕事をしている。


 そう、これは仕事だ。

 ナワバリをライフシード領周辺に移して町に嫌がらせをするだけで大金をくれるって野郎がいたからな。

 

 元のナワバリはそろそろ潮時だと思っていたし、割りのいい話だから乗ってやった。

 

 怪しいやつだったからそいつのことは少し調べたが、そいつも伝言係にされただけでその前に何人もの人間が絡んでいやがった。

 

 これじゃ本当の依頼主には辿り着けねぇ。

 だがまぁそれはいい。そう簡単に雇い主までは辿り着けないってのは良くある話だからな。


 それにしてもここはいい。魔物だけ警戒してれば後は危険がない。

 

 ライフシード領へ続く街道で商人や旅びとを襲い、畑を荒らし、盗みを働く。結構派手にやったはずだが騎士団も来やがらねぇ。


 安全なところで弱者を追い込む。最高だぜ。


 もう領主代理の小娘も領民の奴らも大分弱ってきてる。俺たちに抵抗する力なんて有りやしねぇな。だったら次はガキを攫って売り飛ばして金にしてやる。

 

 重犯罪だが相手は所詮戦う力もない連中だ。どんなこともやりたい放題だぜ。

 

 そんな時に周辺の見回りに出してた部下から報告が入る。

 

「何!?アンドレがやられただと!?しかもあいつが持ってた金が全部無くなっていただとぉ!?」


 人攫い部隊に回してたアンドレがやられたと報告が入った。

 

 正直予想外だ。あんなやつでもそれなりに腕は立つ。しかも逃げる隙も与えないってことはやったのはまず間違いなく……。


「シドの野郎だな……」


 ライフシード領の領主、シドが戻ってきたって話は聞いた。

 奴ならアンドレくらい簡単に倒せるなんかだろうさ。なんせアルマウェルズ戦争で活躍した《憤怒の英雄》だからな。

 俺でもタイマンじゃ多分勝てねぇ。

 

 しかも人攫いをやった矢先にそんなことになったのかよ。今頃怒り狂ってるに違いねぇ。


「アンドレの野郎クソの役にも立ちゃしねえ!あの野郎が預かってた金がパァになっちまったじゃねぇか!」


 金の管理をさせろとクソうるせぇから仕方なく預けてやってたのが完全に裏目に出た。まず間違いなくシドの野郎が持ってったんだろうさ。


「クソ!クソ!クソ!今回の仕事の前金が!大金だったのによぉ!」


 大金を奪われた!怒りが収まらねぇ!

 頭に血が昇った俺は近くにあった荷物を蹴り飛ばす。5分ほど暴れ回っていると少しスッキリして冷静になる。

 

「いや待て、暴れてる場合じゃねぇだろ」


 捕まった奴らが尋問されてこのアジトの場所がバレたかも知れねぇ。シドの野郎が攻めてくるんじゃねえか?


 いや、戦力なんてこの領地には残ってねぇし、シドが単身で来るとも思わねえが……。

 

「いや、シドが帰ってきた時に傭兵でも雇っていたなら……」


 あり得る……。俺はシドが今まで何やってたかも知らねえんだ。強力な助っ人くらい居てもおかしくねぇ。

 

 モタモタしてたらシドが攻めてくるかもしれねぇ。

 

「こりゃすぐにでもトンズラした方がいいな。……しかし腹の虫が収まらねえ!」


 冷静にはなったが大金を失ったことには変わりない。このまま逃げるのはどうしても癪だ。


「待てよ。明日の早朝にでもだれか拐っちまうのがいいんじゃねえか?」


 シドが動くとしても今すぐじゃねえだろ。早くても明後日くらいのはずだ。下調べをして作戦練って報酬の話をしてとやることがたくさんあるはずだからな。

 

 よし、決まりだ。明日の早朝、ガキがいると分かってる家を一軒だけ襲う。親は殺してそのままトンズラだ。

 

 ガキ1人2人くらいじゃ奪われた前金には届かないが、あまり時間をかけるとシドが対応してくるかも知れない。

 このあたりがリスクとの折り合いどころだろう。


「明日早朝にガキを拐ってここを立つ!野郎ども今すぐトンズラの準備しろ!急ぎやがれ!」


 これでいい。撤退の判断は早い方がいいからな。俺も自分の荷物をまとめるとしよう。

 

 そして俺は後から思い知ることとなる。

 この時、撤退の準備などせず即時逃げ出すべきだったと。


 慌ただしく荷造りをする俺たちは気づかなかった。


 

 気配を消して木の上からこちらを見る人影に。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


次回で賊相手に攻めに出ます。

人攫いまでやらかした相手に慈悲はありません。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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