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32話 働くお年寄りの誇り。そして唐突な手合わせ!?

⭐︎国王視点

 

「陛下、ご満足いただけたでしょうか?」

「うむ、驚き疲れたぞ。まだ視察は始まってもいないというのに」

「そのお疲れは本日の最後に全て癒して見せましょう。楽しみにお待ちください」

「ほう、疲れを癒す……か。いい風呂があるのか?」

「それもご用意しております。本日の視察を終えられた後はゆっくりとおもてなしをさせていただきますので」

「期待させるではないか。それでは楽しみにしていよう」


 何やら自信ありげだな。しかしもうこれ以上の驚きなどそうそうあるまい。

 

「それでは早速魔避けポーション スッキリバイオレットの視察に向かいたい。案内を頼む」

 

 ライフアーツのことをもっと聞かなければならないが、絶対に話が長くなるであろう。それならば視察の主目的を先に片付けるべきだ。


「承知致しました。ではご案内いたします」


「ここで生産されているのか」


 スッキリバイオレットの生産現場に案内された。この場所が今回の視察のメインとなっている。

 

「陛下、改めまして魔避けポーションに名付けしていただき、ありがとうございます」

「イアックよ。そなたのブランド化戦略の発案、見事であった」

「喜んでいただけたのなら幸いです」


 魔避けポーションは完璧な製法がわからずともいつか他領、他国でも作れるようになるだろう。それは我も想定していた。

 

 実物が出回れば色、効能、産地、匂いなど、たくさんの製法を予測する材料があるのだから当然の帰結だ。

 

 だからこそ市場への流通には細心の注意が必要と考えていたが、イアックのブランド化戦略によって秘匿性より知名度を優先することになった。

 

 これにより、情報流出を恐れず流通量を大幅に増やせたため、多くの民が救われた。それと同時に我の名声も大きく高まったといえよう。


「調合レシピを知るのは私とシド様、そして陛下とクランツ様のみ。これにより秘匿性もある程度担保されます」


 製法を吐かせるにしてもその4人の誰かを捕える必要があるか。

 それなら強引なやり口で製法を暴くのは困難だろう。俺、クランツ、シドは無理矢理などというやり方で何とかなる人物ではないし、イアックにはそもそも辿り着けまい。今はただの青年にしか見えないだろうからな。

 

「効果についても自信を持っております。類似品が出回ったとしても、そう簡単には効果で追いつかれることもないでしょう。スッキリバイオレットは私が長年調合を研究し、数多の実験で効果を立証したものですから」


 効能が薄い劣化品でも安価で捌くなどやり方はある。

 しかし、魔物対策は命に関わる。安い劣化品などでは効果大の本家品の足元にも及ばぬということか。

 

「長い時間をかけて、品質が近いものが出てきたとしても、その頃にはブランド化の効果により、後発の類似品には追い縋ることのできない圧倒的な信頼度となります」

 

 魔避けポーションの元祖はスッキリバイオレット

 陛下のお墨付きはスッキリバイオレット

 効果が高いのはスッキリバイオレット。

 苦しむ民を最初に救ったのはスッキリバイオレット


「過去が変えられないように、スッキリバイオレットの功績も永久に変わらないということか」

「そうなります」


 よく考えられてる。ほんとこいつ何者?有能すぎん?

 何でこんなやつが在野に埋もれてたの?誰かさっさと発掘しとけよマジで。


 イアックと会話しながら生産の様子を見ているが、少し気になったことがある。

 

「随分と年配が多いな。しかし皆目を輝かせ働いている。これはどういうことか」

「ライフシード領ではお年寄りこそが領地を支えているのです。そしてその仕事が国を支えるのだという誇りを持って働いております」


 聞けばここで生産されるスッキリバイオレットが俺を通して国中で戦う力の無い者達を守るのだと説明しているのだという。

 

「どれだけ歳をとっても、国を支える何かになれるというのは喜びなのだそうです」


 魔物だらけの危険な土地、そんな場所にありながら、ましてや年齢を重ね、元々就いていた仕事を続けられなくなって尚、こうやって国のためを思ってくれる……か。


「イアックよ。皆に一言申したいのだが構わぬか?」

「はい。皆さんも陛下のお言葉をいただけるのならば大変喜ぶと思います」


 イアックは皆の作業を一時止め、俺の方を向き、傾聴するよう促す。


「我はアルマ王国 国王 ディアス・フォン・アルマである。魔避けポーション スッキリバイオレットの生産、誠に大義である!ここで作られた品は、我が必ずや国中に行き渡らせよう。皆の働きが、アルマの地を魔物の脅威から守るのだ。これからもこの国に住む皆のために働いてくれることを願う。よろしく頼むぞ」


 俺の言葉を皆が聞き、泣き出してしまう者もいる。

 だが俺も感動しているのだ。そしてありがたく思う。シドがいない間、苦しい思いをしたはずの者達が、ここまで国を想ってくれていること。国王として感謝せずにはいられないのだ。


「今日は陛下にお越しいただけたこと、本当に感謝いたします。これで皆は今後も誇りを胸に生きていけることでしょう」


 イアックが改めて一礼する。此奴こそ、皆を支える復興の立役者なのだ。

 

「イアックは本当によく考えているのだな。我らのことも、国のことも、自領の仲間のことも」



 

 ⭐︎イアック視点

 

 スッキリバイオレットの生産現場の視察が滞りなく終了した。領民みんなの働きをしっかりアピールできたし、個人的には大成功に思う。


 この後は陛下をおもてなしだ。まぁライフシード領は復興中なんだし、そんなに豪勢なおもてなしはできないけど。


「それでは陛下、本日の宿泊先にご案内致しま――」

「陛下、最後にイアック殿との手合わせの許可をいただきたく」

「ふぁ!?」


 後はおもてなしに移行かと思っていたから完全に油断してた。びっくりして変な声出ちゃったじゃんよ……。


「ちょっとクランツ、突然何を言い出すのよ」

「クランツ、そんなことを言われてはイアックも困ってしまうだろう。どうしたというのだ?」


 そうだそうだ!とっても困るぞ!何言い出すんだ!

 シドも陛下もクランツ様を止めるんだ!

 

 心の中で抗議しているとクランツ近衛騎士隊長が理由を説明し始める。


「ライフアーツに興味が尽きません」


 そんだけかい!


「まぁ確かにそれはある」


 あるんかい!止めてよ!


 (ちょっとシド、なんか不穏なんだけど!?)ヒソヒソ

 (あれはダメね。クランツのやつ完全に本気よ)ボソボソ

 (なんで!?いや、確かに目がギラギラしててやる気っつーか殺る気があるみたいに見えるけど……)ヒヤヒヤ


「シドよ。あとでライフアーツについては詳しく聞くことになってはいたが、クランツが自身で立ち会ってみたいというのだ。相手をしてくれんか?」

 

 何言ってんですか陛下あああぁぁぁあ!

 

「それは……わかりました」


 わかっちゃうんかい!

 シドがこちらに視線を送ってくる。

 

 手のひらを顔の前で合わせて、ごめんなさいのポーズ〜ってごめんじゃねぇわ!

 

 どうせ陛下のお願いを断れないんだろうけどね!


「わかりました……なるべく軽くでお願いします……」


 こうなったら仕方ない。さっさと負けよう。それがいい。


「それでは広いところにご案内します」


 俺は鍛錬場に皆さんをご案内した。

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


カシム: おい、急いで鍛錬場を片付けろ!

自警団の面々:え?急にどうしたんですか?何かあるんですか?

カシム:超ビッグイベント発生だ!イアックさんの本気が見れるかもしれないぞ!

自警団の面々: マジか!すぐ片付ける!今からワクワクが止まらないぜ!


戦わない人たちにとっては胸熱の大イベントになったようです。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。


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