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41話 エルナとデート?と贈り物

「シドおかえり〜。魔闘祭どうだった?」

「もちろんバッチリよ」

「イアック師匠!俺が優勝です!」

「俺も3位入賞です。今でも信じられませんよ」


 おおお、レーヴくん凄い。カシムさんも大健闘だ。


「2人ともおめでとう!頑張ってきた成果が出たね」


 普段からストイックに鍛錬に励んでいた2人だから報われて良かったと思う。


「ところで後ろの3人はどちら様?」


 シドの後ろに隠れるようについている3人に目を向けた。何やら所在なさげに縮こまっている。


「紹介するわ。あたしの元弟子にして新弟子のピント、ラッチ、マートンよ!」

「「「よ……よろしくお願いします」」」

「こちらこそよろしくお願いします」


 シドの話では元弟子さんを新弟子さんとして迎えたらしい。話を聞くとかなり酷い目にあっていたようだ。


「え?それでレッドオーガ退治の報酬としてその人達を貰ってきたの?」

「あのままアルバン魔法師団に帰らせるわけにいかないわ。この子達も今回のことで愛想尽かしたみたいだし、またあたしのところに戻ってきたいって言ってくれたのよ」


 なるほどなぁ。でも良かったのかもしれないね。聞いた感じだと元の場所に戻っても多分肩身が狭いままだろうし。


「シド様にはたくさんお世話になったのにライフシードが、ピンチの時に俺たちは出ていってしまった。それを負い目に感じています」

「でもシド様がまた弟子にしてくれると言ってくださって」

「俺たちは今度こそ何があっても逃げ出さずにここで頑張ります。名誉挽回して見せます」


 俺はこの人たちのことを何も知らない。けど一度逃げて酷い目にあってまた頑張るって決めたんなら今度こそライフシードを盛り立ててくれるんじゃないかと思う。

 この人たちはいろいろ知ってもう一度やり直す。要は強くてニューゲームなのだ。


「領民も弟子ももっと増えるかもしれないわよ!」

「レーヴ君とカシムさんが結果出したから?」

「いや、イアック師匠、俺たちの活躍なんて微々たるものですよ」

「1番目立ってたのはシド様です。みんなシド様のことしか覚えてないまでありますよ」


 シドが?レッドオーガ討伐がそんなに評価されてるのか?


「レッドオーガの腕と顔面を殴ってパーンさせてましたからね」

「レッドオーガの血で真っ赤になってその状態で領民募集中って大声で言ってましたから」

「それはめちゃくちゃインパクト強いね」

「あんた達面白がってない?」


 流石シドだ。確かにその場にいた人たちは良い意味でも悪い意味でも忘れられない光景だっただろう。本当に弟子も領民も増えたりして。


 ◇


「それじゃイアック代表は王都に行ったことがないのですね」

「そうなんです。とても興味があるのが本音なんですよ」

「魔法関係の本が好きですもんね。それを探しに行きたいとか?」

「それもありますし、見聞も広めたいんですよねぇ。俺ってすごく世間知らずだって自覚がありますから」


 今日はエルナさんと一緒にメイン通りに食料の買い出しに来ている。シドとそのお弟子さん達の夕飯は俺が担当しているからだ。

 

 エルナさんとは最近よく一緒に行動している。仕事で同じ時間を過ごすことも多いし、一緒にいると色々な知識が増えて楽しいのだ。

 

 彼女も楽しそうにしてくれているし、こんな綺麗な人と2人きりなんてすごく贅沢だな。


「ピィ!」


 違う。2人きりじゃなかった。アオコがいたよ。

 

「どうしたのアオコ?」

「もしかしてあのお店の果物が欲しいのでは?」

「ああ、わかった買ってくるよ」


 メイン通りはライフシード領に来たばかりの頃は全ての店舗が閉まっていた。というより無人だった。

 しかし今はちょいちょいお店が入っている。王都からきたアルマンド商会とライフォニアのことを聞きつけてきた理に聡い商人、レーヴ君の優勝とシドの演説?を聞いてついてきた人なんてのもいる。


「アオコ?」

「ピィピィ」

「羽くれるの?どうして急に?」

「ピィ!」

「エルナさんがどうしたの?……ってアオコまさかプレゼントしろって?」

「ピィ」

「何で求愛のポーズ?」

 

 アオコには最近魔物の間引きとエルナさんの護衛をお願いしている。色んな人が多く訪れるライフォニアの支配人だし、エルナさんに危険がないとは言い切れないと思ったからだ。

 そのためエルナさんとアオコはすごく仲が良くなっていた。


「あ、そうか。でもエルナさんは女性だぞ?アオコはメスなんだから――って痛い痛いつつかないでアオコ」

「ピィィ!」

「俺がプレゼントするってことなのね!?あ、いやでも俺の作ったアクセサリーなんて不恰好で」

「ピィ」


 俺とエルナさんを交互に見てはピィピィ言うアオコ。

 多分アオコはエルナさんを俺のつがい――つまり奥さんだと思ってるわけか。それでプレゼントをしろと言うのね。


「確かにエルナさんにはすごく支えられているし、アオコの羽はご利益あるって言うし、プレゼントしてみようかな」


 俺はエルナさんの分も果物を買い、アオコを預けてベンチで待っててもらえるように伝える。


 そしてアルマンド商会の店に入り、アクセサリー部材を揃えた。場所もお借りして早速制作に取り掛かる。


「手作りの耳飾りですか。イアック様ってすごく器用ですね」

「いえ、この商品がすごいだけですよ。とても作りやすいです」

「あ、もしかしてどなたかにそれを渡して好意を伝えるのですか?」

「えええ!?告白なんてそんな、これは日頃の感謝とお守り的な意味がありまして」

「ふふふ、そうなのですか?何にせよエルナ様も絶対喜ばれますよ」

「何故エルナさんに渡すことがバレて!?」

「今外を見たらベンチで待っているのを発見しましたから」

 

 そんな感じで店員と軽い雑談をしているうちに完成。我ながら良い出来なのではないだろうか。


 ちょっと待たせてしまったし、早く戻らねば。

 そして俺はすぐエルナさんの元に戻った。

 

「イアック代表、何か買ってきたのですか?」


 そう俺に問いかけながら自然な笑みを向けてくれるエルナさん。

 綺麗でしっかり者で、時々こうして可愛い笑顔を向けてくるなんて反則だろ。

 

「あ……う……」

「う?イアック代表、顔がみるみる赤くなっていますよ?」

「いや、何でもなくてですね」

 

 さっきのアクセサリーショップ店員に告白がどうとか言われたから変に意識してしまうじゃないか。

 あれ?プレゼント渡すの緊張してきたぞ。どうしよう。

 

 あ、アオコがジト目を向けてきてる!?早くしろって!?わ、分かってるよ。

 

「エルナさん、これを」

「え?私にですか?綺麗な耳飾り……これはアオコさんの羽ですね」


 アオコの羽で作った耳飾りを手渡す。

 って言うかラッピングくらいしろよ俺!?何で剥き出しのまま渡すんだよ!?それじゃプレゼント感が全くないだろ!?

 

「アオコの羽には魔除けの意味があります。これが絶対エルナさんを持ってくれますから」

「……こんなすごい品をいただいちゃっていいんでしょうか?」

「日頃の感謝を込めています。是非受け取っていただけないでしょうか」


 そうお願いしてみるとエルナさんは少し考える素振りを見せたけど受け取ってくれた。

 

「ありがとうございます。イアック代表とアオコさんからの贈り物なんて凄く嬉しいです。大切にしますね」


 おお、良かった。もしかしたら受取拒否かもしれないと思って内心少し焦ったよ。


「実はお客様からの贈り物は全て断っていたりするので少し悩んでしまいました」

「ああ、エルナさんは大人気ですからね」

「ここだけのお話にして欲しいんですが、深い関係を望む方もいまして……」

「俺もよく相談されますよ。エルナさんともっと話をする時間を作れないか?とか」

「本来はありがたい申し出なのだと思うのですが……今はライフォニアに集中したいので恋人を作る気にならないんです。それもあって贈り物もお断りしているんですよ」

 

 そうかぁ。恋人は作らないと決めているのか。

 いや、特に何もないけどね!残念とかないけどね!


 好意とかあんまり考えたことなかったし、人柄が好きで更に美人さんだからドキドキすること多かったけどさ。

 

 よし、俺はエルナさんのやりたいことを応援するって決めた。

 

 シドから恋愛賢者としてのアドバイスで<女性を応援してあげられる男になれ>と言われてるからね。

 

 それがいい男なのだと。俺はいい男を目指しているのだ。


 さて、そろそろ戻るかな。

 そう思っていた矢先に穏やかな時間は終わりを告げる。

 

「イアックさん!エルナさん!大変です!」


 おおう……トラブルの予感?


 ◇


 ライフォニアに戻ると予定外の押し込み来客が来ていた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 屈強な体格の護衛を10人も引き連れた複数の商人御一行様。それを見て俺は「またか……」と言う気分になる。


 こういうのはこれが初めてと言うわけではない。こいつら要は俺たちと取引がしたいのだ。

 いつもは門前払いにしてるんだけどね。

 

「なかなかイアック代表とのお話の場がないものですから。少し強引かとも思いましたがこういった形をとらせていただいたのです」

 

 ライフォニアで使われる資材の仕入れは特定の商人からしかしないことになっている。

 誰からでも受け付けるようになると、悪意ある人間が入り込みやすくなるためだ。


 シドと俺のチェックを通り抜けないとライフォニアとの商売ができないとなれば、それが気に食わなくて強引な手段に出るやつがいるわけで……。


「こんな大人数でアポ無しのご訪問はご遠慮願いたいのですが……」

「そう言わず私達ともお取引をしていただけないかと思いまして。せめてアピールをさせていただければと思っているだけなのですよ」


 白々しい……。強面並べて威力で押してくるのがアピールかよ。


「当店の仕入れは全て領主のシド様と懇意の商会を通して行う決まりになっております。まずは領主様にお話しされるのがよろしいかと思います」

「男爵様にご迷惑をおかけするのはこちらの本意ではないのですよ」


 俺らに迷惑かけるのは本意なんかい。

 いいからシドの方に行けよ。シドの方に来てくれたら俺も全開で威圧返しできるのに。

 

 こっちには強面男たちに怯えちゃう子達もいるんだからさ。

 

 それにシドをビビらせることができたら逆に興味出るから聞いてやるのに。まぁ絶対無理だろうけど。逆にビビらされて縮こまるだけだろうけどさ。

 

「そう言われましても私どもとしてもシド様のお決めになったことを無碍にするわけには参りません。それに私たちがあなた方と取引すると言ったとしても次はもっと大きな権力を持った方が出てきてしまうだけですよ」


 こういう手合いには理路整然とこの話し合い自体が無意味だというのを理解させるに限る。

 

 だから100億歩譲って俺たちを懐柔できたとしてもより大きな権力者が出てきたら全て無効にされて終わりだというのを説明する。


「……そうですね。貴族様の権力というのは我々平民がどう足掻こうとどうにもならないもの。それは私たち商人の方が見にしみて分かっていることでしたね」

 

「ご理解いただきありがとうございます。それではこの後も業務がありますのでこの辺りでお引き取りをお願いします」


 よし、終わり。完全に無駄な時間だったな。

 話し合いが終わると集まっていた商人たちもその護衛たちも引き上げていった。


「イアック代表、ありがとうございます」

「いや、テッド君に怖い思いさせてごめんね」

「いえ、ちょっと驚きましたが鍛錬の時のシド様の方が怖いので大丈夫です」


 それは確かに。鬼みたいな顔してるもんね。

 

「イアック代表が居てくれたらそれだけで怖い人たちも関係ありませんね」

「ああいう威力でくる人たちは俺が相手するからね。すぐ駆けつけるから遠慮なく言ってね」

「はい」


 でもあんなに引き連れてきたのにすぐ帰ったな。聞き分け良すぎる気がして少し引っかかる。

 あんなやり方で俺に首を縦に振らせることができないのは誰だって分かりそうなもんなのに……。


 眼光鋭い商人たちだったけど、1人だけ俺じゃなくてエルナさんをジッと見てる奴がいたな。


 俺が代表なんだから俺以外と話しても意味がない。それなのにまるでエルナさんに狙いを定めているかのような……。

 

 ちょっと気になるし、名前だけでも調べておくかな。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


エルナ: イアック代表とアオコさんからの贈り物。凄く嬉しいですね。毎日付けましょう。とても綺麗な耳飾りなのでどんな服にでも合いそうです。


エルナさんは内心ではとても喜んでいます。毎日つけることでエルナさんのトレードマークとして周囲に認知されていきます。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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