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10話 盗賊たちの終焉

 ⭐︎トンドロ視点

 

 明け方、空が白む頃に事件は起こった。

 見張りを部下にやらせて寝入っているとガサガサッと音がした。誰かがテントに入ってきたようだ。


 (誰だ俺のテントに無断で入りやがる野郎は)


 俺は寝起きが悪いんだイライラする。ぶん殴ってやろうか。


「ゲゲゲ」


 ん?何だ気持ち悪い声を出しやがる。まるで魔物みたいな声………………そもそも無断で俺のテントに入るような命知らずがいるのか?…………まさか!?

 

 まだ寝ぼけている頭で何か不自然さを感じて飛び起きる。するとさっきまで俺の頭があった場所に思い切りナイフが振り下ろされた。


「ゲギャ?」

「んな!?ゴブリンだと!何でこんなところに!?」


 バカな!?見張は何をしている!?


「うぎゃあぁぁぁあ!!」

 

 侵入者の正体に驚いていると外から部下の悲鳴が聞こえる。


「悲鳴!?まさか魔物が入り込んでいやがるのか!」


 即座に手元の武器を取り、目の前のゴブリンを殺してテントの外へ飛び出す。


「何だこれは……」

 

 アジトは魔物に襲撃されていた。ゴブリンが主だがオークや死肉鳥なんかの厄介な魔物もいやがる。

 

 見張りはどうしたのか、部下たちは無事なのか、何故いきなりこんな数が襲ってきたのか、たくさんの疑問が浮かんでくるが考えている場合では無い。


「クソッタレがぁ!」


 武器を振り回し、魔物を倒しながら部下を探す。寝込みを襲われて殺されたやつもいたが、まだ怒声を上げながら応戦する部下もいた。


 そいつらを何とか救出するがもう10人と残っていなかった。

 

 寝込みを襲われたから完全に浮き足だってまともに連携もできていない。


「もうここはダメだ。逃げるぞ!」


 これ以上ここに留まるのは無理だと判断。即時撤退を選択する。


「クソッ、追ってきやがるか。森の中ではなかなか振り切れねぇ。このままじゃ全滅も時間の問題だ」


 クソ!全然逃げ切れる気がしねぇ!

 どこに逃げても魔物ばかりだ。そもそも森の中は走りずらい。死肉鳥が空から追いかけてくるのもひたすらうぜぇ。


「このままじゃジリ貧だ。こうなったら町に行くぞ!魔物は全て町の奴らに擦りつける!」


 魔物は弱いやつから狙う。だったら町にいるガキやババア共が真っ先に襲われるはずだ。その混乱の中で俺たちは逃げ切れる。


 その後も応戦しつつ走る。途中で仲間が魔物にやられたが何とか森の出口が見えるところまで来た。もうすぐ町に着く。生き延びられる!


 


 しかしそこで待っていたのは



 

「来たわねゲスゴミビチグソ野郎共」


 どう見てもブチ切れで臨戦体制になっているシドだった。


 

 何故待ち伏せられている!?今はまだ早朝だぞ!?


 それに森に隣接している場所はそれなりに広範囲だ。この地点から出てくるなんて何故わかる?


 もしかして魔物を消しかけたのはシド?どうやって?脳筋のシドが?


 疑問が尽きない。


 しかし考えている時間はない。魔物はすぐ後ろに迫っているのだ。

 もはや生き残るには目の前のシドを突破して魔物を擦りつけるしかない。


「うおおおおおお!シドをやるぞお前らあああ!俺に続けええええええ!」


 雄叫びをあげ、決死の覚悟でシドに特攻する。

 

 一撃でいい、シドを怯ませてそのままシドの横を通り抜けられれば!

 

 全身全霊でシドに向かって武器を振り下ろす。


「ふんぬ!」


 シドのパンチ。

 一瞬で懐に潜り込まれ、後ろに続いた部下ごと殴り飛ばされる。あまりの威力に意識が飛びそうになる。


 (なんだそりゃ……。強すぎんだろクソッタレ……。だがシドも道連れだ。魔物に食われちまえ。……………………おい……魔物いねえじゃねぇか……)


 意識が飛ぶ寸前、最早これまでと諦める。

 せめて魔物がシドを道連れにして欲しいと願うが、何故か魔物が森から出てこないことに今更気づいた。

 

 そこでトンドロの意識は闇に沈んだ。



 

 ⭐︎イアック視点

 

「うわぁ……めっちゃ痛そう」


 俺は盗賊団が逃げる様子を木の上から観察していた。

 モロにシドのパンチが顔面に入るのを目撃しちゃったよ。

 

 シドは丸太みたいな腕してるからなぁ。血管浮き出るほど力が入った拳でモロに顔面殴られてるよ……「メゴギャ!」って音がしてたけど頭蓋骨とか大丈夫なんだろうか。


 だけどこれでミッションコンプリートだ。

 一部始終を見ていたけど、盗賊団は壊滅。魔物も相当数を減らしただろう。


 作戦名《魔物デリバリー》


 盗賊団の寝込みを襲うように魔物の大群を奴らのアジトに誘導し、お互いで潰し合ってもらおうと言う作戦だ。


 これはシゲ爺が教えてくれた《魔物トレイン》という迷惑行為から着想を得ている。

 

 賊と魔物。厄介な敵が2つあるならそいつら同士をぶつけちゃえばいいと言うわけだ。

 

 ハッキリ言おう。今回の作戦は上手く行きまくりであります。徹底的にやると決めていたけど、ちょっと可哀想になるくらいだった。


 俺はシドに作戦完了報告をするべく木から降りた。

 

「シド、仕留め係サンキュー。流石、超強いね」

「イアックこそお疲れ様。作戦は成功したのかしら?」

「うん。完璧」

「そう。流石はイアックね。難しい役目をやらせて悪かったわ」

「いや、割と簡単だったよ?」


 盗賊達みんな油断しすぎだ。

 撤退の準備はしてたみたいだけど酒とか飲んじゃってたし、危機感が足りないんじゃないかな。

 

「それはあんたがすごいだけ。ところでこれどうやったのよ。昨日は魔物をけしかけるとか言ってたけど、あいつら森から出てきた時は既にボロボロだったわよ。ゴブリン程度であんなになるかしら?」

 

「オークと死肉鳥もいたよ。見張番だけ俺がササッと昏倒させて魔物に寝込みを襲わせたんだ。もう死屍累々の地獄絵図。あれ見たらグロが苦手な人はたまらず吐いちゃうね」


 盗賊団の戦力がイマイチ把握できてなかったから結構たくさん誘導したんだよね。結果的にはやりすぎちゃった感がある。

 

「寝込みをやっちゃったのね……それにオークに死肉鳥か。でもどうしてこの地点から飛び出してくると分かったの?」

 

「えっとね。いっぱい魔物をデリバリーすれば盗賊達は多勢に無勢と判断して逃げるでしょ?」

 

「まぁそうね」

 

「だから予め逃げやすい道を作っておいたんだ。そしたら最後まで俺の作ったルートをそのまま通ってたよ。出口にシドがいるとも知らずにね」


 必死に逃げている時、走りづらい道を通る人はまずいないだろう。今回なんか死肉鳥に空から狙われてたんだしね。

 

「そう。それであんたのいう通りの場所で待ってたらトンドロのやつが飛び出してきたのね」

「うん。いやぁ、隠密技能頼りの作戦だったけど想像の10倍上手く行ったよ」


 俺の隠密技能は神の園にいた《シャドーピープ》という魔物を参考にしている。

 

 風呂を覗くことに向けた執念が実体化した魔物と言うだけあって隠れる技術が凄まじい。

 

 まぁ盗賊の見張番なんて欠伸してたしな。簡単だったよ。うん。


「その隠密技能すごすぎよね。それがあるから魔物が多い森でも悠々と活動できるし」

「まぁね〜。シド、もっと褒めてもいいよ?」

「はいはい後でね。ほら、リナちゃんが来たみたいよ」

 

 シドと話し込んでいるとリナ様がやって来た。

 

「うわ……これ全部盗賊?血まみれじゃない。容赦なくやったね」

 

「リナ様お疲れ様です。ポーション撒き係やってくれてありがとうございます」

 

「ねぇイアック、あれなんなの?何だか紫で綺麗だったけど」

 

「あれは《魔避けのポーション》だよ。魔物が近寄らなくなるやつ」


 リナ様には森と隣接する部分にポーションを撒いて回ってもらった。今回の作戦では魔物を活発に動かす必要があったからね。

 町に向かわれたら大変だから領民の手を借りて撒いてもらったんだ。


「え?……えええ!?」

「な!?何ですって……!?」

「え?どうしたの2人とも?」


 2人ともが目ん玉飛び出しそうなくらい驚いている。

 俺からすれば何を今更って感じなんだけどね。神の園ではちょくちょく柵の周りに撒いてたんだけど。

 

「いやいやいや何そのポーション!?常識がひっくり返りそうな効果じゃない!?」

「何を大袈裟な。全く来なくなるわけじゃないし、効かない奴もいるし。それに似たようなものないの?割と簡単に作れるやつだよ?」

 

「ないわよそんなもの!」

「……ないの?え?マジで?」

「……そうね、人里に出て来たばかりだし、色々わかってないのよね」


 なんかシドの目が真剣な感じになってる。え?魔避けポーション無いの?()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……じゃあさ、量産したら売れると思う?」

「売れる。作ったら作った分だけ売れるわ。買わないやつなんていないわよ」

 

 ほほほほほう。これはもうやるしかないな。シドとしっかり相談だ。

 

「あんた本当に何者なのよ……。そう言えば魔物の誘導はどうやったの?」

「あ……それは、えーっと……あはは。何というか、あいつらが好きな匂いがあると言いますか、それを上手く匂わせて誘導したというか」


 ずっと気になってたのよねって感じ聞いてくるリナ様。

 ヤバい……バレたらヤバいぞ超怒られそうだ。何とかここまで具体的なやり方は言わない方向で誤魔化して来たのに。

 

「ん?イアック、ポケットから何か飛び出してるわよ?」

「あ、ちょっ」


 しまったしまったしまったヤバいヤバいヤバい!いつの間にポケットからはみ出したんだ!?

 

「……パンツ?」

「やべ(ボソ)。か、返してよシド!あはは、何でもないよリナ様」

「そ……それ……私のパンツじゃない?しかも昨日履いてたやつ……」


 やばぁぁぁぁぁあああい!

 

「あんたまさか魔物の誘導に使ったものって……」


 リナ様がワナワナと震えている。もう予想がついちゃった!?察しがいいね!?

 

 ゴブリンなどの魔物は女性を襲う。

 匂いを嗅ぎつけてやってくる。これは普通にみんな知ってる常識だ。勘が鋭ければ……いや誰でもわかるか。

 

「あ、あんた!私のパンツを魔物の誘導に使いやがったわねえええええ!」

「うわぁあ!?ごめんなさいリナ様あぁぁあ!」

「最低!あんた最低よ!このド変態があぁぁあ!」


 リナ様めっちゃ怒ってる!顔真っ赤じゃん!羞恥心と怒りがごちゃ混ぜになって顔がりんごみたいになってんじゃん。そこに転がってる血まみれの盗賊の方がまだ白いわ。

 

「だって『領主館にあるものは何でも使っていい』って言ったじゃん!あいつらが好む濃い匂いが必要だったんです!」

「濃い匂いって言うなぁぁぁぁあ!」

「これはイアックが悪いわねぇ」

「シド助けて!リナ様を止めてくれええええ」


 最後の最後で痛恨のミスをした俺は往復ビンタされて2時間ほど正座で説教されてしまうのであった。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


ネトゲのMMOにトレインってありますよね。

初めてやられた時は轢き殺されて笑っちゃいました。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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