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11話 魔除けポーションを特産品にしよう

「リナちゃんそのくらいにしてあげて。イアックは今回の最大の功労者よ。やり方に思うところはあるけどもう少し優しくしてあげなさい」

「ぐぐぐ、はぁ……。それはそうなのよね。わかった。これでおしまいにします」

「ぐへぇ……」


 ほっぺ痛い……。

 でも往復ビンタとお説教地獄がとりあえず終わったようだ。結局はシドが助け舟を出してくれた事で許された。

 

 シド、マジ感謝。でももっと早く助けてくれてもいいんだよ?


「リナちゃんはとりあえず着替えてらっしゃいな。早朝から働いて汗もかいたでしょう。あたしとイアックは盗賊共を牢まで連れてくわ」

「うん、そうする。領民のみんなに挨拶したら先に屋敷に戻るね」


 シドの提案を了承し、リナ様は屋敷に戻っていった。


「シド、盗賊は牢に入れた後どうなるの?」

「後でエルナに引き渡すのよ。領から出る時に連れていって換金してきてくれるわ」

「なるほど」

 

 賞金首もいるしね。いくらかのマージンと引き換えに引き渡しを代行してくれるのか。


「そしてエルナさんはお金を渡しにまたライフシード領に来てくれるってことね。更にそのお金でエルナさんから生活必需品を買って領地に還元できると」

「そう言うことね」

 

 エルナさんにも美味しい話だ。100%儲けが出る商いになるからね。

 

「シドっていつも脳筋なのにたまに頭良いよね。たまに」

「たまには余計よ。あんたはやっぱり可愛げがないわね」


 2人で軽口を言い合う。それがなんだか心地よかった。

 

 ライフシード領に帰ってきて以来、シドは仕事ばかりでいつも難しい顔をしていた。でも今は久しぶりにシドの笑顔を見た気がする。

 

「イアック、ありがとうね」

「なんだよシド、いきなりさ」

「神の園から出てこれたのもそうだし、領地に帰ってきてからもあんたに頼りっぱなしだわ。何だか借りばかりが増えてくわね」


 借金を返済し、治安問題も今回のことで多少の改善を見せた。


 それはシドからすればとても嬉しくもあり、同時に悔しくもあるのだろう。シドが大活躍ってわけではないのだから。


 シドとは半年前に知り合ったばかりだ。でもずっと一緒にいたような気になる。まるで父親のような温かい存在だ。


 神の園で一人ぼっちだった俺にとって大切な繋がり。

 

 シドは神の園にいた頃から俺に感謝を伝えてくれて、恩を返すと言ってくれている。

 そして恩がまだ返せていないと思っている。そんなことないのに。

 

「……俺さ、今すごく楽しいんだ。使用人の仕事も狩りもリナ様の手伝いも全部楽しい」


 なんだか照れくさくてあんまり伝えてなかったけど、いい機会だし、言うだけ言っておくことにしよう。

 

「神の園で一人ぼっちになって塞ぎ込んでいた俺を立ち直らせてくれたのはシドだ。今ここにいるのはシドが連れてきてくれたからだ。俺に『帰る場所』をくれたのもシドだろ」


 もしシドがいなければまだ神の園にいたかもしれない。外の世界に出たとしても右も左もわからずどうなってたかわからない。

 

「だからさ、俺もシドにすごく感謝してる。ってことでおあいこだろ?」


「……あんたは本当にもう……いい奴すぎるわよ」

 

 何だよシド、なんか調子狂うじゃん。いつもみたいに軽口叩いてくれよ。


「な……なんだよ……」

「………じぁあもっとこき使っちゃおうかしらぁ」


 一転していつものシドに戻りやがったか。さっきまでの雰囲気は何だったんだよ全く。

 

「よーしそんなこと言うなら俺だってやりたい放題やっちゃうからね」

「そうね。やればいいじゃない。あんたが何を成すのか見せてもらうことにするわ」


 お、完全に場の空気が元に戻った。やっぱり俺とシドの間でシリアスは似合わない。

 

「それじゃ手始めに魔除けポーションをライフシード領の特産にしてみない?」

「……いきなりデカいこと言い出したわねぇ。でもいいの?あんたの独り占めにもできるわよ」

「物作りはたくさんの人を巻き込んだ方がうまくいくよ。それに心配しなくても俺だって勝手に美味しい思いはさせてもらうからさ」


 もちろんおいしいポジションに入らせてもらうよ!

 

 領地の特産品ってことになれば総責任者はシドになるからね!余計な気遣いとかしないぜ!


「それでいいわ。もちろん協力は惜しまない。あたしはあんたのやりたいことを全力で応援するわよ」

 

 物作りは1人では出来ない。たくさんの人の協力が必要だ。

 そう考えたら俺が一番信頼しているシドを巻き込むのが一番いい。

 それに手伝って欲しいこともあるし。

 

「あ、じぁあリナ様が欲しいんだけど口説くの手伝ってくれない?」

「……………………はい?」

 

 ◇

 

 その後、盗賊をエルナさんに引き渡した。

 

 エルナさんは「朝から何の用かと思いましたよ……。昨日の今日でもう討伐したんですか……」とちょっと呆れていた。

 

 賞金総額は結構な額になるそうで、そこから引き渡し手数料を引いた残りで食料を卸してもらうように依頼することができた。


「シド、俺は朝飯の用意があるから先戻るよ」

「わかったわ」


 そう言って俺は屋敷に先に戻った。

 何となく振り返ってシドとエルナさんの様子を見たらシドがすんごい困り顔してた。

 なんか言われたのか?まぁいいか。


 俺は気にせず屋敷に戻る。

 これでライフシード領が抱えていた治安問題が大きく改善されたな。

 

「魔除けポーションの特産化かぁ。めっちゃ面白そうだ。リナ様に絶対協力してもらわないとな」


 

 

⭐︎リナ視点


「イアックのド変態!昨日助けに来てくれた時はすごく嬉しかったのに!今日になったら私のパ……パンツで盗賊退治って一体何やってるのよ!」


 深夜の森をイアックが私のパンツを握りしめて動き回ってたとか考えたら恥ずかしくて顔から火が出そうになる。


「でも本当に盗賊団を壊滅させて魔物も大量に間引きしちゃうなんてあいつ本当に何者なのよ」


 盗賊団、魔物、借金。私が領主代行として半年間あれだけ苦しんだ問題がイアックが来てわずか3日で全て解決。すごいなんてもんじゃない。


「それにいい奴なのよね」


 私は昨日イアックに言ってもらった言葉を思い返す。

 

『俺はそんなにボロボロになるまで頑張ったお嬢様を心からすごいと思っています』


 昨日まではどん底まで落ち込んでいたけど、この言葉に救われた。


『もう一度やればいいんですよ』

『もう一回が無い?もしそうだとしてもさ、それなら俺がもう一回を作るよ』


 そう言われて私はまたチャレンジしたい、今度こそと思った。

 知識と力を身に着けて、ライフシード領のみんなを守りたいって思った。それは間違いない。


「でも私が失敗したという事実は変わらないわ……」

 

 パパが行方不明になって半年、私ができることを全力でやった。でも今の私の能力ではどうやっても失敗以外の結果にはならなかっただろう。

 

 私は何もできなかった。それが現実だ。


「……ああもう!ダメダメ!またネガティヴになってるってイアックにジト目されちゃう!しっかりしなきゃ!」


 きっとお腹すいてるからダメなのよ。早く朝ごはん食べに行こう。

 私は気を取り直して食堂へ向かった。


 ◇

 

「朝飯出来ましたよ」

「待ってました!良いわねイアック!朝から肉なんてわかってるじゃない!」


 朝からガッツリご飯!ナイスよ!


 イアックのご飯は美味しい。あっという間に胃袋を掴まれてしまった。

 パパなんてずっとイアックの作るご飯を食べてたから舌が肥えて食にうるさくなってるし。


「2人とも早朝から良くやってくれたわね。盗賊問題が早々に片付いたのは本当に嬉しいわ」

「うん!」


 2人ともなんて言われたけど、今回の作戦はイアックの働きが成功理由の9割くらいを占めてる。


「それでイアック、話してもらうわよぉ?あの紫のポーションについて」


 そうよ!それがあったわ!なんだか有耶無耶になりそうだったけど。


「了解。でも割と単純な話だからあんまり言うことないけどね」


 イアックが説明してくれた内容の要点をまとめるとこうだ。

 

 あの紫のポーション――《魔除けポーション》はイアックが作り方を発見したもので、魔除けポーションを撒いた場所には魔物や魔獣が近寄って来なくなる。

 これはさっきも聞いたから驚かない……わけじゃないけどまぁ大騒ぎになりそうなだなって思うだけよ。


 もっとビックリなのはその主原料。


「魔除けポーションの主原料は《ウルバイ草》です」

「え……ウルバイ草ってその辺にいっぱい生えてるやつ……?」

「はい。モッサモサしてますよね」

「雑草じゃない!」


 パパがすごく驚いてる。

 ウルバイ草は魔物が特に多い地域に生息する紫の花をつける雑草扱いの多年草だ。

 

 人の生活圏に生えているのはライフシード領だけ。他領では人里離れた辺鄙な場所まで行けば少量確認できる。

 

 あれ?それって……。


「シド、さっきも相談した魔除けポーションを特産品にしたいって話なんだけど進めて良いんだよね?」

「もちろんよ。開発者のあんたがやりたいって言うんだから文句なんてないわ」


 やっぱりそうだよね!だってウルバイ草が主原料ならライフシード領ほど生産に適した場所なんてないもの!

 

「すごい!すごすぎる!絶対実現させるべきだよ!」


 収入源がないライフシード領にとって起死回生になる!苦しい思いをさせてしまった領民のみんなの希望になるよ!

 

 イアックは本当にすごい。私が出来なかった事を次々と解決していく。

 イアックにまかせておけばきっとライフシード領も立て直せる。


 ………………

 …………

 ……

 

 でもちょっと悔しいな……。

 私も領民のみんなを守りたかった。小さなことでも良いから……何かを成してみたかったな。


 ………………

 …………

「どうしてもリナ様――――――欲しい」

 ……

 

「…………は?」


 今なんて言ったの?ちょっと考え込んでて一部聞いてなかった気がするけど……なんかすごいこと言われたような?


「リナ様に俺のパートナーになって欲しいんです!」

「はえあ!?」

 

 真剣な表情をしたイアックに手を握られてしまう。


 え!?え!?ちょ!?え!?

 わ、私今口説かれてる!?イアックって私のことそんなふうに思ってたの!?

 

 ど、どうしよう。そんな風にイアックを見てなかったからビックリしちゃってなんで答えて良いのかわからない。

 

 いい奴だしすごく強くて頼りになってご飯も美味しくて笑顔が素敵だし改めて見るとイケメンで正直タイプだけど出会ってまだ3日だしそういうのはまだ早いって言うかもっとお互いのことを良く知ってからじゃないかなって思ったりしてそれに私は今恋人を作ってる場合じゃないっていうか


「イアック、多分噛み合ってないわ。リナちゃんさっきちょっと心ここに在らずっぽかったから……」

「……へ?」

「あれ?そうなの?すいませんリナ様言い直します」


 あれぇ?


「改めまして――リナ様にこれから作る魔除けポーション製造工房の工房長をしてほしいんです」


 …………全く違うじゃない!

 『リナ様』と『ほしい』の部分しか聞いてない私が悪いんだけどね!?

 すっごい恥ずかしい間違い方しちゃったわよ!?

 

「リナ様、俺とライフシード領のみんなを繋ぐ架け橋になってください」

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


イアックとシドにはしっかりとした絆があります。出会って半年とは思えないほど強固なものです。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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