36話 大人のお話し合い
無事?に本日のライフォニアの営業は終了を迎えた。今はスタッフみんなに集まってもらって食事を兼ねた仕事お疲れ様会をしているところだ。
「いやぁ、シドが連れ去られたね」
「何だかとっても可哀想でしたよ……」
陛下にライフォニアのサービスを堪能してもらった結果、大変満足していただけたようだった。
もっと詳しい話が聞きたいとシドを会議室に連れ込んだ次第だ。
「みんなもありがとう。ライフォニアの魅力をあますところなく伝えられたと思う。まさに最高の仕事だったよ」
「多少余してもいいのではと思いましたよ」
「あれを最高と言っていいのでしょうか?」
大丈夫だ。ああいうのをシゲ爺の日本で言うところのオホ声と言うんだ。実に楽しそうだったな、うん。
「まぁ別の狙いもあったし、それも踏まえて最高だったよ。後はシドに任せればいい。今頃本題を持ちかけている頃だと思う」
「本題?」
「うん。実は陛下にお願いがあって。上手くいけばライフォニアのいい宣伝になるよ」
シド、上手くやってくれるかなぁ。
⭐︎シド視点
「シードーてーめーえーこーらー」
「あ、あんまり脅さないでちょうだい!」
「言いたいことは山ほどあるぞ!」
2人とも目がいっちゃってるわねぇ……。流石に驚きすぎてキャパオーバーなのね。気持ちはわかるわ。あたしもそうだったもの。
「まぁそれでもこれがライフシード領で良かったとも言えるか」
「シドの領地じゃなかったらもっと慌ててたな」
「ある意味ラッキーだったと言うことか」
「そうね。イアックが初めて出会った人が貴族派の誰かだったのならイアックはどういう扱いを受けたかわからないわ」
アルマ王国の権力派閥、《王国派》と《貴族派》。主張の対立する両派閥だが、今は貴族派が圧倒的に優勢だ。
理由は圧倒的な実績差。
対魔物、対人間、どっちにしても戦いは魔法が主体となる。つまり国防という観点から見て、国を守っているのは魔法使いなのだ。
国の富という観点から見ても圧倒的に貴族派の連中の方が結果を出している。
何せ便利な道具はほぼ全て《魔道具》なのだ。
マナをエネルギーとして動くこの道具は生活用水のような人々の生活を支える根幹を担い、且つ他国との貿易においても魔道具はとても有用だ。
そして魔道具を制作できるのもまた魔法使い。新しい魔道具を生み出すことができるのも魔法使いなのだ。
何をおいてもマナを多く持つ者が有能と言わざるを得ない現状。
マナこそが絶対的な人間の価値であるという貴族派の考え方を真っ向から否定できるだけのものが王国派にはない。
「まぁそうなったらイアックはさっさと他国に逃げてしまったでしょうね」
「……シドよ。今日は洗いざらい話してもらうぞ。イアックは何者なんだ?」
「あら?謁見の後にも言ったじゃないの」
やっぱり信じてなかったのね。それならばあの時の話をもう一度してやるわ。
「あたしね……神の園に行ってたのぉ!」
「「………………」」
「そこであの子に出会ったのぉ!」
「「………………」」
「そして今に至る」
「「……マジかよ」」
「今度は嘘つけって言わないのね」
「「くっ!」」
イアックったら超すごいものね。神の園からきたっていうくらいじゃなきゃ説明つかない。
「イアックが神の園からきたっていうのは本当のこと。だけどね2人とも勘違いしないでね。ライフ術も、魔避けポーションも、料理や他にも色々な発想も、神様は関係ない。全てイアックが見つけたもの、イアックの努力と研究の成果よ」
神の園に神なんていない。強い魔物がいてだだっ広いだけ。そんな場所だったんだから。
「「…………」」
「深刻そうな顔しちゃって、陛下もクランツもらしくないわね。悪ガキが消えてるわよ」
「!!」
「シンプルに考えましょう。これだけ強力でデカいカードが、我々の手札に入ったってことですよ」
ライフ術にはマナの絶対優位性を覆すほどのポテンシャルがある。今までどうしても人材に困っていた現状をひっくり返す可能性がある。
「……なんだシドよ。イアックはお前の宝だろう?政治に巻き込むようなことしていいのか?」
「ええ、ちなみにこれ、イアックの言葉なのよ。あたしは必死にあの子を守ろうとしてたのにね。あっけらかんとした顔で、「自分という手札をどう使うかが大事だ」なんて本人が言うのよ」
可愛くないわ〜。こっちが気を使いまくってるのに当人はむしろ面白そうってくらいにしか捉えてないんだもの。
度胸があるとか頭がいいとかじゃ無く、楽しんじゃってるのがわかる。まぁそれが最強のメンタル状態よね。
「ふふふふふふはーっはっはっはっは!!なるほど!確かにそうだなぁ!面白くなる未来しか見えん!」
「シドも運がいいのか悪いのか分からんな。暗殺されかけたと思ったらその先で最高の出会いをするんだから」
2人とも調子が出てきたようで何より。これで楽しい話ができそうね。
「まずはスッキリバイオレットについての褒賞を与えるところからだな」
「何がいいでしょうね。何せ功績が大きいですから」
「シド、あいつ何か欲しがっていなかったか?」
「うーん……最高のお嫁さんが欲しいそうです」
「お嫁さんて……そんなのあいつならよりどりみどりだろ。強くて頭が良くて容姿も整っているし、稼ぎもこれから多くなるだろうしな」
「まぁ誰か当てがうか?候補を見繕うのは容易いぞ?」
「あの子は自分で探すと言ってますね。あいつあれで頭の中が乙女なところあるので運命とか信じてるんです」
「……まぁ個人の自由ではあるが、変な奴が付かないようにシドも見ててやれよ。聞いてる感じ放っておくと女で失敗しそうに聞こえるぞ」
「はい……」
確かにイアックに弱点があるとすれば女かもしれないわ。よく見ておきましょう。
不本意だけど恋愛賢者として……。
「しかし褒美は何にするか。女がダメならやはり無難に金か?」
「陛下、もし宜しければ仲介をお願いできませんか?」
「仲介?誰と話したいのだ?」
「ハゲていて、太っていて、尚且つこれから褒賞を与える予定の貴族を紹介してください。女性から嫌われて婚約者を探しているような貴族なら最高です」
お読みいただきありがとうございます。
毎朝6時更新頑張ります。
シド: ハゲていて太っていて体臭がきつくて下の元気がなくて脂がってて筋肉がなくてニキビがすごい貴族がいいです。
陛下:負の要素詰め込みすぎじゃない?
クランツ: 不摂生にも程があるだろ
またお越しいただけたら幸いです。
よろしくお願いします。




