表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
31/51

31話 国王陛下が来ました

⭐︎国王視点

 

「ふふふははは!実に楽しみだ!」

「あまりハードルを高くしてはいけませんよ陛下。彼の地はまだ復興に着手した始めたばかり。今回は魔避けポーションの生産体制を確認できればよしとすることにしましょう」

「それはそうだな。シドも頑張っているだろうが領地運営というのはそう簡単ではないだろうからな」


 使者をやってから約一月、ようやくライフシード領に視察に向かうことができた。シドの話を聞いてからこの日を楽しみにしていたのだ。

 

 近衛騎士隊長のクランツをはじめ、近衛騎士20名を連れての視察だ。大所帯になってしまったが、ライフシード領は魔物も多く棲息するため、このくらい連れなければ視察に向かえないのだ。

 

「しかし魔避けポーションは予想通りとんでもない代物でしたね」

「ふはははは!そうだな」

 

 魔避けポーション《スッキリバイオレット》は既に多くの結果を出している。

 

 砦を救った話、貴族令嬢を救った話、辺境の村の話、どれもスッキリバイオレットの凄さを物語っている。

 

「国中に噂は広がっており、陛下を讃える声があちこちから聞こえてきますぞ」


 スッキリバイオレットは王家からの下賜だ。

 必然的に窮地を救われた、魔物の脅威が遠ざかった、そう言った賞賛は全て王家に集まる。

 目論見通り、あまねく全ての民に陛下の威光を届けることになるのだ。

 

「だからこそ、肝心のポーション製造はしっかり確認しましょう」

「そうだな」


 

 ◇

 

 もうすぐライフシード領唯一のライブラに到着する。ここまで魔物に一度も襲われずに辿り着いてしまった。

 

「想定よりスムーズに着いてしまったぞ。魔物が少ないではないか。シドが精力的に動いているのか?」


 ライフシード領周辺は治安が不安定だ。少し前までは盗賊まで出ていたというから警戒していたのに拍子抜けだな。

 

「ディアス陛下!あれを!」


 近衛騎士が慌てた声を上げる。近衛騎士はそうそう動じぬものなのだが……。何か信じられないものでも見たというのか。


 不審がって馬車の前方を見ると青い軌跡を描く何かが空中を縦横無尽に飛び回り魔物を倒していた。

 

「あれは……青い鳥か?……まさか神鳥レガか!?本来群れで行動するはずのレガが何故単独なのだ?それに魔物を狩っている……のか?」

 

「クランツ様!あちらに人がおります!」

 

「あれは……ライフシード領の守備兵なのか?素手でいとも簡単に魔物を倒しているぞ」

 

「あんな戦い方見たことないぞ」

 

「なんだ?どんな魔法だ?」


 神鳥レガに謎のステゴロ集団。何だ一体、ライフシード領で何が起こっているのか。


 めちゃくちゃ面白そうではないか!

 

「お待ちしておりました陛下」


 ライブラに到着するとシドが出迎えてくれた。先ほどのステゴロ集団が後ろに控えて跪いている。

 

「シド男爵!どう言うことだ!もう聞きたいことだらけだぞ!こんなワクワク……面白いことになってるなら早く言え!」

 

「陛下、後ろの方々の頬がヒクついてますよ。威厳が消失してます」

 

「また陛下が悪ガキに戻り遊ばされた……」

 

「ここからが大変だぞ」

 

「いいからシド男爵!早速だ。早速案内しろ!」

 

「承知いたしました。それでは陛下が御所望された我がライフシード領復興の立役者、イアックをご案内につけさせていただきます」


 シドの後ろに控えていた青年が前に出てくる。整った目鼻立ちに翠色の髪に翡翠色の瞳。此奴が話にあったイアックか。

 

「ディアス陛下、お初にお目にかかります。イアックと申します。本日は精一杯ご案内させていただきますので、よろしくお願い致します」


 挨拶の言葉を聞いているとイアックの肩に神鳥レガが留まった。

 

 …………いやいや待て待て、何で留まるんだよ。神鳥は人に懐かないはずだろうが。

 内心でしこたま驚きながらも冷静に努める。

 

「こちらこそよろしく頼む。ところでイアックよ。お前はその神鳥レガとどう言う関係なのだ?」

 

「私と神鳥レガ――アオコとは友人関係となります。私の幼少期、怪我で動けないアオコを治療し、友情を育みました。田舎から出てきたばかりの私を心配して群を抜けて着いてきてくれた、優しいやつです」


 神鳥と友達だと!?そんなやつ聞いたことないわ!

 何その友達!我も欲しい!神鳥レガの雛とか普通なら秘境とかで育てられるやつだろ!どんだけ稀有な事例かわかっとるんかい!

 

「友達だと……そんなバカな……いや、事実として本当に仲がいいようだ。現実を受け止めよう。それでは魔物を倒していたのは」

「私が頼んだのです。魔物の間引きを手伝ってくれと」


 我の後ろで近衛達がザワザワしとる。気持ちはわかる。わかるぞぉ。

 

「神鳥の護る地……」

「なんでしょう。一気に神聖な場所に思えて来ました」

「エセ霊山とかよりよっぽど信憑性があるぞ」


 これアルマ王国の神聖スポット的なの爆誕したんじゃないだろうか。これだけで聖地巡礼スポット認定されてもおかしくないぞ。

 

「イアック君、近衛隊長のクランツだ。シド人将と共に後ろに控えている彼らの使っていた技はどういったものか説明してもらえるか?あれは魔法なのか?」


 あ!クランツお前!我が話してるのに横入りしおって!我が今悪ガキモードだからと言って遠慮してないなこいつ。でも気になってたことだから許してやる!

 

「あれはライフアーツという戦闘技法です。魔法ではない、マナを使わない戦闘技法なんですよ」

「なんだって?」

「実は生物の体にはマナともう一つライフというエネルギーが存在します。ライフアーツはそのライフを使って戦う方法なんですよ」

「「「「………………」」」」


 ぱーどぅん?


「神鳥レガよりびっくりだ……」


 近衛全員が沈黙しとるぞ。にわかには信じられないがさっきの魔物討伐の様子を見て否定ができなくなってるから困る。だって魔法のチャージしてなかったから。

 

「イアック君、君はとても強いんだろう?私と手合わせしようじゃないか」

 

「え?あの……何故そんな話に?」

 

「君たちの力に非常に興味があるのだ。近衛隊長として未知の力はなるべく把握しておきたい」


 嘘つけお前。何が近衛隊長としてだ。興味津々で我慢できないだけだろうが顔に書いてあるぞ。


 「えええ?ちょっ……困りますよ。私なんてきっと相手にならないですよ」

 

 クランツが強引にイアックに詰め寄り、手合わせの申し入れをしているとシドが口を挟む。

 

「クランツ隊長、それならば部下の方とこちらの自警団の1人で手合わせなどいかがですか?」


 そう言ってシドは自警団でまとめ役の男を推してくる。

 確かに近衛隊長がいきなり直接手合わせというのは順序が違う気がするな。

 まぁ到着早々に手合わせ申し込みなんてしてるくせに今更順序も何もない気がするが。


 部下の手前一応一歩引いたクランツだが、まるで納得してないようでシドの側に寄ってコソコソ話を始める。もちろん我は聞き耳を立てる。

 

「おいシド、なんで止めるんだよ」

 

「あんたを助けたのよ」

 

「……私が負けると?」

 

「負けるわ。知識も準備もない状態では負ける。あたしも負けたもの。一撃で、簡単に沈んだわ」

 

「マジかお前。シドが一撃ってどんだけだよ」

 

「あんたがそんなことになったら大変だから止めたのよ。ちゃんと予備知識があれば大丈夫だからまずはちゃんと見てなさい」

 

「マジかマジかマジか面白すぎるだろ!」


 シドのやつ、クランツが負けると言い切っておるわ。

 確かに王の近衛隊長が人前であっさり負けたりすればとんでもない醜聞だ。

 もしそれが本当ならライフアーツとやらはこの場でしかと見極めておくべきであろうな。


「それでは模擬戦を取り仕切らせていただきます。ライフシード自警団 カシムと陛下直属 近衛騎士 《ダリル》殿 少し離れて向かい合ってください」


 ふむ。ダリルか。1番の若手であり近衛の中では最弱であろう。

 しかし、そもそも近衛とは王国騎士の中でも指折りの者達だ。ダリルとて若手のホープとして近衛隊入りしておる。小領地の自警団などに負けていい立場ではないな。


 しかしここでもシドから一つ提案が出される。

 

「陛下、普通に戦ってしまえばカシムは全く見せ場もなく倒されてしまうでしょう。彼らは自警団として鍛錬を始めてまだ2ヶ月にも満たないのです。近衛の皆様とは比べるまでもありません」

 

「なるほど、それで近衛騎士と1対1は少し酷か。ではどうすれば良い?」

 

「初撃を譲ってください」


 初撃か。先手を取らせるだけなら構わぬだろう。むしろそれだけでいいのかと心配になる程だ。


「よかろう。ダリルよ、先手は譲れ。相手は素手のようだし、余裕があれば受けてみてはどうだ?」

 

「は!」


「あ……」というか細い声がイアックから聞こえる。何だその「あちゃー」とか「やっちまったなぁ」みたいな顔は。


「始め!」


 開始の合図だ。

 まずはその場で睨み合う両者。すぐには動かないのか。

 それならばと我は観戦の雑談をしようかとシドに近寄る。


 ダリルもまだ素人に毛が生えたくらいの相手と思っているであろう。余裕を持って初撃を待ちかまえておる。


「行きます!」


 カシムとやらが気合いの宣言と共に駆け出す。


「シドよ。これは相手にならないのではないか?」

「そうですね」

「???解っているならこの模擬戦を提案した意図はなん……」


 我が疑問を投げかけようとしている僅かな時間で勝負はついていた。

 

「か……は……」


 近衛騎士 ダリルの負けで。

 

「勝者、カシム!」


 イアックからの勝負有りの宣言。勝負の場には見下ろすカシムと倒れるダリルがいるだけだった。

 

「んな!?何が起こった!?何をされた!?」

「わかりません!魔法のチャージはありませんでした!激しく殴られたわけでもない、ただ触れられただけのようにしか……」


 我も驚いて声が出ない。訳がわからず隣にいるシドを見る。するとシドはこれまたムカつくドヤ顔をしやがった。

 

「シドよ、あの技の名前はライフアーツだったな?詳細を包み隠さず話すことを命じる。これだけの技を何も知らぬままになどできぬ」

 

「かしこまりました。そう言われるというと思って待っておりましたとも」


 シドは最初からこの展開をある程度読んでいたのか、隠すつもりは全くないようだ。

 

「…………まだスッキリバイオレットの話をしていないというのにすでに驚き疲れたぞ」

お読みいただきありがとうございます。

毎朝6時更新頑張ります。


カシム: え!?俺が模擬戦ですか!?いやいや勝てるわけないでしょ!?

シド: いいからいいから

カシム:ボッコボコにされるだけなのでは!?

イアック:誰かを捧げなければ陛下も近衛隊長も納得しないからさ。お願いします!

カシム: 俺は生贄!?


開始の合図後


カシム: (嫌だ嫌だ1発入れたらその後ボコされる超怖い。始め!じゃないですよ覚悟がまだ決まってないんですよおおおお!)


こうして最初は睨み合いみたいになってました。


またお越しいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ