表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
49/51

49話 事件の後、エルナ視点

 ⭐︎エルナ視点

 

「おはよう、父さん」

「ああ、おはようエルナ」


 マゼル元商人に奴隷にされていた私の父さん、名前は《オスロ》。

 一度は衰弱して死の寸前まで追い込まれたけど、イアック代表のおかげで無事に回復することができました。


「あ、今日はちゃんと呂律が回ってる感じだね」

「……まさかまたエルナとこうして話ができるとは思わなかったよ」


 父さんの衰弱の原因は《ツキ虫》という寄生虫だそうです。

 現代魔法医学において原因不明の奇病の一種なのですが、イアック代表は症状を見て即座に気がついて対処してくれました。

 かなり危険な状態だったから昨日までは話をすることも出来なかったけど今日は大丈夫そうです。


「陛下にツキ虫のことを説明して、同じ病気に苦しむ人を助ける方針なんだって」

「そうか。……すごい人だな」

「うん。本当にすごい人なんだよ」


 あの場にいたのがイアック代表以外の人なら父さんは助からなかったはずだ。

 その意味では父さんは運が良かったってことなんだろうな。

 

「エルナ、すまなかった」


 父さんはベッドの上に座り直して深々とあたまを下げた。


「父さんはマゼルに契約書を偽装されて罠に嵌められたんだ。エルナにも本当に迷惑をかけた」

「うん。もう聞いたよ」

 

 マゼル元商人が父と交わしたという契約書は偽物だったことがわかっています。


 罪人牢で行われたシド男爵の()()()()()()()()によって本人が自白した形です。


「父さんが家族を担保にするような契約をしていないのはわかってるから」


 マゼル元商人とチョレー子爵が共謀して父さんを襲ったことまで判明している。

 この2人は5年前の当時から悪事をいくつも働いており、父さんに仕掛けたこともその一つでしかなかったらしい。

 

「どんな事情であれ、当時の俺がマヌケだった。それは本当に心から反省すべきことだ」


 当時だって疑わしいところもあったらしい。

 それでも仕事を受けてしまったのは母さんの薬を買うためだった。病気を治してあげたい、それ一心だったようです。

 奴隷に落とされた後も身を焼くような激しい後悔の中で生きて来たそうです。


「エルナ、こんな俺でももう一度チャンスをくれないか」

 

「チャンス?」

 

「お前の下で働かせてくれ」


「父さん……それは……」


「実はイアックさんの提案なんだ。エルナは今ライフォニアのことで手一杯になって行商はあまり出来ていないと聞いているよ」


 元々、ライフォニアが流行りはじめたら行商はできなくなると思っていました。

 でもかつてのライフシード領のように私の来訪を待ってくれている人もいます。それについては少し心苦しく思っていました。

 

「信用できる人がいれば雇い入れたい意向もあると言われた。悪意ある人も増えてしまって人選が中々難しい状態だったとも聞いたよ」

 

「そうだね。実は仕入れを任せられる人も足りてなかったし」


 これだけ流行っているライフォニアにはやっぱり変な人も寄りつく。人選に苦労していたのは事実だ。その点父さんは信用できる。


 でもせっかく奴隷から解放されて元気になった父さんを起き上がってすぐにまた悪意渦巻く世界に戻すのは……。

 

「何かあればすぐにイアックさんかシド様を頼れと言ってもらえたよ。もう1人で無理をすることはないと約束する」

「そうなんだ。じゃあ……心配ないのかな」


 私の不安がもう潰されてる。イアック代表……日に日に先読みが上手くなっていくなぁ。そう言うところも本当にすごい。


「わかったよ。私も助かるし、これからよろしくね父さん」


 これから娘の部下になっちゃうって言うのに父さんはとても嬉しそうに笑ってくれた。


 そして爆弾発言を一つ。

 

「ああ、もうイアックさんには一生頭が上がらない。エルナを嫁にくれと言われたら無条件で差し出すしかないな」


「な、なななな何言ってるの父さん!?」


 私がイアック代表のお嫁さん!?そんなことイアック代表が言って来たら……。


 (そんなの多分一瞬も迷わないな)

 

 ここ数日の私は時々熱に浮かされたかのようにあの日を思い出してしまっている。

 

 そして私を安心させてくれるイアック代表の言葉を。


『安心してよ。凶悪な魔物とか、貴族の理不尽とか、そういう面倒なことは俺が何とかするからさ。無茶な話は突っぱねていい。みんなは好きにやっていいから』


 この言葉をもらった時、私達の中で大きく何かが変わりました。

 

 “もしもの時はどうしよう”

 

 そんな不安を、イアック代表は当たり前みたいに引き受けてくれたから。


 カシムさんやジーナさんなんてイアック代表を神様みたいに思ってるかもしれません。

 

 更にイアック代表から理不尽を跳ね返す仕組みを聞いて思った。

 あれは心を込めたおもてなしをすることでお客様からも私たちを大切にしてもらえるという仕組みです。

 

 そうしてこの場所が誰にとっても居心地のいい場所になった時、美と健康の更に先に<癒し>を加えたもう一歩先のライフォニアになる。


 そんな素敵な場所でこれからも自分の夢を追い続けていいんだって、そう思います。


「エルナ?」

「え?あ、何?父さん?」

「いや、赤い顔して惚け始めたから心配したんだが」

「!!?う……な、何でもないよ!?」


 ううう、これは重症ですね……自覚有りです……。

 

 私、この前は今が楽しくて恋人を作る気が起きないなんて言ったくせに実際はこんな感じになってしまって……。


 作る気が起きないんじゃなくて……ただ恋をしたことがないだけだったみたいですね。

お読みいただきありがとうございます。

またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ