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39話 盛況のライフォニアとむくれたエルナ

「ラスカン子爵様 ようこそお越しくださいました」

「ロキーフ男爵様 お待ちしておりました」


 序列式の後、トリス様にお願いしていた宣伝が効いたのかライフォニアには予約や問い合わせが殺到している。

 

 貴族派に所属する方こそ来ていないものの、中立派は遠慮なく予約を入れてきていた。


 本日も新しいお客様をお迎えしたし、ライフォニアは連日予約いっぱい大忙しである。


「カリンカ男爵様、またのお越しをお待ちしております」

「世話になったな。また必ず来るよ。それまでは言われたことを実践させてもらうとしよう」

「よろしくお願いします。健康な生活をしていればカリンカ男爵様の希望は間違いなく叶うでしょうから」


 普通は貴族家の方はそうそう領地を空けられない。しかしそれを押してでも時間を作ってライフシード領を訪れているのだ。こちらとしても皆さんの情熱に応えたいところだ。

 

「ここに住みます!」

「えええ!?メリア様、それは」

「いいえ!私は本気よ!本当ならエルナさんを連れていきたいくらいなのを我慢しているの!」

「そう言ってもらえて恐縮です。しかし私だけではメリア様の美貌は作れません。この場所でなければならないのです」

「やっぱりここに住みます!」


 エルナさんと貴族のご令嬢が何やら話しているようだ。

 ライフォニアに来たご令嬢はここに留まりたがるからなぁ。エルナさんも毎回困ってるし。

 

「あまり困らせるものではありませんよ。ライフォニアの皆様の言うことをよく聞いていれば大丈夫です。しばらくしてからまたここに来ればいいのですよ」


 別の御令嬢が助け舟を出してくれたようだ。

 あれはケリー様か。おっしゃる通りだな。

 トリス様は超短期間で結果を出すところまでもっていったが本来はもっとゆっくりでいい。あんな過密スケジュールで無理をする必要はない。

 

「あら、ケリー様、ご機嫌麗しゅうございます。あなたもライフォニアへ?」

「ええ、何とか暇を作ってここに来たのです。一度ここに来たらまた来たくなって仕方がない。だからあなたの気持ち、よく分かるわ」

「……そうですわね。他の皆様も順番待ちしているんですものね。わかりましたわ」


 この光景ももう何度目だろうか。一度冷静になればみんな聞き分けが良くなってくれて助かる。

 美貌に磨きがかかって少し心に余裕があるからだろうか。


 今後彼ら彼女らは社交界やお茶会で注目の的になるだろう。そうすればもっとお客様が増えるぞ。


 ライフシード領は今、貴族が多く訪れる領地とあって、機にさとい商人はすでに領地に入ってきている。

 

 そのおかげで閑古鳥がないていたメインストリートは徐々に復活しつつあった。

 

 驚いたことに王家のお抱え商会も入ってきている。陛下が手配してくれたのだろうか?


 人口も少しづつだが増加している。ライフ適性者もまた増えたようだった。

 

 シドに聞けば陛下にライフ適性者向けの仕事がライフシード領にあるという噂を流してもらったらしく、その成果なのかもしれない。

 

 しかし人口増加はまだまだ十分ではないようだ。近々シドが人口増加に向けて何かするみたいだけどどうなるのかな。


「つっかれたぁ」

 

 ライフォニアの屋上。最近ここで休憩時間を過ごすのが俺のお気に入りになっていた。

 

「イアック代表、やっぱりここにいましたね」

「あれ?エルナさんも休憩?」

「そうですよ。それとイアック代表が書類仕事から逃げないように監視にきました」

「あはは……これは手厳しい」


 この前ちょっとサボってつまみ食いしてたの見つかっちゃったからなぁ。

 

「ふふふ、冗談です。いつも頑張っていただいてありがとうございます」


 「今日もお疲れ様です」と言って飲み物を差し出してくれた。

 

「それはエルナさんもだよ。本当に助かってます。エルナさんがいなければライフォニアは成り立ちませんよ」

 

「ありがとうございます」


 エルナさんは一緒にいてとても頼りになる存在だ。

 ライフォニアの仕入れと美に関するところを一手に引き受けてくれるエルナさんがいるから、俺はスタッフの技術向上と接客に力を入れることが出来る。

 お互いを支え合う関係が築けていると思う。


「今夜は星が綺麗ですね」

「こういう日は空を眺めてるだけでなんだか癒されるんですよね」


 綺麗な星空が広がっていた。

 ふっと横を向いて見たエルナさんの横顔がとても綺麗でドキッとしてしまう。恥ずかしいので言えないが星空より綺麗だと思ってしまった。

 

「そう言えば今朝はシド男爵様と言い争っていたと聞きましたよ?どうしたんですか?」

「あ、エルナさん聞いてくださいよ。シドのやつ酷いんです。俺は魔闘祭にでちゃダメっていうんですよ」

「ああ、レーヴさんやカシムさんが出るっていう魔闘祭ですか」


 そうなのだ。今度またシームの町で魔闘祭が開かれる。そこにレーヴ君とカシムさんが出場するのだ。

 俺も出たいと言ったら即ダメを喰らった。


「何か理由があるのでは?」

「実は武官貴族当主は自領の強い人を魔闘祭に出場させない権限があるそうで……あまりに突出した存在は若い芽を摘んでしまうから出るなら魔闘大祭からにしろって言われて……」


 魔闘祭は新鋭の登場と育成のためにある。明らかに強いとわかっている人が出る意味はあまりなく、むしろこれから強くなるであろう人のやる気と自信を砕くだけだという判断だ。

 

「なるほど、その理屈なら納得ですね。イアック代表は近衛隊長に勝ってしまうような人ですからね」

「でも出たかった……」

「何故ですか?」

「チヤホヤされたかった……」


 油断していて本音がポロッと出てしまった。

 

「………………へぇ」

「あれ?何だかちょっと不機嫌になってますか?」

「そんなことはありませんとも。言いがかりですよ」


 そう言ってむくれた顔のエルナさんはせっかく持ってきてくれた飲み物をまた回収してしまった。

 

「え?あの、俺まだそれ飲んでないんですけど」

「そろそろ仕事の時間ですからダメです」


 エルナさんは飲み物を持って去っていっ行こうとする。あれ?それ俺にくれるために持ってきてくれたんじゃないのかなぁ?


「ほら、イアック代表、もう行きますよ。書類が終わったら私が構ってあげます」

「え?あ……はい……頑張ります」


 何かの地雷を踏んでしまったようだが、仕事を頑張ればエルナさんから構ってもらえるそうなので頑張ろうと思う。


 仕方ないから今回の魔闘祭はレーヴ君とカシムさんに譲ろう。でも、絶対に優勝してくれよな。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


カシム: 俺が魔闘杯に!?

レーヴ: 腕がなるッス!

シド: 優勝するわよー!

イアック: ぐぬぬぬぬ…俺が優勝してモテたかったのにぃ!

カシム&レーヴ&シド: いやあんたすでにモテてるだろ気づけよ


 イアックは従業員やお客の令嬢や従者などから割と熱視線を向けられてます。本人はよく分かってません。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

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