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12話 リナのやってきたこと、その成果

 ⭐︎イアック視点


《魔除けポーションプロジェクト》

 ライフシード領の破綻している財政を立て直すために領民の協力を得て魔除けポーションを大量に売り出す。


 領民の皆様に協力要請をするべく、シドとリナ様と一緒に町へ繰り出す。


「ねぇイアック。どうして私が必要なの?普通にイアックが協力をお願いするだけで良かったんじゃ……」

「いや、それは絶対無理です」


 何故ならば。

 

 ライフシード領の領民たちは貧困にあえいでいる。未来に不安がある状態の人ばかりだ。


 そんな人たちのところに3日前に来たばかりの俺が「魔除けポーション作って売り出すから協力して!そしたらみんなハッピーだよ!」と言ったらどうなるだろうか。

 

「とんでもなく胡散臭いと思いません?」

「確かにそうね……でもそれならパパが言えば……」

「あたしは領主よ。お願いじゃなくて半分強制みたいになるわ。筋を通すためにあたしも一緒に頼むけど、矢面に立つのはリナちゃんが適役ね」


 領主命令として領民を従わせることは可能だろう。

 でもそれじゃ嫌々やらせることになる。そんなのこっちだって嫌だし、そんな仕事はいい結果にならない。

 それに強制なんてしなくてもリナ様なら俺とみんなを繋いでくれると思う。


「私の役割……<領民と俺との橋渡し役>……大役ね」


 声に元気がない。


 (俺、リナ様が自信なさげにしてるところしか見たことないな)


 この半年間とても苦しんだことでリナ様は自信喪失に近い状態になっているんだろうな。

 

 もう一度頑張るって言ってくれたけど、それは昨日の話だ。昨日の今日ではまだ自信を取り戻せたわけじゃない。


「……イアック。この半年、私は失敗ばかりだった。そんな私にみんな協力してくれるかな?」

「もちろん絶対大丈夫です!」


 俺は即答した。

 

「ねぇ、イアックはどうして私をすごいって言ってくれたり、必要としてくれたりするの?どうして……そんなに私を信じてくれるの?」


 俺はライフシード領の皆さんのことも、リナ様のことも深く知ってるわけじゃない。

 って言うか何にも知らない。だって俺、まだここに来て3日だし。

 

 そんな俺でも昨日1日だけで簡単にわかることがあった。


「リナ様が悩みながら頑張ったこの半年は全く無駄ではないと思うからです」


 このプロジェクトは領民の協力を取り付けなければ先に進めない。

 つまりライフシード領の財政を立て直せるかはリナ様にかかっているのだ。


 俺の得体が知れなかろうと、話が胡散臭かろうと、リナ様について来てくれるのか。

 それが試される。

 

 リナ様は変わらず不安顔だ。重要な仕事だとわかっているから。それなのに自信はないから。


 でも実は俺、心配なんて全くしてない。きっと大丈夫だ。



 

「わかったぞい!任せてくれリナちゃん!」


 はい、説明して即協力者ゲットであります。

 

 この人はライフシード領唯一のライブラの町長でえる《ソボロ爺さん》。

 まとめ役のこの人に話を通すのが手っ取り早いため、最初に話をしに来たが、快諾である。


「こうしちゃおれん!人を集めてくるから皆の衆にもう一回説明頼むぞい!」

「あ、ちょ、ソボロじいちゃん!?」


 話が終わるなりドタドタと出かけて行ってしまった。


 そしてすぐ大勢連れて戻ってきたよ。すごくアクティブなご老人だ。


 集まった人たちは古くから町を支えてくれている方々のようだ。

 

「ライフシード領に特産品を作りたい。今まで失敗ばかりだったけど、今度こそ絶対成功させてみせるから……だから……」


 まずリナ様が皆んなに声をかけ、俺が改めて詳しい説明をしていく。

 出来る限りわかりやすく、希望のある話をしたつもりだ。

 でもぶっちゃけやっぱり胡散臭いだろう。

 

 今まで聞いたこともないものを『一緒に作ろうぜ!』なんて話になってるんだから当然だ。


 しかし話を聞き終えた人たちの反応はと言うと

 

「リナちゃんのお願いだもの。疑う理由も断る理由もないわ」


「ボロボロになりながら私たちのために頑張ってくれた。だからリナちゃんの提案なら全力で協力するのは当然なのよ」


「リナちゃん、頑張ろうな」

 

 領民からリナ様に向けられる言葉は温かく、優しいものだった。


 (やっぱりなぁ)

 

 リナ様は画期的なアイデアこそ出せなかったかもしれない。

 

 でも


 苦しくても誰も見捨てていない。

 

 辛くても逃げ出していない。

 

 父親が行方不明だと言うのに自分よりも、誰よりも領地と領民のことを優先していた。

 

 他にも言い出せばキリがないほど、リナ様のやってきたことをみんなが見ていたのだ。


 (そう言えば昨日盗賊に的外れなこと好き勝手言われてたな)


 『無駄なことしかしねぇ』

 

 リナ様が頑張りが無駄?どこが?無駄なわけないでしょ。


 『出来もしないことに大勢巻き込んだあげく失敗する能無し』


 失敗なんてして当然だろうに。

 むしろ失敗してもみんなからの信頼が失われていないのがすごいところだろ。


 (リナ様の心配は全くの杞憂だったな。みんな協力的だ)

 

 こうしてリナ様のおかげで魔除けポーションプロジェクトは無事始動することになった。


「みんな……ありがとう……私、今度こそ上手くやってみせるからね」


 

 ◇

 

「リナ様大丈夫ですか?」

「うん……いっぱい泣いちゃった。恥ずかしい……」

「結局あたしの出る幕は全くなかったわね」

 

 魔除けポーション生産の協力が取り付けられた後、感極まってしまったのかリナ様は泣き出してしまった。

 今はもう落ち着いたけどさっきまでみんなに宥められてたんだよな。

 

「やっぱりリナ様がやって来たことは100点満点でしたね」

「何よまだ泣かす気なの?」

「う……それは困りますね」


 リナ様は憑き物が落ちたような顔をしている。

 今度こそ本来の明るいリナ様に戻ったんじゃないかな。


 詳細な話はこれから詰めていくとして、これでライフシード領の財政問題が改善に向けて大きく進展したと思っていいだろう。

 シドの見立てでは魔除けポーションはめっちゃ売れるらしいし。

 

 リナ様も完全復活して一件落着かな。

 俺は今日2度目の終わった感に包まれた。


 そんな時にシドが俺とリナ様の顔を見渡してから変なことを言い出した。

 

「ねぇ2人とも、あたし王都に行こうと思うのよ」

「……へ?」

 

 俺はシドの突然すぎる話について行けず心の中で首を傾げた。


 

 ◇


 屋敷に戻って昼食を取りながら説明を聞く。

 

「あたしはどの道近いうちに王都に行かなければいけないわ」

 

 シドが行方不明になって半年。

 陛下からの信頼を受けて預かっている領地の管理ができなかったことをお詫びしなければならない。

 

 そして帰還報告と共にシドがピンピンしていることを見せてこなければならないそうだ。


「臣下として当然のことね。それにそうすることで学園で1人頑張っている娘の《ミラ》ちゃんを安心させてあげることができるわ」


 ミラ様とはシドの長女のことだ。

 シドの家族構成は妻、娘2人を合わせた4人家族だと聞いている。

 

 神の園にいる時、妻も娘も超絶美人なんだと自慢されたもんだ。シドに似なくてよかったねって返してよく取っ組み合いをしてたもんだ。

 

「そう言えばミラ様って今どうしてるの?」

「お姉ちゃんは王都の学園に残ってるのよ」


 国中の貴族の子供達は王都の学園で教育を受ける義務がある。本来ならリナ様だって学園にいて然るべきだ。

 

 リナ様はライフシード領に戻って来てるのにミラ様は学園に残ったのか。


「ミラ様も戻ってくるべきだったんじゃないですか?姉妹2人で力を合わせた方が良かったんじゃ?」


「……お姉ちゃんには1人で戻るように言われたのよ」

「???何でです?」


 自分の親が行方不明で領地が緊急事態の時に戻ることができない理由って何?


「理由は……お姉ちゃんが特別な力を持つ人だから……やらなければいけないことがあるから……」


 ……えええ?何それ?

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


リナさんは今回でメンタル的にも完全復活です。

元の明るい性格に戻れそうです。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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