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42話 悪意の来訪

⭐︎ある商人視点


 商人の間で今最もホットな話題は魔除けポーション《スッキリバイオレット》と美と健康の楽園 《ライフォニア》に関することだ。

 

 どちらも世界をのあり方を変えるほどのインパクトがあり、この二つの価値がわからない商人など存在しない。


 <上手くやれば儲けられる>


 などという半端な代物ではない。


 <どう下手に扱っても富と名声が付いてくる>


 という珠玉のネタである。


 商人なら誰もがライフォニアとスッキリバイオレットに絡みたいのだ。


 しかし大半の商人は交渉の窓口にすら辿り着けない。


 それはこのワシ――商人の《マゼル》でも同様だった。

 何故ならライフシード男爵の許可がおりないからだ。

 

「クソ!どっちもあの終わりかけだったライフシード領からとは!流石に読みきれんかったわ!」

 

 ライフシード男爵は領地の危機に手を差し伸べた者たちを商会の大小に関わらず優遇した。

 その商人たちだけと取引することにしたのである。


「こんなことになるなら媚び売っておくんだったわ!ワシは搾り取ってやろうとした1人だから全く相手にされん!」

 

 ライフシード領の危機に際して商人の対応は主に<見て見ぬ振り>か<限界まで搾り取る>かの2択である。

 

 損を承知で助けてやろうなどというやつはまずいない。そんな奴は商人失格だ。商いはそんな甘い世界ではない!

 

 だからワシは領主代行を務めていた小娘を騙して相場より高い値で質の悪い食い物を売りつけてやった。


 だがそんなことを責められる謂れはない。

 騙される方が悪い。潰れかける方が悪いのだ。

 

 よってワシは悪くないのだから交渉の機会が与えられなければ不公平であろうが!全くもって理不尽この上ない!

 

「だがワシには秘策がある」


 手に取るのは一枚の貴族の証文付きの契約書。

 

 とある仕事が失敗した時の損害補填の記載がある。

 

「ククククク……待っておれ()()()。お前はワシには逆らえんぞ」



 

⭐︎エルナ視点

 

「おはよう父さん、母さん」


 私は朝目覚めると今は亡き両親の形見、父さんの道具入れと母さんの櫛に挨拶をする。


 行商人になりたてのころ。女だからと侮られて辛い思いをしていた時に始めた朝のルーティンだ。


 敬愛する両親に話を聞いてもらうことであの頃を乗り切ることができた。

 

 父さんの道具入れ、母さんの櫛、今ではこれしか残っていないけどこの品が両親との温かな記憶を思い出させてくれる。


 朝食を摂り、身支度を整えて鏡を見る。


「よし、大丈夫ですね」

 

 私は美と健康の楽園 ライフォニアの支配人だ。


 責任者として貴族様の相手をする役目がある以上、失礼があってはいけない。

 だからこそ身だしなみには人一倍気を遣っている。


 ほんの少し前まで私は弱小行商人だった。

 ほぼ町娘の延長みたいな立場だったのに今では名だたる貴族の方々を接客する立場です。

 この前なんて国王陛下を歓待しましたし……。


 普段は顔に出さないようにしていますが間違いなく私には分不相応な立場です。


「でも私はここで夢を叶えたい。頑張るしか有りません」


 ここは私の夢の最前線。ここから退くことなんて考えられない。

 

 思い出すのは幼いころに陛下の結婚パレードで見た王妃様。

 目に焼き付いて離れない優雅な立ち姿を見てなんて綺麗な人なんだろうと思ったのを今でも覚えている。


 あの時から私の夢はいつかあの王妃様をも超える<世界一の美女を作る>ことになった。


 そのために私は父に倣って行商人になり、お金を稼ぎながら各地の美につながる様々な品物を見て回った。


「ライフォニアなら……イアック代表と一緒なら私はきっと夢を叶えられます」


 そう思ったらやりがいしかない。どんなに大変でも、分不相応だとしてもやりとげてみせる。


 そろそろ出勤の時間だ。

 最後にイアック代表にいただいた耳飾りを手に取る。


 綺麗な青い羽。これを贈っていただいた時は本当に嬉しかった。飛び跳ねてしまいそうなのを必死に抑えて平静を装った。

 イアック代表手作りのこの耳飾りには他のどんな高価な品も適いません。


 しかも神鳥レガの羽ともなれば魔除けの効果付き。見ているだけで守られていると感じます。今日も安心して過ごすことが出来そうです。


 コンコン

 

 何かが窓を叩く音に反応して視線を向ける。

 

「アオコさんおはようございます」

「ピィ」


 私の護衛をしてくれている神鳥レガのアオコさんだ。

 アオコさんは基本的に私の肩に乗って護衛をしてくれている。

 

 ちょこんと私の肩に乗るアオコさんはとても可愛くてキュンとします。すごく役得です。


 イアック代表は非戦闘員の平民で重要人物という、ある意味危険な位置付けの私のためにアオコさんを護衛に付けてくれた。

 

 神鳥レガのアオコさんがいれば人間、魔物を問わ

 ず物理的に私を害することは至難の業。

 奇襲、罠、強行を問わず武力で私を即時取り押さえることは不可能でしょう。


 ライフォニアという大きなチャンスを与えてくれて、今も私を守ってくれているイアック代表にはいくら感謝しても足りません。

 

「父さん、母さん、行ってきます」


 私は心も身体もやる気も満たされている。

 

 さぁ、今日も夢へと続く1日が始まります。


 

 

「おはようエルナ……じゃなくて支配人」

「おはようジーナさん。まだ就業前なんだからエルナでもいいのに」

「そう?でもお客様の前で間違えちゃったら大変だし、仕事場では支配人って呼ぶのがいいわ」


 従業員のジーナさんとはとても仲良くなりました。

 行商人の世界は男ばかりだったのでここまで仲良くなった同姓は初めてです。


「支配人、商人の方がいらっしゃっているのですが……」


「え?こんな時間にですか?まだ開始前なのに?」


「それが……支配人に合わせろと。《クラウス》を連れてきているといえば会えるはずだと」


「……え?」


 なんで……その名前を……それは死んだ父さんの名前……。


 行商の途中で盗賊か魔物に襲われて死んだはずの父を連れてきている?どういう事?


 私は訳がわからなかったが、一応会ってみることにした。

 

 今いるのはライフォニアの敷地内。人目につくここなら危険はないはずだから。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


耳飾りを手に取って眺めながら


エルナ: ふふふ。

アオコ:(嬉しそうに笑ってる。気に入ったみたい。イアックの前でその笑顔を見せてあげればいいのに)


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。



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