3話 イアックのお役立ちアピールと雇い入れ
時間設定間違えました…。
操作方法に慣れてなくて…。
早々に遅刻して申し訳ありません。
︎⭐︎シド視点
イアックが散策に出かけた後、リナちゃんから領地の現状を説明してもらった。
「これがこの半年で起こった大まかな出来事。パパごめんなさい。私、何もできなかった…」
「リナちゃん、よく頑張ってくれたわ。苦労をかけたわね。でも大丈夫、ここからライフシード領を盛り上げていきましょう」
予想はしていたけど、やっぱりこの半年間、リナちゃんには辛い思いをさせてしまったわね。
リナちゃんの話を聞きながら、あたしは海に落ちる直前のことを思い出していた。
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⭐︎半年前
「運が無かったですねぇシド男爵」
「あんたたちほんとになんなのよぉ!あたしの領へ執拗な嫌がらせをした挙句に領民を誘拐なんてふざけてんじゃないわ!」
「その話し方……男のくせにバカなんですか?ふざけてるのはあなたでしょう」
「話し方のことはほっといて!」
シドは絶体絶命の窮地に陥っていた。自領の領民を攫われ、助けに向かったところを襲撃された。一緒に来た仲間もろとも罠にはめられたのだ。
「護衛としてついてきてくれた仲間を全員殺すなんて!ここまでする必要ないでしょ!」
一緒に連れてきた仲間は全員殺されていた。この襲撃は用意周到すぎた。
嫌がらせを受けていた当初は野盗程度だと思っていたがどうみてもこいつらは手だれの暗殺者集団だ。
仲間が手も足も出ない強さ、領民をあっさり攫ってしまう手際の良さ、それは完全にプロの手腕だった。
「殺して正解ですよ。当たり前でしょう。逃げられたらこっちが危ない」
「あんたたち何が目的なの!」
「……そうですねぇ。あなたはここで死ぬのだし、少しだけ教えてあげましょう。あなたの娘さんを好き勝手にするためですよ。ああ、もちろん出来のいい方の娘さんです」
私の最愛の娘が狙いか!
「好き勝手って何するつもりよド変態がぁ!!」
「あなたは運がいい。自分の娘が《神の祝福》を受けたのだから。大変名誉なことです。そしてあなたは運が悪い。自分の娘が《神の祝福》を受けたばかりに、ここで死ぬことになるのだから」
話しながら逃げる方法を考えるがどうしようもなかった。
完全に敵に囲まれており、後ろは断崖絶壁。その下は人食いの魔物が住む激流の海だ。逃げ出すことは不可能に思える。
それでもあきらめず思考を続けるが、考えがまとまる前に終わりの時が来てしまう。
「さぁ、これ以上は時間の無駄です。シド男爵、さようなら」
「ちっくしょおおおおおぉぉぉおおお!」
ナイフが投擲される。しびれ薬が塗ってあるそれを肩に受けて、あたしは海へと落ちていった。
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そして現在。私はようやく自領に戻ってこれた。
あの時確かに激流の海に落ちたのに、死なずに神の園へ流れ着いたのは奇跡としか言いようがない。
気を失っていたから海に落ちたあたしの身に何が起きたのか全くわからないけど。
「報告ありがとうリナちゃん。これまでのこと感謝するわ」
あたしがいなくなった後、ライフシード領の財政は悪化の一途を辿り、人口の減少も著しい。魔物や盗賊の被害も増えており、十分な対処ができていないようだ。
少ない備蓄を開放しながら領民の最低限の生活をギリギリ守るので精一杯だったようだ。
しかしこれはシドが考えていた最悪の状況より遥かにいい。
最悪の場合、シドを殺そうとした暗殺集団の親玉に領地を乗っ取られていることまで考えられたのだから。
「でもねパパ、明後日の借金返済が問題。返す宛がないし、しかも現状でも2ヶ月も待ってもらってるの。……次こそ待ってもらえないと思う」
「確かにそれが問題ね。何か対策を考えないと……」
当然のように借金だってある。そうでもしなければ暮らしていけなかったのでしょう。
お金の問題はすぐに解決が難しいのだけど……何かないか……。
「……ん?なんだか外が騒がしいわね」
「本当だ、いったい何が……」
考えに耽っていると屋敷の外からザワザワと人の声がする。
「領民が集まってる……?ってあいつ何やってるの!?」
「イアックったら何やってんのかしら」
窓から外を見ると屋敷の前に人だかりができていてその中心にイアックがいた。
それに大きな鍋が三つも並べられており、老若男女問わず領民のみんなが料理をするイアックの周りに集まっている。
「みんなご飯用意できたよー」
「いい匂い!」
「イアック兄ちゃん早く食べたい!」
「あいよー。あげるからどんぶり持ってきてねー」
イアックがあんなにたくさんの人に食事を振る舞おうとしてる……?
あいつったら散策に出たはずなのに何をどうしたらそんな事になるのかしら。
…………まぁそれはいいとして、お腹減ったわね。
「イアック!夕食ができたならあたしにもよこしなさい!」
「ちょっとパパ!?」
急いで向かうとリナちゃんもついて来た。
「この肉も野菜もどこから持って来たのよ!こんなにたくさんうちにはストックしてなかったはずよ!?」
「お肉はさっき獲物を狩ってきました。ついでに山菜も」
「えええ!?そんな……こんな短時間で……」
唖然とするリナ。
「ああ、驚くわよね。あたしもそうだったわ。でもイアックは狩りが上手なのよ」
「上手って……凄すぎでしょ……」
「今日は運も良かったんですよ。すぐに獲物見つけられたし」
神の園でもイアックは上手に狩りをしていたものね。あたしも狩りはできるけどイアックには全く敵わないわ。
「他の魔物はいなかったの?」
「いたけど無視したよ。俺は魔物を避けるの得意だから」
「ええぇ…」
リナちゃんったら驚いてばかりね。無理もないけど。普通たかだか数時間でここまで出来ないから。
「それにしてもこの人だかりはどうしたのかしら」
「実は獲物を狩って屋敷に戻ろうとしたら声をかけられてさ、肉を分けてほしいって言われたんだ。じゃあ鍋と塩を貸してもらってみんなで食べようってなったんだよ」
「なるほど?」
「死んだじいちゃんがさ。人と仲良くなりたかったら飯を奢ればいいって言ってたんだ。だから本当はお嬢様に食事を振る舞おうと思ってたんだけど。獲物が大きくてどうせ食べきれないし、領民のみんなとも仲良くなりたいと思ってたから」
「いっそ全員分作ろうと?」
「うん」
確かイアックの御祖父は不思議な知識をたくさん持つおじいさんだったわね。
飲みニケーション推進派だったとかなんとか。故郷では時代遅れって言われて泣いてたとかなんとか。
「はい、シドの分」
「ありがとう。今日も美味しそうね」
「あ、お嬢様もどうぞ」
これまためちゃくちゃ美味しそう。周りを見ると領民達が無言で食べてる。さっきまで騒がしかった子供達も黙々と食べてるわね。
それじゃあたしも。パクッ
「うんまっ!相変わらずイアックのご飯は美味しいわ〜」
「美味しい……」
「よかった。もっとあるからいっぱい食べて下さいね」
先に食べ始めていた領民達がイアックにお礼を言いに集まってくる。
「お兄ちゃん美味しかった。ありがとう」
「兄ちゃんありがとな。こんな豪勢な飯は久しぶりだ。ところで今さらなんだが、兄ちゃんは何者だい?」
「領主館で雇われることになったイアックです。皆さんよろしくお願いします」
「ちょ!?ちょっと勝手なこと言わないで!」
「え……?やっぱり雇ってもらえないですか?」
イアックは不安そうな顔してるわね。リナちゃんも断る気みたい。お金無いものね。でも
「イアックはどうしても雇うわ。それにイアックは信用できる。信頼度絶大よ。リナちゃんも全面的に信じていいわ」
イアックほど信頼できる人はいない。半年も一緒に寝食を共にしていたんだもの。人となりもよくわかってる。
そもそもの話、神の園にいたイアックが敵と繋がってるなんてことは物理的にも絶対あり得ないわ。
「そして有能よ。狩りと料理の腕はわかったでしょう。それだけでも雇う価値があると思わない?」
「それはそうだけど…」
「お願いリナちゃん。何があろうとイアックのやりたいことを応援するって約束したのよ。恩人に報いたいわ」
本当はあたしはこんなお願いができる立場じゃ無い。
領主のくせにカッとなって飛び出した挙句に多くの犠牲も出した上で暗殺者に遅れをとって行方不明。
その後半年も苦労させて、戻るなりお金無いって言われてるのにそれでも自分の意思を無理にでも通そうとする。
なんて身勝手なんだろう。
「わがまま言ってる自覚はあるわ。その分はこれから頑張る。だからイアックを雇うことに賛成してちょうだい」
頭を下げてお願いする。するとイアックも隣に来て頭を下げる。
「俺、他に行く宛てがないです。精一杯働くのでどうかよろしくお願いします」
馬鹿ねあんた。あんたは頭を下げる必要なんかないのに。
でもここまでされたらリナちゃんも断れないかもね。
「い、いいわ!でもしっかり働いてよね」
「ありがとうございます。頑張ります!」
良かった。これでイアックに恩を返せる。
「なぁ?今更だけどあの金髪変態筋肉は領主様じゃないか?」
「ホントだ!食うのに夢中で気が付かなかったけどシド様だ!帰ってきたんだ!」
「シド様おかえりなさい!」
誰が金髪変態筋肉ですか!
それはそうと帰還報告をするならいい機会かもしれないわね。
「みんなー!帰って来たわよおおおおお!」
領民の前で帰還を宣言するとみんなはとても喜んでくれて宴のようになった。
さっきまで山のように積んであった肉はあっという間になくなり、ここに集まってくれた領民達はお腹いっぱいなったようだ。
「シドは人気あるなぁ」
「イアックありがとうね。それにしても初日から大活躍じゃない」
本当にこの子は凄いわね。
半年前に暗殺されかけてあたしは絶望の淵にい。
そんな絶望の只中でたった一つだけ……イアックに出会えたことだけがあたしの救い。
「イアック、明日からも美味しいご飯を用意してちょうだい」
「わかった。それは得意だし、頑張らせてもらうよ」
こうしてイアックをライフシード領の使用人として雇うことになった。
そしてこの日を皮切りに、ライフシード領は大きく変化していくことになる。
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